9 / 100
レイア編
九話 街巡り、思い出巡り
しおりを挟む
僕達が訪れたのはセントラルパークだった。そこには大きな公園のようで、円を描くように芝生が広がっていた。中心には噴水と女性の銅像がある。銅像は両手で丸いアナログ時計をかかげていて、針は二時を示している。外周には芝生を囲うように舗装された白い道があって、そこを歩く人やロボットみたいな人形の人力車、馬車が通っていて、反対にバスは通れないみたいだった。芝生の上には楽しげに遊ぶ子供やベンチに座って本を読んでいるエルフの人、鍛錬をしているのかシャードーボクシングをしている猫耳テーリオの人もいる。そこでは年齢とか種族とか関係なく自由に過ごしていた。
「……」
彼女は同い年くらい子供達が遊んでいる様子を羨ましそうに眺めている。
「ここで遊びたい?」
「ううん、歩いて見るだけでいいの。次は商店街に」
南の方へ道なりに歩いていくと、パークと商店街の境界に大きなアーチがあり、そこにイシリス商店街と書いてあった。くぐると一気に賑やかになってきて、さらには美味しそうな香りが漂ってくる。
「……お腹すいた」
「そーいえばまだお昼ご飯食べてなかったね」
色々ありすぎて食欲まで意識が回っていなかった。一度空腹を認知してしまうともう止められなくて。
「……あれって焼き鳥屋さん?」
左手から香ばしい匂いがやってきて、それをたどると焼き鳥という旗が立った出店があった。
「そうそう! めっちゃ美味しいんだよ。買っていこうか」
「うん。えっとレイアちゃんも食べる?」
「私はいいよ。お腹空いてないから。あそこで待ってるね」
そう言ってレイアちゃんは端っこに行ってしまった。
「おじさん、来たよ~」
「おおミズアちゃん! それに隣の子は、新しいロストソードの使い手さんかな」
「は、はい」
店主さんは恰幅の良い中年の男性で、スキンヘッドに赤いハチマキをしている。
「私はいつものお願いね。ユウはどうする?」
「えーと……やっぱり同じので」
メニューにはかわとかレバーとかももとか見知った単語がほとんどだけど、同じかどうかわからない。挑戦よりも安全な方を僕は選んだ。
「はいよっ。街の救世主様には、おまけして五百イリスでいいぞ」
「ありがとう~おじさん太っ腹~」
「はっはっは。見た目通りだろ?」
アオはそんな常連のやり取りをしながら、少し薄い紫の硬貨を渡した。それと引き換えにかわとねぎまのセットの二つが来る。
「はいっこれユウの分。それじゃまた来るね~」
「あいよっ。あんたもまた来てくれよな」
「はい」
二本の焼き鳥を手渡される。持ち手が熱くて長く持てそうになかった。ただ、いい感じに焦げ目が付いた肉やネギが長く味わいたいとも思わせてきて。
「お待たせ~レイアちゃん」
「それ、兄さんと良く食べてた」
「やっぱり食べる?」
その提案には頭を振ってレイアちゃんは再び歩きだしてしまう。
「……美味しい」
まずはかわの方を口に運ぶ。柔らかな食感と噛むと溢れてくる肉の甘味が口に広がって頬が緩んでしまう。半分くらい食べてから反対にあるねぎまの方を口に入れる。まとめて食べると肉のジューシーさとネギの甘さが組み合わさって、飽きずにいくらでも食べれてしまいそうだ。
そして何より食べ歩きという状況がより美味しく感じさせてくれる。
「ユウって美味しそうに食べるよね」
「そうかな?」
「見てると食べ物がより美味しそうに見えちゃうよ」
何か恥ずかしい。僕は顔を背けながら食べることにした。
「ユウワくん照れてる」
「て、照れてないっすよ?」
「ふふっ兄さんよりもわかり易すいかも」
何だろうすごい負けた気分になる。カイトさんには失礼かもだけど。
「ねぇレイアちゃん。本当に歩いているだけでいいの? あそことかぬいぐるみとか売ってるけとど」
「あっちには木刀とかドラゴンのキーホルダーとかあるよ?」
「何その修学旅行生ライナップ」
目をつける店で好みがすごくはっきりしてしまう。
