転生者は隠しボス

アロカルネ

文字の大きさ
上 下
5 / 30
第一章

1-5

しおりを挟む
本国の宿舎に戻ったテオと僕は一緒に布団で横になっていた。
元々遠征の後は休暇の予定ではあったが、精鋭の一人が魔物化した事への対応と見習い騎士たちのメンタルケアで、予定よりも長い休暇になるらしい。それに、ガッツが魔物化したことが、テオには相当に応えてしまっている。
「フェル、わりぃ・・・」
「・・・いや、役得だ」
背中を優しく撫でるとテオは僕の胸に顔を埋めながら甘えてきて、それが非常に可愛らしくて堪らない。
でも、流石に手を出せる空気ではないし、今はしばらく我慢するとしよう。
それにしても、一体いつ教えれば良いのかなぁ。
「ガッツさんってさ、俺がこの宿舎に泊まり込んでから、ずっと面倒見てくれた人なんだ・・・ぐずんっ・・」
ポツポツと語り始めるテオに、僕はいよいよもって伝えるタイミングを逃していった。
数十分後・・・
「ええぇ!?す、救える方法があるのか!?」
「・・・・そりゃ、憑依されてるだけだし、憑依を解けば人間に戻るよ」
「そそそっ、そういうことはもっと早く言えよ!?」
「・・・泣いてるテオもとても可愛かった」
「うわあぁぁ!!い、言うなよッ、馬鹿ぁ!!」
顔を真っ赤にして怒ってくるテオに癒やされながら、勇者としての力を高めていくことが大切だという事も伝えておいた。それに俄然やる気を出すテオを眺めていると・・・
「テオ、少し良いか?」
「え? あっ、た、隊長!?お、お疲れ様です!!」
部屋に入ってきた隊長にテオは慌てたように敬礼し、僕もそれに習って敬礼する。
一瞬だけ、隊長は僕に視線を向けてくるが、すぐにテオに視線を戻す。
「非番の日に悪いな。実は・・・」
そして、テオが来週に王族にいる王城で勇者としての確認と勇者降臨を祝って祝賀会をされるという説明を受けた。


隊長からの説明を受けた俺は頭の中がパンクしそうになっていた。
いつかは騎士として、国王様から勲章を授与されるとか言う夢を見なかったわけでは無いが、それが来週に叶うとか急に言われても、今はガッツさんを助けられると言うことを聞いただけでいっぱいいっぱいだ。
それに・・・
「え゛っ、勇者の証を大勢の前で見せるって事・・・・ですか?」
「ああ、そういう予定になってるんだが、どうしたんだ?」
不思議がる隊長に俺は頭の中が真っ白になる。トイレとかでこっそり確認したのだが、勇者の紋章は足の付け根。しかも股間の真横に出ており、これを見せるって事は当然真横にあるチンコも一緒に見せるということになる。
「じ、実は・・・・」
俺の説明に隊長の非常に気の毒そうな顔をしてくれるが、すでに決まってしまっている事であり、王族の決定を覆す事は出来ないと言われてしまった。まさか、王族の皆様方も俺のチ〇コの真横に証があるなんて思ってないからなんだろうけど、大勢の貴族たちの前で局部を晒すなんて、不敬罪にならないかが心配だ。
「・・・・・みんなの前でテオがフルチン。エロイな」
「い、言うなよぉ・・・うぅ・・」
「恥ずかしがっているところ申し訳ないが・・・そんな余裕もないと思うぞ?」
「え?」
隊長は小さく咳払いをすると、これから俺が必要になるものを説明してくれる。
・王族に対する礼儀作法
・騎士としての礼儀作法
・食事マナー
・ダンスの練習
・貴族たちの囲い込みによる勧誘に対する断りの入れ方等々・・・
「ちょっ、ま、待ってください!!そんなにいっぱい覚えきれる自信ないです!?」
「いいや、嫌でも覚えてもらうぞ。お前の行動が引いては軍の評価にもかかわるわけだからな・・・」
非常に座った眼で肩に手を置かれてしまい、その目は絶対に逃がさないという強い意志が感じられる。
まだ勇者としての自覚もないのに、今から訪れる試練に俺は腰を引こうとしたが・・・
「という事で非番は返上だ。今からノルと一緒にたっぷりとお勉強の時間だ」
「い、いやだー!!フェル、フェル~!!」
「・・・・怯えて嫌がってるテオも可愛いな」
唯一の頼みのフェルに助けを求めるが、相変わらずの平常運転のフェルは、引っ張られる俺の後についてきながら無表情でファイトと応援だけをしてくれるのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

アルファだけの世界に転生した僕、オメガは王子様の性欲処理のペットにされて

天災
BL
 アルファだけの世界に転生したオメガの僕。  王子様の性欲処理のペットに?

高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる

天災
BL
 高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

貧乏貴族の末っ子は、取り巻きのひとりをやめようと思う

まと
BL
色々と煩わしい為、そろそろ公爵家跡取りエルの取り巻きをこっそりやめようかなと一人立ちを決心するファヌ。 新たな出逢いやモテ道に期待を胸に膨らませ、ファヌは輝く学園生活をおくれるのか??!! ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。

麗しの眠り姫は義兄の腕で惰眠を貪る

黒木  鳴
BL
妖精のように愛らしく、深窓の姫君のように美しいセレナードのあだ名は「眠り姫」。学園祭で主役を演じたことが由来だが……皮肉にもそのあだ名はぴったりだった。公爵家の出と学年一位の学力、そしてなによりその美貌に周囲はいいように勘違いしているが、セレナードの中身はアホの子……もとい睡眠欲求高めの不思議ちゃん系(自由人なお子さま)。惰眠とおかしを貪りたいセレナードと、そんなセレナードが可愛くて仕方がない義兄のギルバート、なんやかんやで振り回される従兄のエリオットたちのお話し。

処理中です...