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暇つぶし(2)
しおりを挟む「ラズ、何をしているんだい?」
「んおっ、びっくりしたぁ…え、なにクオーツ何しに来た?」
「何しに来た、って……それが一日職務を終えて帰ってきた番に言う言葉?」
呆れた顔で言うクオーツ越しに見えた窓の外はすっかり日が暮れ、暗くなり始めていた。
何時間も集中して描き続けていた事に驚きながら周りに散らばる紙を見やれば、相当枚数量産していた。
「わっ、もうそんな時間ですか!?ラズ様に付き合ってたせいで夕食の準備が遅れてしまうじゃないですか!怒られるの俺なんですから勘弁してくださいよ」
「えぇ…僕だけのせい?マリンだってノリノリだったじゃん…」
ぶーぶー言い合っていると、僕が描き散らかした絵を一枚一枚集め見ていたクオーツが「マリン」と呼ぶ。
「ここはいいから早く行っておいで」
「ありがとうございます、失礼致します」
そそくさと出ていくマリンが去り、パタンと扉が閉じたことでクオーツと二人きりになる。
「ねぇ、ラズ」
「……なにさ」
「今日は絵を描いて過ごしてたの?」
「そうだけど」
「絵を描くなんて珍しいね、楽しかった?」
「別に。誰かさんが僕の日課を解禁してくれないから仕方なく暇つぶし」
自分で聞いといて、ふーんと言うだけのクオーツに何さ!と睨む。
「私も描いてよ」
「はぁ?やだよ!クオーツなんて王宮お抱えの絵師が沢山描いてるじゃん!」
「ラズに、描いて欲しい。お願い」
真っ直ぐお願いされてしまえばなんとなく断りにくい。ぐぬぬぬ…と答えあぐねている僕にやはりこの男は一歩上手をいっていた。
「明日からラルド観察解禁してあげるから」
「よっしゃかっこよく描いてやる!さっさとそこ座れぇい!」
そうです。現金なヤツなんです。
こうして、名だたる有名絵師たちがこぞって一度は描いてみたいと声を上げるこの国の王クオーツを、マリンを描いた時同様適当な紙とペンで描き始めた。
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