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【繋ぐ熱量】
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「でも良かった。オレ、各務とタッチの差だったよね、マジで」
少し拗ねたような表情を浮かべ、奏に視線を送る朗太。
「ねえ、あの日、告ったのが俺じゃなくて、あれが各務だったら奏さん……ああーやっぱりいいや! オレ泣かされそう。奏さん、Sだから」
「ああ、それはないわ。各務はまず落ちてても拾ってないから、こういう展開にはなってない」
「マジで!? オレ、まさかの好印象?」
「各務みたいにデカイ男、私が拾えるわけない。あんたがハンディタイプだったってこと」
「……わあ。だから聞きたくなかったんだぁー」
大袈裟にも頭を抱えてのけぞる。
まるでシュートを外したサッカー選手のようで、つい言葉が口をついて出た。
「あんた、サッカーやってたんでしょ?」
自分で振ったのだけれど、音にした「サッカー」という言葉に、心臓が早鐘を打った。
「高校までね。今もたまにフットサル行ってる」
酔いに任せて振った話。
ほんの少し呼吸がしづらい。
「ポジションどこだったの?」
「高校? あー、だいたいトップ下かな。そういや相良さんとこのガッコとあたったことあるみたいで世間って狭いなーってビックリ」
相良の話によれば、朗太は奏が一番最初に退学した男子校のサッカー部ということになる。
相良の通ってた高校とはブロックが違うので、確かに大きな大会以外であたることはなかった筈だ。
「播高だったんでしょ? あそこ強いでしょ? レギュラーとか取れたわけ?」
聞かれて朗太の顔に苦笑が浮かぶ。
「見ての通りオレ体格がよくないから、やっぱフィジカル面で難しいとこあって。公式戦は3年でちょこっと出たくらい」
100人近い部員の中、しかもその体格で少しでも公式試合に出れたのならマシな方だ。
「つか相良さんとこ全国いったよね。オレ、テレビで見てたんだけど──奏さんも見た? 見たよね? PKまで行って、すっげ興奮した。後半10分のあたりのあの場面で、サイドがレッド取られたでしょ? あれでレッドになる理由がマジいみふでさっ」
その当時のことを思い出したのか、目に、手に、力がこもり、その後も試合の話は2分は続く。
「その後せっかく体張って……って…、あ、ごめん。オレ、暴走してた?」
それはそれは熱く語る朗太が突然我に返り、奏の様子を伺う姿がシュンとなった犬のようで、それには奏も笑ってしまった。
「いや。疾走くらいじゃない? ……まあ、あんたが女の子とあんま続かないって話の一端を垣間見た感はあるわ」
サッカーに興味のない人間なら「ふーん、そうなんだー」で終わる話。朗太がもう少し若い頃は、きっとそんな空気も読めず、付き合い始めの彼女相手に延々話をし続けたんだろう姿が簡単に想像できた。
「ま、私はあの試合観たから言いたいとするとこはわかるけどね。ロスタイム……ああ今は、アディショナルタイムだっけ? あの時相良が蹴った浮き球、向かい風じゃなきゃ、ね」
「そうそう!!」
砂粒の中から同じくらい小さな宝石を見つけたような、キラキラした表情。
「もー、やっぱすず…奏さんだわっ! オレ、今マジでやばい」
「いちいち名前を言い直さなくてもいいと思うんだけどね。もう清白さんのままでいいんじゃないの?」
「は? なに言ってんすか!? ダメダメ! 奏さんは奏さんなの!」
朗太の言葉に心臓が跳ねた。
本人は何気なく口にしたのだろうが、奏にとってそれはとても意味のある言葉。
固く閉じた奏の心に、少しだけ隙間を作るほどに。
「……あんた、よそのキーパー追いかけて、播高行ったんでしょ? 自分はフィールドの選手なのに」
「え、なんでそんなこと知ってんの? あ、相良さん!? ちょ、え、じゃあ、あの…」
