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レイア編
七話 アリアケ・カイト
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僕達はカイトさんが待っているという居間へ入った。中は長方形で僕の使う部屋三つ分くらいの広さがある。三つのエリアに分かれていて、左にキッチンがあり、真中には大きな丸い机があって、右側にくつろげるようなソファが、背の低い四角い椅子を囲うように並んでいる。そしてカイトさんはソファに座って、水を飲んでいた。
「おっ、君さっき倒れていた子じゃないか。大丈夫かい?」
「は、はい。元気なりました」
僕を見るなり立ち上がると近寄ってきて親しく話しかけててくれる。
カイトさんは顔の彫りが深く鼻が高くて、眉毛は太く陽気さを感じさせる水色の瞳を持ってる。同色の髪は短髪でスッキリとした印象があった。身長は僕とほぼ変わらないのだけど、筋肉質で大きく感じてしまう。年齢は二十代後半くらいだろうか。
「そりゃあ良かった。それで、どうして倒れていたんだい? もしかして、ミズアさんを怒らせたとか?」
「そ、それは……」
何と説明すれば良いのかわからず言葉に詰まる。
「ニヒヒ、彼はミズアの強い思いをぶつけられちゃったんだよー。そりゃあものすごいね」
「し、師匠!?」
「はははっ。そんなに思われてるなんて君は幸せものじゃないか」
やばい、すごく全身がむず痒い。アオも顔を赤らめながらアヤメさんを恨めしそうに睨んでいる。
「でも、思いは伝えられる時に伝えないと駄目だよな。いつ別れが来るなんてわからないんだし」
「それわかるな。私も伝えられなかったことあったから」
「僕も……それわかります」
まだ言えずにいることは沢山あって。その相手は眼の前にいるのだけど、ちょっぴり遠くにいる。
「まぁ、俺の場合は少し迷惑がられているんだけどな。俺としては伝えきれていないんだが」
「それって……妹さんのことですか?」
「ああ。レイアは最高に良い子で究極的に可愛いんだが、照れ屋なのか愛を伝えると冷たくあしらわれてしまってな。それもまた魅力でもあるけど」
多分すごく面倒くさいんだろうなと、容易にレイアちゃんの気持ちを推測出来た。
「そのレイアちゃんのことだけど、とりあえず会ってみてどうしようか考えようと思っているの。行くのは私とユウの二人で」
アオがそう伝えるとカイトさんは少し逡巡した後に強く頷いた。
「わかった、よろしく頼むよ!」
話がまとまり僕達は店を出て、カイトさんの案内で家に向かった。
お店から大通りに出て住宅エリアを歩くけど、改めて街を眺めると都市の郊外といった感じで、自然と人工物が上手く混ざっている。歩道には花壇や木が飢えられていて、その中には桜があった。それを見ると実家のような安心感がある。
「こんにちは、ミズアちゃん」
「ミズアちゃんやっほー」
「やっほー」
人とすれ違う度にアオは挨拶されたり、話しかけられたりしていた。年齢も幅広くて色んな人に認知されているようで。
「すごいなミズアちゃん。大人気だ」
「そんなことないよ~。それにさっきこの街に帰ってきて歩いてた時は話しかけられなかったし」
「それは多分、今普通の服装でいるからじゃないか。それにこの街の救世主なんだし、もっと胸を張っていいと思うぞ」
一体何の話をしているのかわからないでいると、それに気づいたカイトさんが説明してくれる。
「少し前に街で亡霊が暴れ出して危機に陥ったんだ。そこでそれを止めたのがミズアちゃんだった」
「それで救世主」
「そんな皆大げさなんだよ~。それに、本当は亡霊化の前に助けられたら被害も防げたんだし」
謙遜しているという感じではなくて、悔恨が言葉に滲んでいた。
「だからそうなる前に、レイアちゃんのことも何とかしないと。ねぇカイトさん、あなたの未練を教えてくれない?」
目的地までの道の途中で横断歩道があった。信号は無くて、車道を通るバスなどが通り過ぎるのを待つため立ち止まる。
「正直、心当たりが多すぎわからないんだ。強い未練と言えばレイアを死なせてしまったことだな。……レイアが死んじまったのは俺のせいでもあるから」
「聞かせて欲しいな」
