春陽

えんがわ

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春陽

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 菜の花畑に、モンシロチョウ。土臭い匂い。そこで君は、お気に入りのパン屋で買ったベリーデニッシュと一緒に待っている。大粒のブルーベリーに、スライスされたストロベリー。白いテーブルの上に、半紙の上に置かれてる。柔らかな呼び声。僕も弾む声を返す。
 少し強めの太陽は、穏やかな雲に隠れてくれた。冬の間に白くなった君の顔を控えめに照らしている。少しずつ、少しずつ、太陽は君の顔も僕の顔もまた、こんがりと焦がしていくだろう。
 君はパステルブルーのワンピース。ふわりと覗く腕のカーブにどきりとする。手首には革紐の時計がゆるりと。君に初めて会った秋に僕が贈ったもの。僕の腕には君が去年の冬にプレゼントしてくれた時計。マニキュアはさしていない整えられた指先が掴むのは、ベリーデニッシュ。口に運ぶとサクッと音がこちらにも響く。僕もそれを口に含む。サクサクサクと口の中で遊ぶパイ生地、ちょっとだけ酸っぱい甘い果実。

「そうだ、これ、合うかなって」

 僕は少し咳をして半腰になって、テーブルの上のリュックをがさごそして、ステンレスの水筒を見つけて。マグカップそれぞれにハーブティを注ぐ。反対側の海辺に住む友人から頂いたスペシャルブレンドだ。

「イッシーから」

 君は楽しそうな目で、うんうんとうなづく。話は自然とあの日の昔話になったりする。それからふらりと入った軽食屋や、街路樹の葉や、思い出したあの時言えなかったことや、ちょっとだけ見えてきた明日のこと。そんなことを、ゆるゆる話して、ふわふわ話して、君も僕も笑う。 
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