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第二章
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辞令を受けた僕とテオは一緒に旅支度をするために街に買い物へと繰り出した。
「へへっ、まさかフェルと一緒に旅をする事になるとは思わなかったぜ」
鼻を擦りながら照れたように笑うテオはとても可愛らしいのだが・・・・
「勇者様、良かったら俺の店で武器を買ってってくれないか!?」
「いや、俺の店が先だ。勇者様、この町一番の防具に寄っていってくださいよ!!」
「待て待て、旅をする上で必須なのは食料だろ、勇者様、是非俺の店で!!新鮮な食材を取り揃えてますよ!!」
お城で歓待を受けた翌日に、テオが勇者である事が本国で大々的に発表され、テオは今ではまさに時の人だ。
しかし、そんな歓迎を受けてもテオの顔は思いっきり嫌そうに顰めており、耳の裏は真っ赤に染まっている。
だが、それも無理からぬ事なのかもしれない。下穿きを足首まで下ろし、真っ赤な顔の上着を捲って勇者の証を見せている姿をしたテオの艶姿が、新聞で街中に配られた訳なんだから・・・
「うぅ・・・フェ、フェル!!早く行こうぜ!!」
「・・・・うん」
それを理解しているテオは僕の手を思いっきり引っ張りながら、どんどんと人気の無い所に向かっていく。
完全に人がいなくなった路地で、テオは僕の手を離して深々とため息を漏らす。
「こんな形で有名になりたくなかったぜ・・・」
「・・・・テオは可愛いから仕方ない」
「それ、俺の息子さんの事じゃねぇだろうな・・・」
涙目で見下ろしてくるテオに、そこもエロくて可愛いという言葉を飲み込み、視線を逸らすと視界の端に入った店が目に止まった。
「ああぁー!!視線逸らしやがった。って事はそう思ってるって事だな!?」
「・・・・テオ、怒ってる姿も可愛いけど落ち着け」
ちょっと情緒不安定になっているテオを抱きしめて、背中をポンポン叩いて宥めて落ち着かせた後、先ほど視界に入った店を見るように促す。その店を見たテオも驚いた顔のまま、僕へと視線を戻すのだった。
「ごめんください」
俺たちは見つけた店に入店しながら、檻の中から向けられる凶悪な視線に息をのむ。
「グルルルゥ!!」
「がうがう!!」
「キシャアアァア!!」
そこには遠征で出会ったゴブリンたちとは比べものにならない魔物たちが檻の中で犇めいており、こんな魔物たちを国の中で売買している奴がいる事に緊張が高まる。
「はいはい、いらっしゃいませ~」
そんな俺の緊張と裏腹に、聞こえてきた声はまだ幼さを残した高い声の子供だった。
目元までフードで隠しており、顔も、性別も分からない。いや、それ以上に目の前の子供は本当に存在しているのかと感じるほど、目の前にいる子供の気配は希薄だった。
「おや? おかしいなぁ・・・君の力量で僕の店が見つけられる筈がないのに・・・・?」
おそらく一人称からして少年だと思われる子は、フード越しに不思議そうに首を傾げながら俺の隣にいるフェルへと視線を向ける。
「ああ・・・なるほど。なら、二人とも僕にとっては最上のお客人だ。ようこそ、魔物商へ」
深々と俺たちに頭を下げられている筈なのに、俺には少年に見降ろされているような妙な寒気を感じていた。
「僕の名前はゾウサータ。近しい者はサータって呼ぶから、お兄さんたちもそう呼んでくれると嬉しいかな?」
これが俺たちと四天王であるガカルが言っていた魔王である彼との初めての出会いだった・・・
しかし、その事実を知るのはまだ遠い未来の話・・・・
「へへっ、まさかフェルと一緒に旅をする事になるとは思わなかったぜ」
鼻を擦りながら照れたように笑うテオはとても可愛らしいのだが・・・・
「勇者様、良かったら俺の店で武器を買ってってくれないか!?」
「いや、俺の店が先だ。勇者様、この町一番の防具に寄っていってくださいよ!!」
「待て待て、旅をする上で必須なのは食料だろ、勇者様、是非俺の店で!!新鮮な食材を取り揃えてますよ!!」
お城で歓待を受けた翌日に、テオが勇者である事が本国で大々的に発表され、テオは今ではまさに時の人だ。
しかし、そんな歓迎を受けてもテオの顔は思いっきり嫌そうに顰めており、耳の裏は真っ赤に染まっている。
だが、それも無理からぬ事なのかもしれない。下穿きを足首まで下ろし、真っ赤な顔の上着を捲って勇者の証を見せている姿をしたテオの艶姿が、新聞で街中に配られた訳なんだから・・・
「うぅ・・・フェ、フェル!!早く行こうぜ!!」
「・・・・うん」
それを理解しているテオは僕の手を思いっきり引っ張りながら、どんどんと人気の無い所に向かっていく。
完全に人がいなくなった路地で、テオは僕の手を離して深々とため息を漏らす。
「こんな形で有名になりたくなかったぜ・・・」
「・・・・テオは可愛いから仕方ない」
「それ、俺の息子さんの事じゃねぇだろうな・・・」
涙目で見下ろしてくるテオに、そこもエロくて可愛いという言葉を飲み込み、視線を逸らすと視界の端に入った店が目に止まった。
「ああぁー!!視線逸らしやがった。って事はそう思ってるって事だな!?」
「・・・・テオ、怒ってる姿も可愛いけど落ち着け」
ちょっと情緒不安定になっているテオを抱きしめて、背中をポンポン叩いて宥めて落ち着かせた後、先ほど視界に入った店を見るように促す。その店を見たテオも驚いた顔のまま、僕へと視線を戻すのだった。
「ごめんください」
俺たちは見つけた店に入店しながら、檻の中から向けられる凶悪な視線に息をのむ。
「グルルルゥ!!」
「がうがう!!」
「キシャアアァア!!」
そこには遠征で出会ったゴブリンたちとは比べものにならない魔物たちが檻の中で犇めいており、こんな魔物たちを国の中で売買している奴がいる事に緊張が高まる。
「はいはい、いらっしゃいませ~」
そんな俺の緊張と裏腹に、聞こえてきた声はまだ幼さを残した高い声の子供だった。
目元までフードで隠しており、顔も、性別も分からない。いや、それ以上に目の前の子供は本当に存在しているのかと感じるほど、目の前にいる子供の気配は希薄だった。
「おや? おかしいなぁ・・・君の力量で僕の店が見つけられる筈がないのに・・・・?」
おそらく一人称からして少年だと思われる子は、フード越しに不思議そうに首を傾げながら俺の隣にいるフェルへと視線を向ける。
「ああ・・・なるほど。なら、二人とも僕にとっては最上のお客人だ。ようこそ、魔物商へ」
深々と俺たちに頭を下げられている筈なのに、俺には少年に見降ろされているような妙な寒気を感じていた。
「僕の名前はゾウサータ。近しい者はサータって呼ぶから、お兄さんたちもそう呼んでくれると嬉しいかな?」
これが俺たちと四天王であるガカルが言っていた魔王である彼との初めての出会いだった・・・
しかし、その事実を知るのはまだ遠い未来の話・・・・
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