「私は色んな人がいて楽しいこの雰囲気の中に、友達といるだけでいいよ。だから、私のことは気にしないで、お店に行っても大丈夫だよ」
本当にしっかりした子だし、年下なのに気を使わせてしまって申し訳なくなる。
僕達はそれからレイアちゃんの言葉に甘えて気になる商品や食べ物を買ったりしながら、歩き回った。
「ふぅーとりあえず回りきったかな」
一通り見終えてからセントラルパークに戻り芝生の中にあるベンチで休憩を入れることにした。
「何か私達の方が楽しんじゃってる気がする」
「だね」
僕とアオは色々食べたり、気になるものを買うか買わないかで悩んだりして歩いた。結局、僕は雑貨屋に売っていた黒色のニワトリみたいなぬいぐるみを買って、アオは木刀と光るメタリックなドラゴンのおもちゃを買っている。
「レイアちゃんは楽しい?」
「うん。おしゃべりしながらだったし楽しいよ」
嬉しそうにそう答えてくれて少し安心する。
「それにしても、ユウはぬいぐるみ好きだね」
「いいでしょ別に」
男っぽくないとは自覚している。でも、このクロハネという鳥のぬいぐるみのふわふわさと丸い白の目がキュートで、一目惚れしてしまったのだから。
「てか、すごく愛しい感じで見てるけど、それさっき食べてたやつだよ」
「え……え? マジっすか」
「ふふっ」
レイアちゃんに笑われてしまう。何でよりによって食べたばかりの魔獣を選んでしまったのだろうか。つぶらな瞳を見るとすごい罪悪感が込み上げてくる。
「あ、これお釣り」
「はいよー」
「てかこのお金ってさ」
僕はアオから貰って余った千イリスを返して、少しレイアちゃんから距離を取り小声で気になったことを訊いてみる。硬貨の価値は色の濃さで変わるようで、表面の数字が大きくなる度に濃くなっていた。気になった点はその硬貨に描かれた女性の顔のことで。
「この顔って、アヤメさんに似てるんだけど」
「そりゃー師匠だし。何せこの世界で神の声を聞ける人で、国教であるイリス教のトップ。さらに百年以上は生きてる人だしね」
「ひゃ、百年?」
凄さのスケールが違い過ぎる。というか、言動とか見た目が年齢と身分とかけ離れていて、同じ人なのかと思ってしまう。
「神の力でこの世界を守る役目の代わりに長生きして見た目も若くなるようにしているみたい」
「……何かそういう凄い人ってもっと豪華な場所に住んでるのかと」
「師匠がそういうの好きじゃないんだよ。それにイリス教のトップだけど、その役目は二番目の人がやってるからね」
だからひっそりとマギアの店主をしているのか。でも、その情報を入れてしまうとまた話す時には緊張してしまうかも。
「何のお話をしてるの?」
「ごめんね。ちょっとお仕事の話を。そろそろ、次に行こっか」
「うん。次はあっちに行きたい」
彼女が指さしたのは東のエリアの方向。僕達は再びそこへと足を動かした。
東のエリアは大きな施設がいくつもあって、遊ぶ場所とし使われていることを容易に想像出来た。最初に目に入ったのはサッカーのスタジアムのような形をしている建物。
「あそこはね、腕自慢達が戦ったり、魔法の実力を競ったり、色んなスポーツの試合をしたりする場所なんだよ。ちなみに、私は剣術大会で優勝したんだよっ」
アオは褒めてと褒めてといった期待の視線を送ってくる。
「凄いじゃん。流石だね」
「アオイちゃん、かっこいい」
「えっへへー」
照れながら、手に持った木刀で僕の持つぬいぐるみのクロくんをコツンと叩いてくる。
「私はここで兄さんとよく魔法対決を見てたなー」
レイアちゃんは思い出のスタジアムを瞳に映す。
満足するまでそれを眺めてから、次に少し先にあるイシリスタワーの足元に訪れた。レンボーな体でツリーのように上にいくと細くなっている。ただ、工事中で中には入れないようで、よく見ると少しボロボロだった。
「これって255メートルくらいあるんだよ。今は修理中で入れないんだけどね」
「何か事故でもあったの?」
「前話したけど、亡霊が暴れちゃってここも被害を受けたんだ」
