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ラッキースケベ(2)

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「じゃあラズ様、俺脱衣所で待機してるんで何かあったら呼んでくださいな」
 
「へぇ~い」
 
 
 いつものように頭から身体まで洗ってもらい、出ていくマリンを見送ると、念願の広いお風呂に一人でぷはぁと浸かる。
 普段からお湯に浸かるのは大好きだったが、部屋についた個人用の風呂しか許可されず、クオーツと一緒にという条件付きでこの大浴場を使用する事はできたが、その時はただ風呂に浸かるだけでは終わらず余計疲れるため結果疎遠になっていた。
 
 
「んはぁ~広いお風呂最高ぉ~」
 
 
 大理石がふんだんに使われた豪華で広いお風呂を一人で使う贅沢さにいつも以上にテンションが上がっていた。
 いてて…と酷使され凝り固まった身体を伸ばし、ついでとばかりにとぷんっと頭まで潜る。
 
 
 だから、気付かなかった。
 
 
「……ラズ…様?」
 
 
 こんな昼間っから大浴場を使う人なんていないと思っていたから、僕以外の人が入ってきていたなんて。
 
 ましてやそれが―――
 
 
「ひぇひぇぇっ!?ら、ら、ラルド様!?!?」
 
 
 突然の推しの登場に頭が追いつかず、ついガバッと立ち上がってしまった。
 バチッと重なる視線がお互い真正面から交わされる。
 
 何も身につけていない、まっさらな状態で。
 
 
「っ、す、すみません!すぐに出―――」
 
「ひぃぃっ裸体っラッキースケベ!!!」
 
「!!ラズ様!?」
 
 
 狂った言葉を口走りながら勢いよく鼻血を吹いて後ろへ倒れていく僕を咄嗟に風呂の中へ駆け込み、すんでのところで抱きとめてくれるラルド様の腕の中。
 久しぶりに見た至近距離での推しの顔と、頬に当たるむにっとした感触。
 
 
「ひゅっ尊死――」
 
「ラズ様!?ラズ様!!」
 
 
 死因:推しの胸筋
 
 
「ちょっと何事~?ラズ様ご無事ですか―――は!?ラルド様!?いつの間に……って、えっラズ様!?」
 
「マリン殿、説明はあとに。早くラズ様をお運びしたい」
 
「まずいまずいまずいこんなところクオーツ様に知られたらさすがにクビが飛ぶやばいやばいっ」
 
「マリン殿!」
 
 
 それぞれ慌てる二人を他所に、鼻から血を垂らし不気味な笑みを浮かべながら気絶する僕は、推し自ら抱き上げ運び介抱してくれた事など当然知る由もなく一瞬見てしまった推しの裸体に包まれる幸せな夢に浸っていた。
 
 
 
 
 そんな幸せな夢も、覚めれば途端、悪夢に近い現実が待っていた。
 
 
 コメカミを押さえ、怒っているのかなんなのか、ベッドに腰掛ける僕を見たことも無い表情で見下ろすクオーツはわざわざ午後の公務を切り上げやってきたらしい。
 
 
「ラズ……キミは私を嫉妬で狂わせたいのかい?」
 
「何で知ってるんだよぅ……」
 
「ラズ」
 
「ひゃい」
 
 
 今回は100%自分が悪い自覚がある為、いつもみたいに無駄な抵抗はしない。
 そんな神妙な面持ちの僕にため息ひとつこぼすと、意外にもこれ以上はグチグチ言うことなくギュッと抱きしめられた。
 
 
「お願いだから心配させないでおくれ……キミの自由を奪いたくない」
 
「ひぇ……おっそろしいこと言うなよ」
 
「あの場にいたのがラルドでよかった。あの男は絶対に間違いは起こさない」
 
「ん……そうだな」
 
 
 優しくぽすんっとベッドへ押し倒される。
 上から見下ろしてくる綺麗な顔を眺めながらこの男の目の奥の闇に気付かぬふりをし、ゆっくり重なる唇を受け入れた。
 
 
 
 

 ラッキースケベ -END-
 
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