カイトさんはとつとつと身に起きたことを語りだした。
「その日、俺とレイアはエルフの村に遊びに行った。レイアは家でゆっくりしていたかったみたいだけど、俺はあの自然あふれる場所を見せたくて、何とかお願いして来てもらったんだ」
車両の数が減ってきて渡れるようになり僕達は再び歩を進める。
「だが、そこで事件が起きた。エルフの村で過ごしていた俺達だったが、その村で暴れ出したテーリオ族の奴がいてな、俺達はそれに巻き込まれたんだ」
この道を真っ直ぐ進んだ先に大きなアーチがあって、その上にセントラルパークと書かれている。その手前に十字路があって、カイトさんは右の道に曲がった。家々が並んでいて、右側の四つ目の三角屋根で二階建ての家の前で止まる。
「そいつは目についた人を襲っていて、その中に俺達がいた。それで俺はレイアを守ろうとした。でも、相手は恐ろしく強くて逃げることもできなくて、駄目だった。……なんて、話していたら着いちまったな」
「その人は、捕まったんですか?」
「いーや。まだ逃げているらしい。何せ、村近くには迷いの森があって、そこに隠れられると簡単には見つからない」
そんなきつい状態なのにカイトさんはその素振りがなかった。それは、過去のアオとの姿が重なって。
「じゃあ入ってくれ」
「お、お邪魔しまーす」
家の中に入ると、他者の人の家の独特な香りが鼻腔をくすぐった。広さは二人で住むには少し持て余しそうな印象を受ける。
「レイアは二階にいるんだ。……今更だがあいつは人と関わるのは得意じゃないから、会ってくれないかもしれないんだよなぁ」
案内されて階段を上り四つある部屋の三番目の扉の前で止まる。
「レイア、お客さんが会いに来てくれたんだけど、開けてくれないか?」
カイトさんは気遣うような口調で呼びかけた。
「良いよ。鍵は開いているから」
落ち着いた感じの少女の声が返ってくる。カイトさんはそれを聞き届けほっと一息つくと内開きの扉を開けた。
「……こんにちは」
そこには勉強机で本を読んでいる小学生高学年くらいの女の子がいて、僕達が入ると顔を上げてコクリと礼儀正しく会釈をして挨拶してくれた。
カイトさんと同じく、大きな目と長く伸ばされた髪の色が爽やかな水色をしている。顔立ちも非常に整っていて大人びており、どこか兄妹の繋がりも感じさせる。ただ、快活なお兄さんとは反対にレイアちゃんは静謐な佇まいでいた。
「おっ、君さっき倒れていた子じゃないか。大丈夫かい?」
「は、はい。元気なりました」
僕を見るなり立ち上がると近寄ってきて親しく話しかけててくれる。
カイトさんは顔の彫りが深く鼻が高くて、眉毛は太く陽気さを感じさせる水色の瞳を持ってる。同色の髪は短髪でスッキリとした印象があった。身長は僕とほぼ変わらないのだけど、筋肉質で大きく感じてしまう。年齢は二十代後半くらいだろうか。
「そりゃあ良かった。それで、どうして倒れていたんだい? もしかして、ミズアさんを怒らせたとか?」
「そ、それは……」
何と説明すれば良いのかわからず言葉に詰まる。
「ニヒヒ、彼はミズアの強い思いをぶつけられちゃったんだよー。そりゃあものすごいね」
「し、師匠!?」
「はははっ。そんなに思われてるなんて君は幸せものじゃないか」
やばい、すごく全身がむず痒い。アオも顔を赤らめながらアヤメさんを恨めしそうに睨んでいる。
「でも、思いは伝えられる時に伝えないと駄目だよな。いつ別れが来るなんてわからないんだし」
「それわかるな。私も伝えられなかったことあったから」
「僕も……それわかります」
まだ言えずにいることは沢山あって。その相手は眼の前にいるのだけど、ちょっぴり遠くにいる。
「まぁ、俺の場合は少し迷惑がられているんだけどな。俺としては伝えきれていないんだが」
「それって……妹さんのことですか?」
「ああ。レイアは最高に良い子で究極的に可愛いんだが、照れ屋なのか愛を伝えると冷たくあしらわれてしまってな。それもまた魅力でもあるけど」
多分すごく面倒くさいんだろうなと、容易にレイアちゃんの気持ちを推測出来た。
「そのレイアちゃんのことだけど、とりあえず会ってみてどうしようか考えようと思っているの。行くのは私とユウの二人で」
アオがそう伝えるとカイトさんは少し逡巡した後に強く頷いた。
「わかった、よろしく頼むよ!」
話がまとまり僕達は店を出て、カイトさんの案内で家に向かった。
お店から大通りに出て住宅エリアを歩くけど、改めて街を眺めると都市の郊外といった感じで、自然と人工物が上手く混ざっている。歩道には花壇や木が飢えられていて、その中には桜があった。それを見ると実家のような安心感がある。
「こんにちは、ミズアちゃん」
「ミズアちゃんやっほー」
「やっほー」
人とすれ違う度にアオは挨拶されたり、話しかけられたりしていた。年齢も幅広くて色んな人に認知されているようで。
「すごいなミズアちゃん。大人気だ」
「そんなことないよ~。それにさっきこの街に帰ってきて歩いてた時は話しかけられなかったし」
「それは多分、今普通の服装でいるからじゃないか。それにこの街の救世主なんだし、もっと胸を張っていいと思うぞ」
一体何の話をしているのかわからないでいると、それに気づいたカイトさんが説明してくれる。
「少し前に街で亡霊が暴れ出して危機に陥ったんだ。そこでそれを止めたのがミズアちゃんだった」
「それで救世主」
「そんな皆大げさなんだよ~。それに、本当は亡霊化の前に助けられたら被害も防げたんだし」
謙遜しているという感じではなくて、悔恨が言葉に滲んでいた。
「だからそうなる前に、レイアちゃんのことも何とかしないと。ねぇカイトさん、あなたの未練を教えてくれない?」
目的地までの道の途中で横断歩道があった。信号は無くて、車道を通るバスなどが通り過ぎるのを待つため立ち止まる。
「正直、心当たりが多すぎわからないんだ。強い未練と言えばレイアを死なせてしまったことだな。……レイアが死んじまったのは俺のせいでもあるから」
「聞かせて欲しいな」
カイトさんはとつとつと身に起きたことを語りだした。
「その日、俺とレイアはエルフの村に遊びに行った。レイアは家でゆっくりしていたかったみたいだけど、俺はあの自然あふれる場所を見せたくて、何とかお願いして来てもらったんだ」
車両の数が減ってきて渡れるようになり僕達は再び歩を進める。
「だが、そこで事件が起きた。エルフの村で過ごしていた俺達だったが、その村で暴れ出したテーリオ族の奴がいてな、俺達はそれに巻き込まれたんだ」
この道を真っ直ぐ進んだ先に大きなアーチがあって、その上にセントラルパークと書かれている。その手前に十字路があって、カイトさんは右の道に曲がった。家々が並んでいて、右側の四つ目の三角屋根で二階建ての家の前で止まる。
「そいつは目についた人を襲っていて、その中に俺達がいた。それで俺はレイアを守ろうとした。でも、相手は恐ろしく強くて逃げることもできなくて、駄目だった。……なんて、話していたら着いちまったな」
「その人は、捕まったんですか?」
「いーや。まだ逃げているらしい。何せ、村近くには迷いの森があって、そこに隠れられると簡単には見つからない」
そんなきつい状態なのにカイトさんはその素振りがなかった。それは、過去のアオとの姿が重なって。
「じゃあ入ってくれ」
「お、お邪魔しまーす」
家の中に入ると、他者の人の家の独特な香りが鼻腔をくすぐった。広さは二人で住むには少し持て余しそうな印象を受ける。
「レイアは二階にいるんだ。……今更だがあいつは人と関わるのは得意じゃないから、会ってくれないかもしれないんだよなぁ」
案内されて階段を上り四つある部屋の三番目の扉の前で止まる。
「レイア、お客さんが会いに来てくれたんだけど、開けてくれないか?」
カイトさんは気遣うような口調で呼びかけた。
「良いよ。鍵は開いているから」
落ち着いた感じの少女の声が返ってくる。カイトさんはそれを聞き届けほっと一息つくと内開きの扉を開けた。
「……こんにちは」
そこには勉強机で本を読んでいる小学生高学年くらいの女の子がいて、僕達が入ると顔を上げてコクリと礼儀正しく会釈をして挨拶してくれた。
カイトさんと同じく、大きな目と長く伸ばされた髪の色が爽やかな水色をしている。顔立ちも非常に整っていて大人びており、どこか兄妹の繋がりも感じさせる。ただ、快活なお兄さんとは反対にレイアちゃんは静謐な佇まいでいた。
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