11 / 88
レイア編
十一話 生きる理由探し
しおりを挟む
「気づいていたんですか?」
「いや半信半疑だった。賢いレイアが気づかないものかって。でも、わかっていない可能性もあるだろ? だから怖くてはっきりさせられなかった」
「なるほどね~。じゃあ外出を許可したのは……」
「そうだ。外に出ればそれがわかるだろうからな。ちょうどレイアからの願いもあったし、良いチャンスだと思った」
アオの言葉を引き継ぐ形で行動の意図を説明してくれる。
「あいつには辛い思いをさせちゃったな。俺が臆病なばかりに寄り添ってあげれず苦しめてさ。最低だな……」
「最低なんてことないです!」
僕は衝動的に立ち上がって、机に両手を置いて前傾姿勢になる。否定しないといけないと強く思った。
「ユウ……?」
困惑するアオは気にせずカイトさんとしっかりと目を合わせる。
「レイアちゃんを想ってのことを否定しないでください。きっと苦しみ以上にカイトさんといれることが幸せだったと思います。それに、取り返しがつかなくなる前に気づいて行動しています。臆病なんかじゃありません」
自分を責めないで欲しかった。僕のような人間がいるのだから。
「……ユウワくん」
「レイアちゃん言っていました。カイトさんのために知らないふりをしてたって。お互いに助けようとしていたんです。だから……!」
無我夢中で言葉を続けようとすると、カイトさんに手で制される。
「ありがとう、俺のために一生懸命になってくれて。君は優しいんだな」
「カイトさん……」
「色々ネガティブなことを考えるのは止めるよ。レイアと別れる時は笑顔でいたいしな」
歯を見せて笑った。どこか憑き物が落ちたような清々しい笑顔で。
「そういや聞いてなかったけど、レイアの未練って何だったんだ?」
レイアちゃん、妹なしでお兄さんが生きられるか不安なんだって。だからだーいじょぶなことを示さないといけないかな」
「……あいつは本当に良い子だなぁ」
カイトさんは愛おしいそうに目を細めた。しかしすぐに悩ましげに目を伏せる。
「けど、正直あいつ無しで生きてる自分の姿を想像できないんだよなぁ……」
「う~ん、他に生きがいとかないの? 趣味とか」
「両親が死んでから、あいつを幸せにするためだけに働いて生きてきたからなぁ」
他にアイデアが無いか考えるも有効な手立ては見当たらなかった。しかし、別の問題の解の糸口を気づいてしまう。
「あの、カイトさん未練がわからないって言ってましたけど、もしかして自分が幸せにできたか不安なことが未練なんじゃ?」
「あ……そうかも。いや間違いなくそれだ」
「おおっ、やるじゃんユウ~」
直接、霊関係のことで役に立ててほっとする。これでいる意味があるのだと思えた。
「それなら、きっと幸せにできただろうしだーいじょぶだね」
「そう思いたいけど、結構面倒がられてたし本当はどうだろうか。それに、その時になったらレイアのことだから気を遣ってしまうかも」
未練が判明すれば、すらすら解決できると勝手に思っていたけど、一筋縄ではいかなそうだ。
「ふっふっふ。レイアちゃんの未練については私に任せて。良い考えが浮かんだから」
アオは自信に満ち溢れた顔をしてサムズアップする。
「本当? じゃあ後はカイトさんのことだけだね」
「……無いんだよなぁガチで」
「それなら、見つけなきゃだね!」
この考える時間は終わりだと言わんばかりにパンと手を叩いた。
「見つけるって?」
「そりゃあ探しに行くんだよっ」
*
まず僕達三人はイシリス商店街に足を運んだ。昼時を過ぎているから人通りは少なめだった。
「例えば、ここによく通ってたな~みたいなお店とかなかった?」
「節約のために外食とかしなかったからな」
「なら、好きな物をよく買ってたみたいなことはどうですか?」
「レイアのためにプレゼントとか買ってたけど、俺自身のは無いな」
手持ちの生きがいはここには存在しないようだ。そのため、僕達は生きがい候補としての飲食店や雑貨屋などを回ることに。けれど、カイトさんがピンとくるものは見つけられなかった。
「じゃあここはどう? よく来ていたんでしょう?」
続いては東のエリアのスタジアム前にやってきた。
「そうなんだが、それはレイアに色々体験させたかったからなんだ。そこまで好きって訳じゃない」
「でも、今見たら面白いかもよ?」
アオが提案するも、カイトさんは渋い顔をする。
「いやー結構見たけど長いし、競争とか好きでもないしな」
「あ、それわかります。勝ち負けとか決まるの嫌ですよね」
「えー? それがあるから熱くなれるし面白いのにな~」
価値観の違いを知っただけで収穫は無く、それから候補になりそうな施設に行ったがやはり駄目で。しばらく歩き回って疲れたので僕達は一旦、イシリスタワーの近くのベンチで休憩することにした。
「本当、妹一筋縄だったんだね」
僕を挟んで座っているカイトさんにアオが話しかける。
「ああ、あの日、タワーの事故で両親を失ってからはずっとな」
「タワーの事故?」
「……六年前のことだ。半年前と同じように亡霊が暴れ出したことがあってな。その時に建設中のタワーにも被害があって、部品やら破片やらが地上に落下。それに俺の親が巻き込まれた」
タワーを見上げて、過去を見ているかのように語ってくれる。
「そうだったんですね。すみません変な事を聞いてしまって」
「いいんだ。もう昔のことだ。それに、もうそんな事が起きないように、今の仕事を選んでやっているわけだしな……あっ」
カイトさんは何かに気づいたように声を出した。
「それがこれから生きる理由になるかもしれん。レイアの為、がむしゃらに働いていたから、いつの間にか忘れていたみたいだな」
肩を竦めて苦笑する。
「これなら多分いけると思う。レイアを安心させられるはずだ」
カイトさんは晴れやかな顔つきで、イシリスタワーを見上げる。瞳に強い生気を宿して。
真上にあった陽は次第に傾き出していた。
「いや半信半疑だった。賢いレイアが気づかないものかって。でも、わかっていない可能性もあるだろ? だから怖くてはっきりさせられなかった」
「なるほどね~。じゃあ外出を許可したのは……」
「そうだ。外に出ればそれがわかるだろうからな。ちょうどレイアからの願いもあったし、良いチャンスだと思った」
アオの言葉を引き継ぐ形で行動の意図を説明してくれる。
「あいつには辛い思いをさせちゃったな。俺が臆病なばかりに寄り添ってあげれず苦しめてさ。最低だな……」
「最低なんてことないです!」
僕は衝動的に立ち上がって、机に両手を置いて前傾姿勢になる。否定しないといけないと強く思った。
「ユウ……?」
困惑するアオは気にせずカイトさんとしっかりと目を合わせる。
「レイアちゃんを想ってのことを否定しないでください。きっと苦しみ以上にカイトさんといれることが幸せだったと思います。それに、取り返しがつかなくなる前に気づいて行動しています。臆病なんかじゃありません」
自分を責めないで欲しかった。僕のような人間がいるのだから。
「……ユウワくん」
「レイアちゃん言っていました。カイトさんのために知らないふりをしてたって。お互いに助けようとしていたんです。だから……!」
無我夢中で言葉を続けようとすると、カイトさんに手で制される。
「ありがとう、俺のために一生懸命になってくれて。君は優しいんだな」
「カイトさん……」
「色々ネガティブなことを考えるのは止めるよ。レイアと別れる時は笑顔でいたいしな」
歯を見せて笑った。どこか憑き物が落ちたような清々しい笑顔で。
「そういや聞いてなかったけど、レイアの未練って何だったんだ?」
レイアちゃん、妹なしでお兄さんが生きられるか不安なんだって。だからだーいじょぶなことを示さないといけないかな」
「……あいつは本当に良い子だなぁ」
カイトさんは愛おしいそうに目を細めた。しかしすぐに悩ましげに目を伏せる。
「けど、正直あいつ無しで生きてる自分の姿を想像できないんだよなぁ……」
「う~ん、他に生きがいとかないの? 趣味とか」
「両親が死んでから、あいつを幸せにするためだけに働いて生きてきたからなぁ」
他にアイデアが無いか考えるも有効な手立ては見当たらなかった。しかし、別の問題の解の糸口を気づいてしまう。
「あの、カイトさん未練がわからないって言ってましたけど、もしかして自分が幸せにできたか不安なことが未練なんじゃ?」
「あ……そうかも。いや間違いなくそれだ」
「おおっ、やるじゃんユウ~」
直接、霊関係のことで役に立ててほっとする。これでいる意味があるのだと思えた。
「それなら、きっと幸せにできただろうしだーいじょぶだね」
「そう思いたいけど、結構面倒がられてたし本当はどうだろうか。それに、その時になったらレイアのことだから気を遣ってしまうかも」
未練が判明すれば、すらすら解決できると勝手に思っていたけど、一筋縄ではいかなそうだ。
「ふっふっふ。レイアちゃんの未練については私に任せて。良い考えが浮かんだから」
アオは自信に満ち溢れた顔をしてサムズアップする。
「本当? じゃあ後はカイトさんのことだけだね」
「……無いんだよなぁガチで」
「それなら、見つけなきゃだね!」
この考える時間は終わりだと言わんばかりにパンと手を叩いた。
「見つけるって?」
「そりゃあ探しに行くんだよっ」
*
まず僕達三人はイシリス商店街に足を運んだ。昼時を過ぎているから人通りは少なめだった。
「例えば、ここによく通ってたな~みたいなお店とかなかった?」
「節約のために外食とかしなかったからな」
「なら、好きな物をよく買ってたみたいなことはどうですか?」
「レイアのためにプレゼントとか買ってたけど、俺自身のは無いな」
手持ちの生きがいはここには存在しないようだ。そのため、僕達は生きがい候補としての飲食店や雑貨屋などを回ることに。けれど、カイトさんがピンとくるものは見つけられなかった。
「じゃあここはどう? よく来ていたんでしょう?」
続いては東のエリアのスタジアム前にやってきた。
「そうなんだが、それはレイアに色々体験させたかったからなんだ。そこまで好きって訳じゃない」
「でも、今見たら面白いかもよ?」
アオが提案するも、カイトさんは渋い顔をする。
「いやー結構見たけど長いし、競争とか好きでもないしな」
「あ、それわかります。勝ち負けとか決まるの嫌ですよね」
「えー? それがあるから熱くなれるし面白いのにな~」
価値観の違いを知っただけで収穫は無く、それから候補になりそうな施設に行ったがやはり駄目で。しばらく歩き回って疲れたので僕達は一旦、イシリスタワーの近くのベンチで休憩することにした。
「本当、妹一筋縄だったんだね」
僕を挟んで座っているカイトさんにアオが話しかける。
「ああ、あの日、タワーの事故で両親を失ってからはずっとな」
「タワーの事故?」
「……六年前のことだ。半年前と同じように亡霊が暴れ出したことがあってな。その時に建設中のタワーにも被害があって、部品やら破片やらが地上に落下。それに俺の親が巻き込まれた」
タワーを見上げて、過去を見ているかのように語ってくれる。
「そうだったんですね。すみません変な事を聞いてしまって」
「いいんだ。もう昔のことだ。それに、もうそんな事が起きないように、今の仕事を選んでやっているわけだしな……あっ」
カイトさんは何かに気づいたように声を出した。
「それがこれから生きる理由になるかもしれん。レイアの為、がむしゃらに働いていたから、いつの間にか忘れていたみたいだな」
肩を竦めて苦笑する。
「これなら多分いけると思う。レイアを安心させられるはずだ」
カイトさんは晴れやかな顔つきで、イシリスタワーを見上げる。瞳に強い生気を宿して。
真上にあった陽は次第に傾き出していた。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
頭が花畑の女と言われたので、その通り花畑に住むことにしました。
音爽(ネソウ)
ファンタジー
見た目だけはユルフワ女子のハウラナ・ゼベール王女。
その容姿のせいで誤解され、男達には尻軽の都合の良い女と見られ、婦女子たちに嫌われていた。
16歳になったハウラナは大帝国ダネスゲート皇帝の末席側室として娶られた、体の良い人質だった。
後宮内で弱小国の王女は冷遇を受けるが……。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!
ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。
なのに突然のパーティークビ宣言!!
確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。
補助魔法師だ。
俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。
足手まといだから今日でパーティーはクビ??
そんな理由認められない!!!
俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな??
分かってるのか?
俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!!
ファンタジー初心者です。
温かい目で見てください(*'▽'*)
一万文字以下の短編の予定です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる