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一年に一度のハロウィン

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生者も死者も祝いお祭りに、僕は今日もひっそりと参加をする。
頭にはカボチャを被りながら、ゆっくりと辺りを散歩していると喧噪が聞こえてきた。
「このガキ、いい加減にしやがれ!!」
「別に一個ぐらい良いだろ!!」
「言い訳あるか!!」
そこには首根っこを掴まれ、持ち上げられているやんちゃな少年の姿が見え、僕は慌ててソコに走っていく。
「あの、どうしたんですか!?」
「コイツが売り物の菓子を盗もうとしやがったんだよ」
「へんっ、盗んでねぇよ。ちゃんとトリックオアトリートって言っただろ!!」
「断っただろうが!!」
「だから悪戯でお菓子を取ろうとしたんじゃねぇか!!」
「んな屁理屈が通るかよ!!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ二人に僕はポケットからお金を取り出し、オジサンに向ける。
「あ、あの、僕が代わりに買うから、その子離して欲しいです・・・」
「んあ? まあ、買うってんなら許してやるよ」
オジサンは見た目よりはいい人だったみたいで、お金を受け取ると少年を下ろしてくれた。
ホッとする僕に、少年は口を尖らせながら僕を睨んでくる。
「別に助けて欲しいなんて言ってねぇぞ!!」
「助けたわけじゃ無いよ・・・その・・・えーと・・・自己満足って言う奴かな」
「へんっ、お恵みなんていらねぇんだよ!!」
どうやら相当に捻くれた性格をしているようで、身なりも汚れているからスラム街とかの子供なのかもしれない。
呆気にとられて見ていると、少年は持っていたお菓子を僕に突き出してくる。
「ほらよ!!」
「え?」
「お恵みなんていらねぇって言っただろ!!てめぇのなんだから受けとれよ!!」
「う、うん・・・」
お菓子を受け取ると同時にギュルルルっという音が少年から聞こえてきて、その様子に思わずクスッと笑ってしまう。
「うっ・・・・」
それを聞かれた少年は顔を真っ赤にさせてしまい、慌てたようにそっぽを向く。
「ねえ、僕には言ってくれないの?」
「あ?」
「ハロウィンって言ったらアレでしょ?」
「と、トリックオアトリート?」
「はい」
その言葉に僕は渡されたお菓子を再び少年に渡す。
「お、おい、今のは別に・・・」
「食べて欲しいな~」
「・・・・・変な奴!!」
そう言いながらも少年は、よほど空腹だったのか包みを剥がすと凄い勢いで食べていく。
食べている姿を見ていると、まだまだ幼さを感じさせる姿をしており、年齢で言ったら12~13歳ぐらいだろうか。
僕の視線に気づき、少年はバツ悪そうに口を尖らせながら・・・・
「・・・・あんがとよ」
「どういたしまして」
「・・・ふんっ!!お前、名前は?」
「僕は・・・・そうだね。カボチャ君って呼んでよ」
「はぁ? んだよ。それは」
「君の名前は?」
「アルス・・・・」
意外と素直な性格でもあるみたいで、僕の質問にはすんなりと答えてくれる。
餌付けが効いたのかも知れないなって思うと、なんだか彼が子猫のように見えた。
「そっか、ねえ、せっかくだし一緒にお祭り回ろうよ」
「はぁ? なんで俺とお前が一緒に祭りなんか・・・」
「露店のお菓子色々と奢るからさ、一人だと寂しいんだ」
「・・・・・しょうがねぇな~」
「じゃあ、まずは・・・・」
僕は彼を引き連れていくと、仮装ショップに向かっていった。
初めは嫌がっていたが、お祭りだからと何度も説得をすると諦めたように衣装を着替えてくれる。
「うん。凄いよく似合ってるよ」
「そりゃどうも!!」
半分や毛になったように応えてくれる彼の姿は、漆黒の髪に良く似合っている猫耳と尻尾、そしてサスペンダーの可愛い姿だ。
感情に合わせて尻尾も動く仕組みなのか、叫んだ時にぶわっと膨らんで怒っている姿が本当に可愛いかった。
「それで、次は何処に行くんだよ?」
「そうだね。まずはお腹減ってるでしょ? 何か食べに行こうよ」
「マジか!?」
僕の言葉に今度は猫耳がピンッと上に立ち上がり、ハッとしたように視線を逸らして口を尖らせる。
「が、ガキ扱いすんじゃねぇよ。お前だってガキだろ」
「まあまあ、せっかくのお祭りなんだしさ」
「はぁ・・・なんかお前のペースに飲まれっぱなしって気がするぜ・・・」
嫌そうにしながらも、やっぱりご飯が食べられるのは嬉しいようで、尻尾は立ったままだ。
それから僕たちは色んな店で買い食いをしながら、豪快に食べていくアルスの嬉しそうな姿に僕まで嬉しくなってくる。
「ぷっはぁ~、食った食った~、こんなに食えたの久しぶりだぜ」
「それは良かった。それからコレもプレゼントしてあげるよ」
「んあ?」
近くの店で彼が食べている間に買った本を渡すと、アルスは不思議そうな顔で本を捲っていく。
「おい、こんなの俺は読めないぞ」
「勉強すれば読めるようになるよ?」
「うげぇ・・・勉強なんて勘弁だぜ・・・」
「だーめ、知識は将来のために役に立つんだから身につけないともったいないよ」
「なんつーか、大人みたいな事言うんだな」
「ふふっ、まあね」
「なあ・・・・どうして、ここまで優しくしてくれるんだ?」
「ん?」
「だって、俺は見ての通りのスラム街出身だぜ? 普通は近づいたりもしねぇよ」
「なんでかな? 気まぐれかもしれないね」
「気まぐれねぇ~」
座っていたベンチで頬杖を掻きながら、尻尾をフリフリと振っている姿はやっぱり可愛らしい。
「んで、カボチャ君はどこ出身なんだよ?」
「・・・・僕のことは良いじゃないか」
「別に良いけどよ・・・」
「ねえ、今日のお礼に一つだけ約束して欲しいんだ」
「なんだよ?」
「来年もまた一緒にお祭りに行ってくれる?」
「んだよ。そんな事かよ、別に良いぜ」
「ありがとう、あっ、お腹もいっぱいになったんだし、そろそろ勉強しようか?」
「はぁ!?なんでだよ!?」
「さっきも言ったでしょ、知識は宝だって、ほら、君の家に案内して」
「えぇぇ~、お前って意外と図々しいな」
強引に僕は彼の家に着いていくと、予想通りに吹きざらしになっている家で、寝る場所には薄い掛け布団しか無かった。
「コレは凄いね・・・」
「これがここじゃ当たり前なんだよ」
「それもそっか・・・じゃあ、まずは字の読み書きから勉強していくよ」
「マジでやんのかよ・・・」
それから僕とアルスは一年に一度だけ会っては、お祭りを楽しんだ後に勉強をするのが日課になった。
「お前ってさ、俺が寝た後に毎回帰るよな。たまには起きるまでいろよ」
「気が向いたらね~」
「ちぇ・・・」
一年ごとにアルスの身体は成長していき、19歳になった彼は鍛えられた立派な身体つきになっていた。
勉強の所為かもあったようで、今では前に露店で揉めた店主の下で商売について学びながら働いているらしい。
「よお、久しぶりだな」
「うん、久しぶり。すっかり大きくなったね」
「お前はチビのまんまだよな」
「ふふっ、それはそうだよ」
「・・・お前ってやっぱり幽霊なんだ・・・よな?」
いつまで経っても見た目の変わらない僕に会う度、彼は徐々に確信していたようで、今日の祭りの最後にそんなことを聞いてきた。
僕は初めて覆っていたカボチャを取りながら、彼に笑顔を向けて笑いかける。
「そうだよ。僕は大昔に死んだ幽霊さ」
「・・・・そっか」
「今日は君にお別れを言いに来たんだ」
「なっ!?突然なんでだよ!?」
「僕が見えるのは19歳までなんだ。来年には・・・・君に僕は見えなくなる」
「・・・・・でも、お前は俺を見れるんだろ?」
「そうだね・・・・」
これからも僕はキッと祭りで彼の姿を探して、後ろをついて行ってしまうんだろう。
それぐらいに僕は彼を気に入ってしまっている。
「なあ、今日は俺の家で過ごそうぜ」
「良いよ」
「・・・・・・」
招待された彼の家は、昔とは大違いなほどに立派になっていた。
とは言っても普通の民家って言う感じなんだけど、それでも吹きざらしだった民家と比べると雲泥の差だ。
家に着くなり、僕は抱き上げられるとベッドの上に押し倒された。
「あの・・・これはどういう・・・んむっ・・んんっ・・・」
ちゅっ・・ちゅぷっ・・・れろ・・・
「んはぁ・・・ふぁ・・・・」
「好きだ」
「・・・・・・・」