近くにいた、赤色の制服を着用している男子生徒二人組がてっぺんからの景色について話す声が聞こえてくる。どんなものだろうと見てみたいと思った。
「兄さんが今はこのタワーの修理のお仕事をしてるって言ってた」
「すごいね、あんな高い所に」
「うん……。よくあそこに登ってたからタワーが無くならなくて良かった」
レイアちゃんは目に焼き付けるようにじっと見つめてから視線を落とす。
「もういいかな。どんどん次に行こ」
それから真っ直ぐ向いて次の目的地に進んでいく。僕達はレイアちゃんを挟む形で隣にいて、また歩き回った。そこには遊園地みたいな場所やサーカスハウス、酒場などの施設があって、色んな年代の人が楽しめそうな場所だった。
空は朱に色づき始めた頃、最後に来たのが学校だった。そこは東エリアの一番奥にあって、物々しい校門の先に広い敷地の中に三階建てで横に長い校舎がある。しっかりしたレンガ造りで、小さなお城のような出で立ちだった。下校時間なのか、続々と門から生徒が出てきている。
「ここはイシリス学校。ある程度裕福な人が学びにくる場所だね」
「何でここに?」
他のは娯楽性が強かったりして、場違いに思えた。
「義務教育とか無いからね。将来のお仕事のためとか学びたい人がお金を出して来るから、ある意味娯楽ではあるんじゃない?」
アオの学校を紹介する声はとても冷えていた。その理由は考えるまでもなくて。
「レイアちゃんはここに通っていたの?」
「うん。兄さんが将来のためって。勉強はついていけたけど、全然学校には馴染めなくて一人ぼっちだったから、途中で行かなくなったの」
学校を睨むように目を細める。それは不満と苦しみの二つの色を帯びていた。
「ならどうしてここに――」
「最期だから」
食い気味にはっきりとそう答えた。
「最期だから好きなのも嫌なのも見ておかないとって思って」
そう言って学校を見据えるレイアちゃんの眼差しには確かな覚悟があった。
「……」
彼女は同い年くらい子供達が遊んでいる様子を羨ましそうに眺めている。
「ここで遊びたい?」
「ううん、歩いて見るだけでいいの。次は商店街に」
南の方へ道なりに歩いていくと、パークと商店街の境界に大きなアーチがあり、そこにイシリス商店街と書いてあった。くぐると一気に賑やかになってきて、さらには美味しそうな香りが漂ってくる。
「……お腹すいた」
「そーいえばまだお昼ご飯食べてなかったね」
色々ありすぎて食欲まで意識が回っていなかった。一度空腹を認知してしまうともう止められなくて。
「……あれって焼き鳥屋さん?」
左手から香ばしい匂いがやってきて、それをたどると焼き鳥という旗が立った出店があった。
「そうそう! めっちゃ美味しいんだよ。買っていこうか」
「うん。えっとレイアちゃんも食べる?」
「私はいいよ。お腹空いてないから。あそこで待ってるね」
そう言ってレイアちゃんは端っこに行ってしまった。
「おじさん、来たよ~」
「おおミズアちゃん! それに隣の子は、新しいロストソードの使い手さんかな」
「は、はい」
店主さんは恰幅の良い中年の男性で、スキンヘッドに赤いハチマキをしている。
「私はいつものお願いね。ユウはどうする?」
「えーと……やっぱり同じので」
メニューにはかわとかレバーとかももとか見知った単語がほとんどだけど、同じかどうかわからない。挑戦よりも安全な方を僕は選んだ。
「はいよっ。街の救世主様には、おまけして五百イリスでいいぞ」
「ありがとう~おじさん太っ腹~」
「はっはっは。見た目通りだろ?」
アオはそんな常連のやり取りをしながら、少し薄い紫の硬貨を渡した。それと引き換えにかわとねぎまのセットの二つが来る。
「はいっこれユウの分。それじゃまた来るね~」
「あいよっ。あんたもまた来てくれよな」
「はい」
二本の焼き鳥を手渡される。持ち手が熱くて長く持てそうになかった。ただ、いい感じに焦げ目が付いた肉やネギが長く味わいたいとも思わせてきて。
「お待たせ~レイアちゃん」
「それ、兄さんと良く食べてた」
「やっぱり食べる?」
その提案には頭を振ってレイアちゃんは再び歩きだしてしまう。
「……美味しい」
まずはかわの方を口に運ぶ。柔らかな食感と噛むと溢れてくる肉の甘味が口に広がって頬が緩んでしまう。半分くらい食べてから反対にあるねぎまの方を口に入れる。まとめて食べると肉のジューシーさとネギの甘さが組み合わさって、飽きずにいくらでも食べれてしまいそうだ。
そして何より食べ歩きという状況がより美味しく感じさせてくれる。
「ユウって美味しそうに食べるよね」
「そうかな?」
「見てると食べ物がより美味しそうに見えちゃうよ」
何か恥ずかしい。僕は顔を背けながら食べることにした。
「ユウワくん照れてる」
「て、照れてないっすよ?」
「ふふっ兄さんよりもわかり易すいかも」
何だろうすごい負けた気分になる。カイトさんには失礼かもだけど。
「ねぇレイアちゃん。本当に歩いているだけでいいの? あそことかぬいぐるみとか売ってるけとど」
「あっちには木刀とかドラゴンのキーホルダーとかあるよ?」
「何その修学旅行生ライナップ」
目をつける店で好みがすごくはっきりしてしまう。
「私は色んな人がいて楽しいこの雰囲気の中に、友達といるだけでいいよ。だから、私のことは気にしないで、お店に行っても大丈夫だよ」
本当にしっかりした子だし、年下なのに気を使わせてしまって申し訳なくなる。
僕達はそれからレイアちゃんの言葉に甘えて気になる商品や食べ物を買ったりしながら、歩き回った。
「ふぅーとりあえず回りきったかな」
一通り見終えてからセントラルパークに戻り芝生の中にあるベンチで休憩を入れることにした。
「何か私達の方が楽しんじゃってる気がする」
「だね」
僕とアオは色々食べたり、気になるものを買うか買わないかで悩んだりして歩いた。結局、僕は雑貨屋に売っていた黒色のニワトリみたいなぬいぐるみを買って、アオは木刀と光るメタリックなドラゴンのおもちゃを買っている。
「レイアちゃんは楽しい?」
「うん。おしゃべりしながらだったし楽しいよ」
嬉しそうにそう答えてくれて少し安心する。
「それにしても、ユウはぬいぐるみ好きだね」
「いいでしょ別に」
男っぽくないとは自覚している。でも、このクロハネという鳥のぬいぐるみのふわふわさと丸い白の目がキュートで、一目惚れしてしまったのだから。
「てか、すごく愛しい感じで見てるけど、それさっき食べてたやつだよ」
「え……え? マジっすか」
「ふふっ」
レイアちゃんに笑われてしまう。何でよりによって食べたばかりの魔獣を選んでしまったのだろうか。つぶらな瞳を見るとすごい罪悪感が込み上げてくる。
「あ、これお釣り」
「はいよー」
「てかこのお金ってさ」
僕はアオから貰って余った千イリスを返して、少しレイアちゃんから距離を取り小声で気になったことを訊いてみる。硬貨の価値は色の濃さで変わるようで、表面の数字が大きくなる度に濃くなっていた。気になった点はその硬貨に描かれた女性の顔のことで。
「この顔って、アヤメさんに似てるんだけど」
「そりゃー師匠だし。何せこの世界で神の声を聞ける人で、国教であるイリス教のトップ。さらに百年以上は生きてる人だしね」
「ひゃ、百年?」
凄さのスケールが違い過ぎる。というか、言動とか見た目が年齢と身分とかけ離れていて、同じ人なのかと思ってしまう。
「神の力でこの世界を守る役目の代わりに長生きして見た目も若くなるようにしているみたい」
「……何かそういう凄い人ってもっと豪華な場所に住んでるのかと」
「師匠がそういうの好きじゃないんだよ。それにイリス教のトップだけど、その役目は二番目の人がやってるからね」
だからひっそりとマギアの店主をしているのか。でも、その情報を入れてしまうとまた話す時には緊張してしまうかも。
「何のお話をしてるの?」
「ごめんね。ちょっとお仕事の話を。そろそろ、次に行こっか」
「うん。次はあっちに行きたい」
彼女が指さしたのは東のエリアの方向。僕達は再びそこへと足を動かした。
東のエリアは大きな施設がいくつもあって、遊ぶ場所とし使われていることを容易に想像出来た。最初に目に入ったのはサッカーのスタジアムのような形をしている建物。
「あそこはね、腕自慢達が戦ったり、魔法の実力を競ったり、色んなスポーツの試合をしたりする場所なんだよ。ちなみに、私は剣術大会で優勝したんだよっ」
アオは褒めてと褒めてといった期待の視線を送ってくる。
「凄いじゃん。流石だね」
「アオイちゃん、かっこいい」
「えっへへー」
照れながら、手に持った木刀で僕の持つぬいぐるみのクロくんをコツンと叩いてくる。
「私はここで兄さんとよく魔法対決を見てたなー」
レイアちゃんは思い出のスタジアムを瞳に映す。
満足するまでそれを眺めてから、次に少し先にあるイシリスタワーの足元に訪れた。レンボーな体でツリーのように上にいくと細くなっている。ただ、工事中で中には入れないようで、よく見ると少しボロボロだった。
「これって255メートルくらいあるんだよ。今は修理中で入れないんだけどね」
「何か事故でもあったの?」
「前話したけど、亡霊が暴れちゃってここも被害を受けたんだ」
近くにいた、赤色の制服を着用している男子生徒二人組がてっぺんからの景色について話す声が聞こえてくる。どんなものだろうと見てみたいと思った。
「兄さんが今はこのタワーの修理のお仕事をしてるって言ってた」
「すごいね、あんな高い所に」
「うん……。よくあそこに登ってたからタワーが無くならなくて良かった」
レイアちゃんは目に焼き付けるようにじっと見つめてから視線を落とす。
「もういいかな。どんどん次に行こ」
それから真っ直ぐ向いて次の目的地に進んでいく。僕達はレイアちゃんを挟む形で隣にいて、また歩き回った。そこには遊園地みたいな場所やサーカスハウス、酒場などの施設があって、色んな年代の人が楽しめそうな場所だった。
空は朱に色づき始めた頃、最後に来たのが学校だった。そこは東エリアの一番奥にあって、物々しい校門の先に広い敷地の中に三階建てで横に長い校舎がある。しっかりしたレンガ造りで、小さなお城のような出で立ちだった。下校時間なのか、続々と門から生徒が出てきている。
「ここはイシリス学校。ある程度裕福な人が学びにくる場所だね」
「何でここに?」
他のは娯楽性が強かったりして、場違いに思えた。
「義務教育とか無いからね。将来のお仕事のためとか学びたい人がお金を出して来るから、ある意味娯楽ではあるんじゃない?」
アオの学校を紹介する声はとても冷えていた。その理由は考えるまでもなくて。
「レイアちゃんはここに通っていたの?」
「うん。兄さんが将来のためって。勉強はついていけたけど、全然学校には馴染めなくて一人ぼっちだったから、途中で行かなくなったの」
学校を睨むように目を細める。それは不満と苦しみの二つの色を帯びていた。
「ならどうしてここに――」
「最期だから」
食い気味にはっきりとそう答えた。
「最期だから好きなのも嫌なのも見ておかないとって思って」
そう言って学校を見据えるレイアちゃんの眼差しには確かな覚悟があった。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

何かと「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢は
だましだまし
ファンタジー
何でもかんでも「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢にその取り巻きの侯爵令息。
私、男爵令嬢ライラの従妹で親友の子爵令嬢ルフィナはそんな二人にしょうちゅう絡まれ楽しい学園生活は段々とつまらなくなっていった。
そのまま卒業と思いきや…?
「ひどいわ」ばっかり言ってるからよ(笑)
全10話+エピローグとなります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる