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ホノカ編
七十三話 戦いの後は
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戦いが終わると少しの間、村の皆は撃退したことき喜びを分かち合っていた。その中の中心人物はホノカとコノだ。まずはサグルさんやリーフさん、イチョウさんと無事であった事を喜び、そこからぬいぐるみを作りのおばさんやいつも食べ物をくれるおじさんなど、他の村の人々に声をかけられ祝われていた。
「……」
ただ、僕はどうしてもそんな気にはなれず休みたいと言って遠くでその光景を眺めていた。
「浮かない顔をしているな」
「オボロさん……」
「やはりおぬしは優しく真面目だ」
「……」
オボロさんは地面の上で体育座りでいる僕の隣にズシンとあぐらをかいて腰掛けた。
「きっと満足の結果でなかったかもしれぬのだろうな。しかし、おぬしは彼女達を守るという仕事を果たしたのだ。だから、必要以上に自分を責めてはならぬぞ」
「わ、わかりました」
「うむ。それとだな……ホノカとコノハを守ってくれて感謝する」
「それが僕の仕事だったので」
少し救われた気持ちになる。改めてホノカとコノを守りきれたのだと実感できたから。
「だが、まだ終わりではない。そろそろ祈りを再開しなければな」
「ですね」
忘れそうになっていたが、まだ祈りは終わっていない。オボロさんは立ち上がり村の人々に戻るよう促した。僕も彼らと共に一旦この場から離れることに。
「流石はロストソードの使い手だよ!」
「カッコよかったわー!」
「まさに村を救った勇者だな」
「あ、ありがとうございます」
戻る際に僕は村の人達から褒め殺しに遭っていた。高い密度の中に高温の言葉を与えられ続けて、恥ずかしさに身体の芯から熱くなってしまう。
「やっぱりつえーんだな!」
「ですです、凄くカッコよかったです!」
「お兄さん、あれならもうコノハお姉さんを落とせたね」
「あはは……ありがとうね」
その中には三人組の子ども達もいた。彼らもあの戦闘に参加してくれていたらしい。少し心配になるけれど。
「ふぅ……」
彼らはそのまま祭りの会場へと戻っていた。僕は元いた立ち位置で一人待つことに。リーダーを倒し、村の中に襲いかかってきたウルフェン達も退治されたらしいが、まだ完全に油断はできない。
なのだけど、大一番を乗り越えたことで力が抜けきっている。この二週間、どんな時でも無意識の内でも気を張っていたのだろう、どっと精神的な疲労が安心感と共に押し寄せてきた。
それによって地面に座り込んで空を見上げる。もうオレンジ色の空の勢力が藍色に侵略されていて、一日の終わりが近づいていた。身体を撫でる風も少し冷たくなっている。
顔を上げたまま、今までの短いようで長かった村での日々を振り返った。
異世界で知り合いもいなくなって、今も思えば中々危機的状況だったけど、コノ達に出会えて、何とか生き延びる事が出来た。それからロストソードの使い手として動きながらも彼女達に助けられながらエルフの村を過ごした。
回想は瞬時に流れる。けれど、その中身にはぎゅっと濃密な時間が詰められていた。
「ユウワさーん」
「終わったぞー」
気づけば空は藍色に染め直されていた。振り返るとコノとホノカが明るい表情でこちらに手を振っている。
「よいしょっと……大丈夫だった?」
「はい! 無事に成功しました!」
お尻に付いた土を払って腰を上げる。コノはやり切ったという爽やかな様子でいた。
「コノハ、ちょこちょこ動きが怪しかったけどな」
「うっ。で、でも何とかやれたもん。それにホノカだって緊張でガチガチだったじゃん」
「た、確かにそうだけど……ミスってはないから」
「それならコノだってそうだし」
喜び合うと思えば、ちょっとした言い合いが開始される。これも仲の良さがさせるのだろう、微笑ましさがあった。
「これこれ、不毛な言い合いは止めるのだ。どちらもしっかりと仕事をやってのけたぞ」
「ええと、本当に大丈夫なんでしょうか……。自信ないです」
「オレも自信ないんだが」
「安心しろ問題ない。それに、今からその証を見に行くのだ」
オボロさんを先頭に村の中心へと進んだ。近づくにつれて徐々に村人達の楽しげな声や活気、祭りの騒がしさが聞こえてくる。
「あれ、いつもならもう終わっているのに……」
「じいちゃん今年は長いのか?」
「いや、そんな話はなかったが……っと着いたぞ」
村の真ん中に位置して神木がある場所に訪れる。そこには、それを夢中に眺める村人が多数いて、僕達もその中の一人になった。
「……綺麗です」
「すっげぇ」
薄暗くなった空間に神木の虹色の葉が美しく輝いていた。それは神秘的なイルミネーションのようであり、どんな人でもつい目を奪われてしまう。どんな闇の中でも失われない強さと感情を震わす儚さを合わせ持っていて、暫く息を呑んで瞳に焼き付け続けた。
「二人は知っていると思うが、祈りの後はこのように光を放つ。これで安心しただろう」
「はい……本当に良かったです」
「ああ、マジで良かった」
ようやくという様子で、互いに安堵のため息をついて笑い合う。
「おーす、成功したみたいだなー」
「サグにぃ! コノ、やったよ!」
「良く頑張った。ホノカもな」
「普通に余裕だったわ」
すぐに強がるホノカにコノが苦笑する。サグルさんもそれがわかっているのか優しく微笑む。
「ねぇサグにぃ。もしかしてまだ祭りやってるの?」
「ああ。ウルフェンの騒ぎで中断してたからな。まだ時間があるから沢山遊べるよ」
それを聞いた瞬間にコノとホノカの瞳に喜びの灯火が宿る。そしてコノは僕の手を、ホノカはオボロさんとサグルさんの腕を掴んで。
「「よしっ行こう!」」
僕達は声を弾ませた祈り手二人に村の南へと連れられる。オレンジ色の感情の光で満ちる祭りの中へと。
「……」
ただ、僕はどうしてもそんな気にはなれず休みたいと言って遠くでその光景を眺めていた。
「浮かない顔をしているな」
「オボロさん……」
「やはりおぬしは優しく真面目だ」
「……」
オボロさんは地面の上で体育座りでいる僕の隣にズシンとあぐらをかいて腰掛けた。
「きっと満足の結果でなかったかもしれぬのだろうな。しかし、おぬしは彼女達を守るという仕事を果たしたのだ。だから、必要以上に自分を責めてはならぬぞ」
「わ、わかりました」
「うむ。それとだな……ホノカとコノハを守ってくれて感謝する」
「それが僕の仕事だったので」
少し救われた気持ちになる。改めてホノカとコノを守りきれたのだと実感できたから。
「だが、まだ終わりではない。そろそろ祈りを再開しなければな」
「ですね」
忘れそうになっていたが、まだ祈りは終わっていない。オボロさんは立ち上がり村の人々に戻るよう促した。僕も彼らと共に一旦この場から離れることに。
「流石はロストソードの使い手だよ!」
「カッコよかったわー!」
「まさに村を救った勇者だな」
「あ、ありがとうございます」
戻る際に僕は村の人達から褒め殺しに遭っていた。高い密度の中に高温の言葉を与えられ続けて、恥ずかしさに身体の芯から熱くなってしまう。
「やっぱりつえーんだな!」
「ですです、凄くカッコよかったです!」
「お兄さん、あれならもうコノハお姉さんを落とせたね」
「あはは……ありがとうね」
その中には三人組の子ども達もいた。彼らもあの戦闘に参加してくれていたらしい。少し心配になるけれど。
「ふぅ……」
彼らはそのまま祭りの会場へと戻っていた。僕は元いた立ち位置で一人待つことに。リーダーを倒し、村の中に襲いかかってきたウルフェン達も退治されたらしいが、まだ完全に油断はできない。
なのだけど、大一番を乗り越えたことで力が抜けきっている。この二週間、どんな時でも無意識の内でも気を張っていたのだろう、どっと精神的な疲労が安心感と共に押し寄せてきた。
それによって地面に座り込んで空を見上げる。もうオレンジ色の空の勢力が藍色に侵略されていて、一日の終わりが近づいていた。身体を撫でる風も少し冷たくなっている。
顔を上げたまま、今までの短いようで長かった村での日々を振り返った。
異世界で知り合いもいなくなって、今も思えば中々危機的状況だったけど、コノ達に出会えて、何とか生き延びる事が出来た。それからロストソードの使い手として動きながらも彼女達に助けられながらエルフの村を過ごした。
回想は瞬時に流れる。けれど、その中身にはぎゅっと濃密な時間が詰められていた。
「ユウワさーん」
「終わったぞー」
気づけば空は藍色に染め直されていた。振り返るとコノとホノカが明るい表情でこちらに手を振っている。
「よいしょっと……大丈夫だった?」
「はい! 無事に成功しました!」
お尻に付いた土を払って腰を上げる。コノはやり切ったという爽やかな様子でいた。
「コノハ、ちょこちょこ動きが怪しかったけどな」
「うっ。で、でも何とかやれたもん。それにホノカだって緊張でガチガチだったじゃん」
「た、確かにそうだけど……ミスってはないから」
「それならコノだってそうだし」
喜び合うと思えば、ちょっとした言い合いが開始される。これも仲の良さがさせるのだろう、微笑ましさがあった。
「これこれ、不毛な言い合いは止めるのだ。どちらもしっかりと仕事をやってのけたぞ」
「ええと、本当に大丈夫なんでしょうか……。自信ないです」
「オレも自信ないんだが」
「安心しろ問題ない。それに、今からその証を見に行くのだ」
オボロさんを先頭に村の中心へと進んだ。近づくにつれて徐々に村人達の楽しげな声や活気、祭りの騒がしさが聞こえてくる。
「あれ、いつもならもう終わっているのに……」
「じいちゃん今年は長いのか?」
「いや、そんな話はなかったが……っと着いたぞ」
村の真ん中に位置して神木がある場所に訪れる。そこには、それを夢中に眺める村人が多数いて、僕達もその中の一人になった。
「……綺麗です」
「すっげぇ」
薄暗くなった空間に神木の虹色の葉が美しく輝いていた。それは神秘的なイルミネーションのようであり、どんな人でもつい目を奪われてしまう。どんな闇の中でも失われない強さと感情を震わす儚さを合わせ持っていて、暫く息を呑んで瞳に焼き付け続けた。
「二人は知っていると思うが、祈りの後はこのように光を放つ。これで安心しただろう」
「はい……本当に良かったです」
「ああ、マジで良かった」
ようやくという様子で、互いに安堵のため息をついて笑い合う。
「おーす、成功したみたいだなー」
「サグにぃ! コノ、やったよ!」
「良く頑張った。ホノカもな」
「普通に余裕だったわ」
すぐに強がるホノカにコノが苦笑する。サグルさんもそれがわかっているのか優しく微笑む。
「ねぇサグにぃ。もしかしてまだ祭りやってるの?」
「ああ。ウルフェンの騒ぎで中断してたからな。まだ時間があるから沢山遊べるよ」
それを聞いた瞬間にコノとホノカの瞳に喜びの灯火が宿る。そしてコノは僕の手を、ホノカはオボロさんとサグルさんの腕を掴んで。
「「よしっ行こう!」」
僕達は声を弾ませた祈り手二人に村の南へと連れられる。オレンジ色の感情の光で満ちる祭りの中へと。
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