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第181話 メルウク人のスルードと神造人ヴェクトル
しおりを挟む「だ、誰だ?厳つい鎧と変わった大剣……。それに隣のは……メルウクの? 」
「我が名はヴェクトル。霊量士にして遺跡より目覚めしバガルタの戦士だ」
「俺はスルード。スルード・マグナディアック・イグナイトだ」
白を基調に赤いラインが所々に入った美しい鎧をまとったその男がヴェクトルという男でありヴラディミールと同じ古代バガルタ人であるという。
またもう一方の、ユミロと背丈があまり変わらない、体に余りあっていないサイズの露出面の多い服を着ている褐色肌の大男がスルードと名乗る。
2人は彼に握手を求め、それにハーネイトも恐る恐る右手を差し出し応じたのであった。
「遺跡から目覚めただと?アーロンが聞いたら驚くな」
「なに?アーロンだと? 」
「知っているのですか? 」
「ああ、だがもう目覚めているとは思わなかったがな。他にも、あいつと同じように目覚めた奴はいるだろうが」
ヴェクトルは既にほかの仲間たちも目覚めていることに喜びながらも、星をうろつく忌まわしき存在に手を貸そうとする同胞もいることに悲しそうな顔も見せていた。
その間に彼はハーネイトの体を流れる気運を把握し、彼こそが最終計画で開発された技術をすべて積み込んだ存在であることも理解した。
「ほう、お前がネモ……いや、D計画の完成体、か。確かにその体を流れる気運はヴィダールの物だ。そうだ、龍を封印し一族の力を強く持つ者」
「D計画……?なんなんだろう。でもその前に、あの、貴方も私らと共に他の目覚めたと思われる人たちを探して頂けますか?」
「ふん……まあ、よかろう。同族が洗脳されておる所など見たくもないのでな。ただ、実力を後で確かめさせてもらうぞ」
ヴェクトルは鋭い眼光を光らせた後、そう言い笑いながら刃を交え実力を測りたいと腕を組んでから彼に申し出た。彼はハーネイトを見て、ある計画により生み出された存在の究極系なのではないかと分析していた。
「それは構いませんがね」
「そうか、俺も強い相手を探して居るのでな。今後ともよろしく頼むぞ」
「はい、ヴェクトルさん」
「結構素直でいいじゃないか、もっとおっかない存在だと聞いていたがよ」
「彼は、複雑な環境の中で揉まれながら生きてきたようじゃ。どういう方針であやつが彼の育成方針を奏したかはわからんが……少なくともあの傲慢なヴィダールの神柱とは大きく違うのだよ。あれを倒しソラの計画を止めるために生み出された、心優しき龍王になるべくしてなる男だ」
その後、スルードがハーネイトに話しかけ、深く礼をしてから同じ星の生まれであるユミロの件について話す。
「俺の兄弟ともいえるユミロが行方不明になったときは、いてもたってもいられなかったが……あんたが自分の組織に迎え入れて、好待遇で扱ってくれていると聞いて安心した。DGは戦闘に使えそうな民族を奴隷のように扱うことが少なくないのでな。改めて感謝する」
「凄く力持ちで、優しく頭も良い、とてもいい社員ですよ、ユミロさんは。私あまり力仕事は得意ではないので……」
「そうか、弟分も凄く嬉しいだろう。俺以外にそこまで心を開かせるとは大した男だ。付いて来た甲斐がありそうだ」
こうしてハーネイトはスプリィーテスらを連れて待ち合わせ場所である街はずれまで移動した。すると他の仲間たちは既に任務を完了させており、これにてDG反乱軍のメンバーを一通り集めることに成功したのであった。
新規メンバーもまた、長年戦いに身を投じ生き残ってきた面子ばかりであり、即戦力としての期待もハーネイトにはあった。
まずは今は戦う力のある、動ける存在を多く確保しておきたい。そう言う点で彼はこの仕事に関して乗り気であり今までと違う局面に立っていることを自覚していたのであった。
そんな中、ハーネイトたちが話している間にシャムロックは、人が増えたためベイリックスに全員載せられないと判断し、ゼペティックス社に連絡を取り、トランスポーターの手配をし、30分後に到着したそれに全員乗り込むと、ミスティルトシティに戻ったのであった。
「今後は、残りの武器商人と失踪した研究者、さらに女神の気運に汚染されたバガルタの人の対策が求められるわけだなハーネイト」
「頭が痛すぎるよ全く。リシェルたちも思わないか?」
「この場で話を聞いたやつら全員そう思いますね」
「そうですねハーネイトさん。私も、こんなことになっていたなんて……ショックです」
「そうだなエレクとリール。それであの、スプリィーテスさん。その武器商人たちってのは龍の影響とか受けていませんかね」
「調べんことには分からんが、相手が相手だからのう。それも考慮せねばならんじゃろう」
ハーネイトは頭に手を置くジェスチャーをしながらそういい彼もそれには同感すると示しつつ、災いはまだ去っていないことを強調する。
それに追随してヴァルターらも、逃げた残りの武器商人ことDG残党を早く倒さなければと強い意志を見せる。
伯爵はそんなヴァルターらに対し、ハーネイトの拠点の1つであるホテルまでついてくるように指示し、シムカはリリエットに声をかけられ再会を喜んでいた
「本当にこいつら仲間にして大丈夫なんですかね師匠」
「いざとなれば、こちらも対策はある。それに武器商人の件はこちらも初耳なんでね」
「DGを潰すにはその武器商人らの撃破が必須ですハーネイトさん」
「そうだろうな。調査も含め、今後はさまざなな活動をアル・ザードは行っていく必要がある。取り返しのつかない事態に陥る前にね」
一通り話を聞いたハーネイトは、ある用事を思い出し一旦席を外すといい、部屋を後にした。そう、事後報告を忘れていたのであった。ホテルの見晴らしがいい窓際で、彼はビュコルフに通信を行う。
「……今回の件もご苦労だったハーネイト」
「いえいえ、この程度大したものではないです」
「頼もしいな。だが、DGの残党がこの星に潜んでいることが厄介で不愉快だな」
「20年前の1件もありますからね……」
2人は、多くの星に災いを起こしてきた存在がこの星にいることに苛立ちを募らせる。20年前の第一次DG戦争では3000万人以上の異世界人及び現地人が犠牲になっている。これ以上あのような悲劇は起こさせない、2人は固く誓ったのであった。
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