4 / 125
悪魔との出会い
しおりを挟むしかし、幸せな生活もそう長くは続かない。
ある日、突如として
僕の日常と僕の幸せを邪魔する悪魔が現れた。
◆◇◆◇◆
「なんだい?ラルドあのかわいいストーカーは」
「……殿下、あの方はストーカーではありません、ラズ様です」
「ふぅん…あれが最近生まれた三男坊か……そこのおチビちゃんそんな陰で見てないでこっちにおいでよ」
いつものように朝から定位置でにやにや眺めていると、正午頃珍しくラルド様を尋ねて我が家にやってきた来訪者がいた。
幼さの残る面持ちの少年ながら、身につけた衣服が誰よりも煌びやかなのとお付を沢山従えた様子、更にラルド様の畏まった態度から身分の高いお方なのだとすぐに察知したが、その人の視線がこちらを向いた瞬間、何故か本能が警鐘を鳴らし、思わずぴゃっと逃げだしていた。
―――が、すぐに捕まった。
「っ!?にゃ、にゃぁぁ!?」
「え~何この子かわいい~猫みたい」
後ろからガバッと抱き上げられ突然変わる視線の高さにびっくりしていると、視界いっぱいに映るキラキラ眩しい整った顔に目がチカチカした―――と、同時にラルド様を初めて認識した時のように頭に走る激しい稲妻。
ご無沙汰していた久しぶりの感覚だったが、前世に関わる人と接触した時のそれだとわかると同時に、記憶が怒涛の勢いで流れ込んできた。
「あ……」
少年の顔に朧気に重なる大人の顔―――前世の婚約者だった。
「あ……ぁ…ぅ」
親同士が決めた婚約だったにも関わらず、翡翠を一心に愛してくれるその人に対して自分には他に好きな人がいる心苦しさから気まずい関係で終わってしまった前世。
そしてなによりも、その人から向けられる熱い眼差しが苦手だった。
この時、自分のことで精一杯で目の前の男の子も同じように衝撃を受けていた事に微塵も気付かなかった。
「―――ねぇラルド」
「クオーツ様もっと慎重にラズ様を扱ってください」
「この子、僕のにしてもいいかい?」
「……え」
更にその時のラルド様の驚いた表情は大変珍しくレア級のお顔だったというのに目に焼きつける暇もなかった。
「みぃつけた僕の運命」
「ひぅっ」
その時の僕にはまだ、前世の記憶はあれど前世には無かった設定、男と女以外の枠組み――アルファ、ベータ、オメガ――で人間を分類する第二の性の教育がされておらず、もちろん自分の性も発現していなかった僕に対して獲物を狙う目で見てくるこの人が怖かったのをよく覚えている。
「やっ、やぁぁぁっラゥさま、ラゥさまぁぁぁっ」
「あっは、大号泣かわいい~ラゥさまってラルドのこと?舌足らずな感じが堪らないなぁ……ねぇ僕はクオーツだよ、呼んでみて、クオーツ」
「やあぁぁぁぁぁっっ」
「……クオーツ様、これ以上は過呼吸になってしまいます、ラズ様を一度こちらへ」
「ダメ僕のだから」
「っ」
安心するラルド様の腕の中へいち早く行きたい一心で手を伸ばし海老反りになりながらこの男の子の腕の中で思いっきり暴れていた僕は気付かなかった。
ビリッとピリつく緊張感がお二人の間に流れていたことに。
「今はわからないかもしれないけど、ラズ、キミは僕の唯一だ。生まれてきてくれてありがとう。これから毎日会いに来るよ、早く一緒に暮らしたいね」
「ぎぃやあぁぁぁぁぁっっ」
「ふふ、かぁわいい」
これがのちの僕の番クオーツ当時8歳と、僕ラズ当時1歳の出会いであり、ロックオンされた瞬間だった。
1,429
お気に入りに追加
2,286
あなたにおすすめの小説
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
上手に啼いて
紺色橙
BL
■聡は10歳の初めての発情期の際、大輝に噛まれ番となった。それ以来関係を継続しているが、愛ではなく都合と情で続いている現状はそろそろ終わりが見えていた。
■注意*独自オメガバース設定。■『それは愛か本能か』と同じ世界設定です。関係は一切なし。
国王の嫁って意外と面倒ですね。
榎本 ぬこ
BL
一国の王であり、最愛のリヴィウスと結婚したΩのレイ。
愛しい人のためなら例え側妃の方から疎まれようと頑張ると決めていたのですが、そろそろ我慢の限界です。
他に自分だけを愛してくれる人を見つけようと思います。
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる