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第178話 狙撃手リシェルとシムカ

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「さてさて、俺は東側を探してみるか」

 リシェルは単身で街の中を歩き回り、だれかいないか確かめる。街中は建物の一部が崩壊した瓦礫や荒れた地面のせいで歩きづらく、時折足を取られそうになる。

「ひどい有り様だな。殺風景というか……なっ!」

 そうして歩いていた矢先、彼は嫌な感が働き体を後ろにそらす。と次の瞬間、乾いた発砲音と同時に弾丸が飛んできてリシェルの顔にかすり傷をつける。

「狙撃か、ちっ!」

 リシェルは素早く近くにある建物の中に逃げ込み物陰から周囲を伺い警戒する。それと同時に腰に携帯していたインパクトマグナムブラスターを手にし臨戦態勢にはいる。

 一方、少し離れた建物の中から彼を狙撃した少女は驚きを隠せずにいた。射撃後無駄なく息を潜めながら、遠方にいるリシェルを静かに見ていた。

「うそ、あれをかわすの?あの男、只者ではないわ。でも写真の男ではない」

 少女は銃に弾を込めていたが、あっという間に自身の居る場所の近くまで移動したリシェルに驚き、待ち構えて撃とうと、部屋のドアの方に小銃を定めた。

「罠も特になしか。いや、こちらを誘っているのか?」

 一方のリシェルも鍛えた快脚を生かした特殊な移動術で狙撃手の居る場所まで移動し、階段を駆け上っていく。それに感づいた少女は静かに息を潜め待機していた。

「動くな!」

「来たのね」

 リシェルは狙撃手がいると思われる部屋のドアを、一気にけ破り素早くライフルを構えるが、対面にいるその少女もすでに銃を構えていた。ボロボロになっていた部屋の壁の隙間から、2人の間を駆けるように風が吹きすさんでいた。

「え、あ、お、女の子!? 」

「あら、驚いた? 」

「……さっきの狙撃、あんたのだな? 」

 リシェルは撃ってきた人物が可愛らしいはかなげな装いを見せる少女であることに驚く。彼の質問に、彼女は静かにうなづいてから自己紹介を行う。

「そうよ、でもかわされるなんて。それと、私はシムカ……ベラヤ・シムカ・ヘイヘよ」

「……俺の名はリシェルだ」

「そう、あなたもこの写真の男の仲間なのね」

「そうだが、でシムロはなんでこんなところに」

 何故このような荒れ果てた街に潜伏していたのか気になったリシェルはそう質問するも

「あなたたちが来るのを待っていた、それだけよ」

 と彼女は返答しいまいち理由がわからないリシェルは呆れていた。それでも理由を聞き出そうとした彼は、彼女のどこかマイペースな対応に翻弄されていた。

「何で、だよ」

「この写真の男の人、名前は……」

「ハーネイト師匠だ」

「ふうん、貴方ののお師匠さんなんだね。銃の師匠なの?」

「師匠は銃よりも近接戦と魔法戦を得意だ。まあ、人生の師匠てか、こう生きたいって感じのな」

「そうなのね、フフフ」

 シムロはまじまじと写真を確認すると、リシェルの話を聞いて微笑みようやく本題に入り話し始めた。それは、ハーネイトがDG側の人間、それもリリエットたちを配下に置いた話が原因であった。

「それで、沢山こちらがわに引きずり込んだから自分達もってか?」

「はい……それにヴァルターやメッサー、ヴラディミール様から話を聞いて、とてもいいチームなのねと思ったの」

 シムカは少し顔を赤らめながらヴラディミールらから聞いた話についてそう話す。それにはリシェルも同感であり、

「そりゃ否定はしねえ。だってなあ」

 と言葉を返しながら笑っていた。自身にとってはずっと憧れの存在であり、今はその人の下で経験を積んでいるのだから彼にとってこれほど幸せなことはないといえよう。

 だからこそ、自信を持って自分らの組織を誇らしくそう言い放てるのであった。リシェルにとって、自分が最ものびのびと活躍できるのがハーネイトのそばでありだからこそ、彼を守るために日々力を磨いているのである。

「自分達もハーネイトについて調べたけど、そういう人がいたならいろんな星で起こった戦争もたちまち解決してくれたかなって」

「何があったんだ、昔にさ」

 リシェルは既にシムカが敵意を見せていないことを理解すると、近くにきて座ってから、彼女の話を聞こうとする姿勢を見せ、シムカも少しうつむきながら、自身の過去について話をし始めたのであった。

「私ね、別の世界の住民なの。地球ってところから転移でやって来て、命からがら助けられDGに拾われた。スプリィーテスって名乗ったおじさんにね」

「へえ、そいつは、大変だったな、ああ」

「ええ、あの、それでみんないうと思うけど、私たちある危険人物を探してるの」

 シムカは、体を震わせながらDG内に存在する恐るべき存在についてリシェルに話をした。それは、DGを本来あるべき姿からゆがませた元凶ともいえる武器商人らの話だった。

「何だと?だとしたらその武器商人は早く見つけて倒さないとな」

「だから、そちらのチームに入りたいの。手にしている情報とかはすべて渡すから、お願い!」

 改めて、シムカは仲間共々、ハーネイトたちの傘下について真に追うべき存在を追いたいと意思を示した。リシェルはそれに少し困惑しながらも、ハーネイト師匠なら受け入れてくれるさと笑顔でそう言い彼女を安心させようとし、自身も昔のことについて話をし始めたのであった。

 さり気に彼女の方へ体を寄せたリシェルと、驚きながらも彼の今まで体験した話に興味を抱くシムカのやり取りは、まるで若者のデートのやり取りさながらであった。

 その後、シムカは改めてハーネイトの元に行きたいと言い、リシェルも彼女の言動などからおそらく大丈夫だろうと判断し、建物の外に連れ出したのであった。
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