押し倒されるや否や、急にキスをされながら正面からされた告白に僕は思考が停止する。
気づけばこめかみを伝って、涙が零れてしまっており、それを彼の大きくなった指先が優しく拭ってくれる。
「・・・・君はズルいよ・・・最期にそんな事を言うなんて」
「最期なんて言うなよ・・・俺はお前が好きなんだ。だから、絶対にどうにかしてみせる」
「アルス・・・僕も・・・たぶん、君が好きだよ」
「たぶんってなんだよ?」
キスをされた時に嫌悪感はなくて、むしろ心地の良い感触が広がってきたんだ
でも、それは同時に寂しさをも僕に突きつけてきて、もう来年には会えなくて朝日が昇ると同時に僕は消える。
そして、次のハロウィンには再び姿を現すが、その時には彼には僕は見えない。
「ねえ・・・アルス・・・しよっか?」
「・・・・おう」
なにをとは言わなくても、アルスも察した様に上着を脱いでいき、逞しくなった身体が僕に覆い被さってくる。
短パンをゆっくりと下ろされていく、露わになった恥部を優しく愛撫されながら、アナルを解されていく感触に何度も声を漏らした。
そして、アルスが下を脱いだ時に立派すぎるソコに僕は赤面をしながらも受け入れて、何度も何度も身体を重ねた。
「ふぅ・・・腰が痛い・・・」
「悪かったって」
「本当にそう思ってる?」
長い長い情事を重ね、おかげで僕の腰は足腰が立たないぐらいになっている。
ベッドから起き上がれずにいると、髪をかき上げられて額にキスをされる。
「あっ・・・・」
「もう時間みたいだね・・・」
朝日が昇ってくると同時に、僕の身体は半透明になっていくとアルスの逞しいからだが僕を抱きしめてくる。
「消えるな・・・消えるなよ・・・・」
「・・・ごめんね。大好きだよ。アルス」
「・・・ぐずっ・・・頼むよ・・・消えるなって・・・」
「男の子がそんな簡単に泣いたらダメだよ・・・アルス、本当に大好きだったよ・・・」
抱きしめられたいた感触は次第に無くなっていき、気づけば僕はいつものように幽霊として意識の無い身体で宙を浮いていた。
ハロウィンの時以外の僕は実態を持たず、思考もほとんど出来ずにただ彷徨うだけの存在だ。
(アルス・・・アルス・・・・)
ただ、そんな状態でも僕はアルスへの想いだけを忘れずにいられる。
来年には僕の姿は見えないけれど、それでもこれからも彼の成長を見ていられる。
それだけで僕には充分すぎるほどに幸せなんだ。彼がこっちに来たら、きっとまた会えるから・・・・






・・・・・・・・






そんな風に思っていた時期が僕にも有りました。
「アルス~、黒魔術は禁じられてると思ってたんだけど僕の気のせいだったかなぁ~」
「それが必死に勉強して恋人を取り戻した恋人に言う台詞かよ?」
僕は気づけば数年後にアルスに使い魔として召喚されており、今は25歳のアルスと一緒に生活をしている。
黒魔術を使った事で破門されたアルスは、今は旅人として各地を翻弄する冒険者になっている。
「知識は何物にも代えがたい宝なんだろ?」
「そうは言ったけど、まさか黒魔術の知識を覚えるなんて思わなかったよ」
「俺も魔法使いになるなんて思わなかったぜ」
「あははっ・・・・本当にね」
僕は依り代の本体そっくりの身体に写され、今日もアルスから愛の嵐を受けている。
ハッキリ言って照れ臭いを通り越えて、うっとうしいレベルだ。
まさか、ここまで溺愛されているとは思わなかったけど・・・・・
「それで、今日は何処に行こうか?」
「そうだな。最近は熱くなってきたし、北の方で依頼を受けながらのんびり過ごそうぜ」
「それも良いね」
こうして、僕とアルスは一年に一度の出会いから毎日の出会いへと変わり、今日も楽しく日々を過ごしている。
夜の方もまあ・・・それなりというか毎晩で、使い魔じゃなかったら身体が持たなかったかも知れないけど・・・
アルスのアレって本当に立派になっちゃったから・・・僕の負担もちょっとは感が手欲しいぐらいだ。
でも・・・・それでも好きなんだから僕も相当にエッチなんだろうな。
「アルス、好きだよ」
「おう、俺も大好きだぜ」

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