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悪魔との出会い

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 しかし、幸せな生活もそう長くは続かない。

 
 ある日、突如として
 
 僕の日常と僕の幸せを邪魔する悪魔が現れた。
 
 

 ◆◇◆◇◆
 
 
 
「なんだい?ラルドあのかわいいストーカーは」

「……殿下、あの方はストーカーではありません、ラズ様です」

「ふぅん…あれが最近生まれた三男坊か……そこのおチビちゃんそんな陰で見てないでこっちにおいでよ」

 
 いつものように朝から定位置でにやにや眺めていると、正午頃珍しくラルド様を尋ねて我が家にやってきた来訪者がいた。
 幼さの残る面持ちの少年ながら、身につけた衣服が誰よりも煌びやかなのとお付を沢山従えた様子、更にラルド様の畏まった態度から身分の高いお方なのだとすぐに察知したが、その人の視線がこちらを向いた瞬間、何故か本能が警鐘を鳴らし、思わずぴゃっと逃げだしていた。
 
 ―――が、すぐに捕まった。
 
 
「っ!?にゃ、にゃぁぁ!?」

「え~何この子かわいい~猫みたい」
 
 
 後ろからガバッと抱き上げられ突然変わる視線の高さにびっくりしていると、視界いっぱいに映るキラキラ眩しい整った顔に目がチカチカした―――と、同時にラルド様を初めて認識した時のように頭に走る激しい稲妻。

 ご無沙汰していた久しぶりの感覚だったが、前世に関わる人と接触した時のそれだとわかると同時に、記憶が怒涛の勢いで流れ込んできた。
 
 
「あ……」
 
 
 少年の顔に朧気に重なる大人の顔―――前世の婚約者だった。
 
 
「あ……ぁ…ぅ」


 親同士が決めた婚約だったにも関わらず、翡翠を一心に愛してくれるその人に対して自分には他に好きな人がいる心苦しさから気まずい関係で終わってしまった前世。
 そしてなによりも、その人から向けられる熱い眼差しが苦手だった。


 この時、自分のことで精一杯で目の前の男の子も同じように衝撃を受けていた事に微塵も気付かなかった。


「―――ねぇラルド」

「クオーツ様もっと慎重にラズ様を扱ってください」

「この子、僕のにしてもいいかい?」

「……え」
 
 
 更にその時のラルド様の驚いた表情は大変珍しくレア級のお顔だったというのに目に焼きつける暇もなかった。
 
 
 
「みぃつけた僕の運命おめが
 
「ひぅっ」
 
 
 その時の僕にはまだ、前世の記憶はあれど前世には無かった設定、男と女以外の枠組み――アルファ、ベータ、オメガ――で人間を分類する第二の性の教育がされておらず、もちろん自分の性も発現していなかった僕に対して獲物を狙う目で見てくるこの人が怖かったのをよく覚えている。
 
 
「やっ、やぁぁぁっラゥさま、ラゥさまぁぁぁっ」

「あっは、大号泣かわいい~ラゥさまってラルドのこと?舌足らずな感じが堪らないなぁ……ねぇ僕はクオーツだよ、呼んでみて、クオーツ」

「やあぁぁぁぁぁっっ」

「……クオーツ様、これ以上は過呼吸になってしまいます、ラズ様を一度こちらへ」

 
「ダメ僕のだから」
 
「っ」
 
 
 安心するラルド様の腕の中へいち早く行きたい一心で手を伸ばし海老反りになりながらこの男の子の腕の中で思いっきり暴れていた僕は気付かなかった。
 ビリッとピリつく緊張感がお二人の間に流れていたことに。
 
 
「今はわからないかもしれないけど、ラズ、キミは僕の唯一だ。生まれてきてくれてありがとう。これから毎日会いに来るよ、早く一緒に暮らしたいね」

「ぎぃやあぁぁぁぁぁっっ」

「ふふ、かぁわいい」
 
 
 
 これがのちの僕の番クオーツ当時8歳と、僕ラズ当時1歳の出会いであり、ロックオンされた瞬間だった。
 
 
 
 
 
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