ロストソードの使い手

しぐれのりゅうじ

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ホノカ編

五十九話 発見と課題

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「そろそろ寝るか」

 もう寝るばっかりになって、僕は読んでいた本を置いて布団の上に座った。部屋にはオボロさんの魔法で明るくなっているが、彼はまだ部屋に戻っていない。
 眩しいが先に寝てしまおうか、身体を横にしようと思った時に扉が開かれて。

「ユウワさん、ちょっといいですか?」
「どうしたの、コノ?」

 同じく寝る準備を整え終わっているコノが、胸に本を抱えて部屋に入ってくる。

「これ、凄く面白かったのでどうぞ」
「あ、ありがとう……ってこれ今日買ったやつだよね?」

 表紙に特別編と書かれている。どんだけ集中して読んだのだろう。

「はい、面白くてつい。それ、三巻と四巻の合間のお話なんです。だからこれオススメですよ」
「じゃあ借りるね」
「はい……」

 言葉に甘え受け取って僕は机の上にある本の上に重ねた。

「えっと……何か他にも?」
「えへへ、ユウワさんには隠し事できませんね」

 いまだ用がある感じで部屋を出る気配がなくあからさまだった。

「実は……コノ見つけちゃいました、恋人レベルの関係性を」

 コノは照れ笑いをしつつもじもじとそう伝えてきて。

「ほ、本当? それって一体……?」

 神木と対面する前にコノは何かに気づいたような感じだった。もしかしてその時に見つけたのだろうか。

「ごめんなさい、言いたいんですけど。コノはユウワさんに気づいてもらって、そうなりたいって思って欲しいです。じゃないときっと駄目だから」
「なら、ヒントみたいなのはないかな?」

 頬に指を当てて少し思案する。

「コノとユウワさんが出会ったばかりの頃、それを思い出して欲しいです。そこに答えがあります」
「……わかった、探してみる」
「はい、お願いします。では、コノは戻りますね、おやすみなさい」
「おやすみ」

 コノが部屋を出ていく。すると、すぐに入れ替わりでオボロさんが来て。

「何やら面白そうな話をしていたようだな」
「き、聞こえてましたか?」
「うむ。すまぬな、扉越しに聞こえてしまったのでな」

 そこまで大きな声じゃなかった気がするけど、思った以上に通ってしまうのだろうか。ホノカに聞かれなくて助かった。

「それで、一体コノハとはどういう関係なのだ? 恋人とか言っていたが」
「いや……そのですね……」

 オボロさんは結構興味津々といった様子で尋ねてくる。もう色々と聞かれてしまっているし、適当に誤魔化すこともできなさそうで。

「実は、未練に関係してですね。それが――」

 僕はコノの未練についてやそれに関連してホノカの本当の未練について、現状の事を全て話した。オボロさんは、話を遮る事なく静かに頷きつつ耳を傾けてくれて。

「そういうことで、ホノカを応援しつつコノの見つけた関係性にならないといけないんです」

 自分の置かれている現状を話すと、頭が整理されて何より人に聞いてもらえた事で少し心が軽くなった。どうやら、一人で抱え込んでいる状態はストレスだったみたいだ。

「ふむ。なんというか、青春って感じだな。若さに満ちておる」
「そ、そうですかね?」
「そうだとも。恋に苦悩に努力、それが合わさればだいたい青春だろう」

 何だろうその大雑把な定義の仕方は。僕がその青春の中にいると思うと、むず痒くなってしまう。

「それにしても、ホノカの本音を引き出せたとはな。我の見込んだ通りの男だ」
「あ、ありがとうございます。というか、未練の事を知っていたんですか?」
「長い事あの子を見守っているからな、何となく察していたよ」

 ホノカの話になると、おじいちゃんの優しい顔つきになる。声音もそれに比例していて、そこに愛が見えた。

「……しかし、いつも強くあろうとするあの子が弱い部分を見せられる相手ができるとはな。おぬし……いや、ユウワ。祖父としてホノカのために頑張ってくれて感謝する」
「そんな……僕は大した事はしていないです。本当の事を相談してくれたのも、ホノカが未練を解決したい想いで勇気を出したからですし。僕はちょっとした手伝いをしてるだけですから」
「そんな謙遜するな。素直に受け取れば良いのだ、ほれほれ」

 大きな手で頭をワシャワシャと撫でられた。乱雑だけれど、そうされて褒められてほんのりと温かさが体内を満たす。
 少しすると手を止めて、僕の目を見ながら話し出した。

「あの子が強がっているのはコノハへのアピールだけじゃなく、きっと幼くして両親を失ったのも一つの理由なのだ」
「両親を……」
「うむ。周りに心配かけまいとしてそう振る舞っているのだろう。霊になってもそれは変わらず、村の者にも普段通り接してくれと頼んでもいたしな。あの子が本当の事を言えた一つの要因としておぬしが外から来たというのもあるのだろうな」

 この家に来てオボロさんしかいなくて、何となくそういう可能性も考えていて驚きはなかった。けれど、いざそうだと肯定されると早くに肉親を失うホノカを思うと胸が痛む。

「……っ」

 その痛覚の先に僕の親の記憶があって、二人の顔が浮かんでしまって。僕は瞬時に振り払って無理矢理記憶に蓋をした。

「どうかしたか?」
「大丈夫です。何でもありません」
「ふむ、そうか。ならばそろそろ寝ようとするか」

 部屋にあった光魔法を止めると、一気に暗闇に包まれてオボロさんの顔をその中に溶け込んでしまう。

 その時、さっきホノカ達を映していた悲しげな瞳を思い出して。

「あの、オボロさんはどうなんですか。オボロさんは……子供も孫も――」
「我のことは気にするな」

 感情が見えない平坦な声だった。暗くて表情も見えず、オボロさんの様子を知ることはできない。

「おぬしは二人に集中するのだ。今は何よりそれが大事。そうだろう?」
「は、はい……でも僕は」
「心配してくれてありがとうな。だが、我は大丈夫だ。……ではおやすみ」
「お、おやすみなさい」

 布団に潜ってから部屋は静かになる。しばらくすると、オボロさんの寝息が聞こえてきた。

「……」

 僕は余計な事を考えないようにしながら目を閉じて、意識がなくなることを願った。
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