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第2話 都会と田舎
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「実際、都会ってどうなの?」
「どうって言われても……遊べる公園も無くて、毎日受験の話ばっかりされるとこだよ」
「えー、そんなはずないよ。都会は田舎より楽しいとこだってテレビでやってたもん」
そんな風に話しながらひまわりと僕はひまわり畑を抜け、島で1つしかない駄菓子屋さんに向かっていた。もちろん僕は道を知らないので、彼女についていくことしかできないのだけれど。
「そうかな……。みんな何かに追われているみたいで、僕は息苦しいけどな」
「ふーん、そんなもんか。あっ着いた着いた。おばちゃーん。ラムネ2つ!」
「あらあらひまわりちゃん。かわいらしい子を連れて、新しい彼氏かい?」
「へへー、いいでしょ。都会の彼氏だよ」
おどける2人を見ながら、僕は引っかかる。
(新しい彼氏ってことは、前に彼氏がいたことあるのかな……?)
そう思うと、なんだか胸がもやもやする。この気持ちはなんだろう? そんなふうなことを考えながらうつむいていると、ひまわりがラムネの瓶を僕の頬に押し当てて来た。
「冷たい!」
「あはは! はい、ラムネ。わたしのおごりだよ」
「あ、ありがとう」
僕は栓の開けられたラムネをちびりと飲む、甘い味と喉を刺激する炭酸を楽しむ。
「東京ではラムネとか飲むの?」
「あんまり。僕おまつりとかもいかないし」
「ふーん。じゃあいつも何飲んでるの?」
「んー、僕は牛乳かな?」
「ほっほっー?」
ひまわりがにまにまといやらしい笑みを浮かべる。
「背が低いの気にしてるの?」
「うぐ……」
「図星だ」
そう僕は平均的な同年代の男子よりも小さい、そしてひまわりよりも小さい。それがコンプレックスだった。
「いいだろ別に」
「拗ねない拗ねない。弟って感じでかわいいよ」
「むー」
かわいいと言われるのも、弟と言われるのも、僕は嬉しくなかった。だから少しむくれてしまう。
「むくれない、むくれない。ほら、おねえさんと海で遊ぼうよ」
ひまわりがラムネを持っていない方の手を差し出してきた。最初なんのことかわからなかったけれど、手を繋ごうという意味だとだんだんと理解していった。もちろん理解するにつれて僕の顔は熱くなり、おずおずと彼女の手を握ることになるのだった。
はじめて握った女の子の手は、柔らかかった。
「じゃあレッツゴー!」
◆◆◆
海に着くまでにラムネを飲み終えた僕らは、早速海に入った。もちろん水着なんて持ってきていなかったが、僕は半ズボンにTシャツ姿でサンダルだったからある程度入ることができた。ひまわりも白いワンピースの裾が濡れるのも構わず、ざぶざぶと海に入って行く。
「うりゃ!」
「わ! やめてよっ」
ひまわりが僕に海水をかけてくる。
「やっめませーん。うりゃうりゃ!」
海水をかけ続けるひまわりに対して僕も反撃に出る。
「やったなあ! うりゃうりゃりゃ!」
夕方になる頃には2人ともずぶぬれになってしまい、砂浜に倒れこんでいた。
「あー、楽しかった。久しぶりに誰かと遊んだよー」
「? 彼氏がいたんじゃないの?」
チャンスとばかりに僕は気になっていたことを聞いてみた。
「気になる?」
またひまわりがいじめっこの笑顔を浮かべて、僕を見つめてくる。視線を合わせることができずに僕は視線を下に逸らす。するとそこには濡れて少し透けた彼女の胸元があり、さらに僕は視線を逸らすことになった。
ひまわりはそんな僕の様子を一通り楽しむと再び砂浜に横になった。
「いないよ。彼氏なんて。この島に歳の近い男の子なんていないしね」
その言葉に、僕は内心ほっとしてしまう。
「だからね。太陽君。わたしは君に大変興味があるのだよ」
なんだか博士みたいな口調だなと僕は思った。
「というわけで、明日は水着を持って海に集合ね。もっと遊ぼう!」
「え? あ、うん」
勢いに乗せられ、今日出逢ったばかりの少女とまた遊ぶことになってしまった。小学校ではありえない展開だった。
「どうって言われても……遊べる公園も無くて、毎日受験の話ばっかりされるとこだよ」
「えー、そんなはずないよ。都会は田舎より楽しいとこだってテレビでやってたもん」
そんな風に話しながらひまわりと僕はひまわり畑を抜け、島で1つしかない駄菓子屋さんに向かっていた。もちろん僕は道を知らないので、彼女についていくことしかできないのだけれど。
「そうかな……。みんな何かに追われているみたいで、僕は息苦しいけどな」
「ふーん、そんなもんか。あっ着いた着いた。おばちゃーん。ラムネ2つ!」
「あらあらひまわりちゃん。かわいらしい子を連れて、新しい彼氏かい?」
「へへー、いいでしょ。都会の彼氏だよ」
おどける2人を見ながら、僕は引っかかる。
(新しい彼氏ってことは、前に彼氏がいたことあるのかな……?)