驚きの表情から一転、椅子に座ったまま姿勢を正してこちらの様子を伺うように引きつり気味に笑顔を浮かべた。
少し拗ねたような表情を浮かべ、奏に視線を送る朗太。
「ねえ、あの日、告ったのが俺じゃなくて、あれが各務だったら奏さん……ああーやっぱりいいや! オレ泣かされそう。奏さん、Sだから」
「ああ、それはないわ。各務はまず落ちてても拾ってないから、こういう展開にはなってない」
「マジで!? オレ、まさかの好印象?」
「各務みたいにデカイ男、私が拾えるわけない。あんたがハンディタイプだったってこと」
「……わあ。だから聞きたくなかったんだぁー」
大袈裟にも頭を抱えてのけぞる。
まるでシュートを外したサッカー選手のようで、つい言葉が口をついて出た。
「あんた、サッカーやってたんでしょ?」
自分で振ったのだけれど、音にした「サッカー」という言葉に、心臓が早鐘を打った。
「高校までね。今もたまにフットサル行ってる」
酔いに任せて振った話。
ほんの少し呼吸がしづらい。
「ポジションどこだったの?」
「高校? あー、だいたいトップ下かな。そういや相良さんとこのガッコとあたったことあるみたいで世間って狭いなーってビックリ」
相良の話によれば、朗太は奏が一番最初に退学した男子校のサッカー部ということになる。
相良の通ってた高校とはブロックが違うので、確かに大きな大会以外であたることはなかった筈だ。
「播高だったんでしょ? あそこ強いでしょ? レギュラーとか取れたわけ?」
聞かれて朗太の顔に苦笑が浮かぶ。
「見ての通りオレ体格がよくないから、やっぱフィジカル面で難しいとこあって。公式戦は3年でちょこっと出たくらい」
100人近い部員の中、しかもその体格で少しでも公式試合に出れたのならマシな方だ。
「つか相良さんとこ全国いったよね。オレ、テレビで見てたんだけど──奏さんも見た? 見たよね? PKまで行って、すっげ興奮した。後半10分のあたりのあの場面で、サイドがレッド取られたでしょ? あれでレッドになる理由がマジいみふでさっ」
その当時のことを思い出したのか、目に、手に、力がこもり、その後も試合の話は2分は続く。
「その後せっかく体張って……って…、あ、ごめん。オレ、暴走してた?」
それはそれは熱く語る朗太が突然我に返り、奏の様子を伺う姿がシュンとなった犬のようで、それには奏も笑ってしまった。
「いや。疾走くらいじゃない? ……まあ、あんたが女の子とあんま続かないって話の一端を垣間見た感はあるわ」
サッカーに興味のない人間なら「ふーん、そうなんだー」で終わる話。朗太がもう少し若い頃は、きっとそんな空気も読めず、付き合い始めの彼女相手に延々話をし続けたんだろう姿が簡単に想像できた。
「ま、私はあの試合観たから言いたいとするとこはわかるけどね。ロスタイム……ああ今は、アディショナルタイムだっけ? あの時相良が蹴った浮き球、向かい風じゃなきゃ、ね」
「そうそう!!」
砂粒の中から同じくらい小さな宝石を見つけたような、キラキラした表情。
「もー、やっぱすず…奏さんだわっ! オレ、今マジでやばい」
「いちいち名前を言い直さなくてもいいと思うんだけどね。もう清白さんのままでいいんじゃないの?」
「は? なに言ってんすか!? ダメダメ! 奏さんは奏さんなの!」
朗太の言葉に心臓が跳ねた。
本人は何気なく口にしたのだろうが、奏にとってそれはとても意味のある言葉。
固く閉じた奏の心に、少しだけ隙間を作るほどに。
「……あんた、よそのキーパー追いかけて、播高行ったんでしょ? 自分はフィールドの選手なのに」
「え、なんでそんなこと知ってんの? あ、相良さん!? ちょ、え、じゃあ、あの…」
驚きの表情から一転、椅子に座ったまま姿勢を正してこちらの様子を伺うように引きつり気味に笑顔を浮かべた。
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