そう思うと、なんだか胸がもやもやする。この気持ちはなんだろう? そんなふうなことを考えながらうつむいていると、ひまわりがラムネの瓶を僕の頬に押し当てて来た。
「冷たい!」
「あはは! はい、ラムネ。わたしのおごりだよ」
「あ、ありがとう」
僕は栓の開けられたラムネをちびりと飲む、甘い味と喉を刺激する炭酸を楽しむ。
「東京ではラムネとか飲むの?」
「あんまり。僕おまつりとかもいかないし」
「ふーん。じゃあいつも何飲んでるの?」
「んー、僕は牛乳かな?」
「ほっほっー?」
ひまわりがにまにまといやらしい笑みを浮かべる。
「背が低いの気にしてるの?」
「うぐ……」
「図星だ」
そう僕は平均的な同年代の男子よりも小さい、そしてひまわりよりも小さい。それがコンプレックスだった。
「いいだろ別に」
「拗ねない拗ねない。弟って感じでかわいいよ」
「むー」
かわいいと言われるのも、弟と言われるのも、僕は嬉しくなかった。だから少しむくれてしまう。
「むくれない、むくれない。ほら、おねえさんと海で遊ぼうよ」
ひまわりがラムネを持っていない方の手を差し出してきた。最初なんのことかわからなかったけれど、手を繋ごうという意味だとだんだんと理解していった。もちろん理解するにつれて僕の顔は熱くなり、おずおずと彼女の手を握ることになるのだった。
はじめて握った女の子の手は、柔らかかった。
「じゃあレッツゴー!」
◆◆◆
海に着くまでにラムネを飲み終えた僕らは、早速海に入った。もちろん水着なんて持ってきていなかったが、僕は半ズボンにTシャツ姿でサンダルだったからある程度入ることができた。ひまわりも白いワンピースの裾が濡れるのも構わず、ざぶざぶと海に入って行く。
「うりゃ!」
「わ! やめてよっ」
ひまわりが僕に海水をかけてくる。
「やっめませーん。うりゃうりゃ!」
海水をかけ続けるひまわりに対して僕も反撃に出る。
「やったなあ! うりゃうりゃりゃ!」
夕方になる頃には2人ともずぶぬれになってしまい、砂浜に倒れこんでいた。
「あー、楽しかった。久しぶりに誰かと遊んだよー」
「? 彼氏がいたんじゃないの?」
チャンスとばかりに僕は気になっていたことを聞いてみた。
「気になる?」
またひまわりがいじめっこの笑顔を浮かべて、僕を見つめてくる。視線を合わせることができずに僕は視線を下に逸らす。するとそこには濡れて少し透けた彼女の胸元があり、さらに僕は視線を逸らすことになった。
ひまわりはそんな僕の様子を一通り楽しむと再び砂浜に横になった。
「いないよ。彼氏なんて。この島に歳の近い男の子なんていないしね」
その言葉に、僕は内心ほっとしてしまう。
「だからね。太陽君。わたしは君に大変興味があるのだよ」
なんだか博士みたいな口調だなと僕は思った。
「というわけで、明日は水着を持って海に集合ね。もっと遊ぼう!」
「え? あ、うん」
勢いに乗せられ、今日出逢ったばかりの少女とまた遊ぶことになってしまった。小学校ではありえない展開だった。
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