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14.悪役令嬢は次なる商品を開発するようです
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オーブントースターの売れ行きは、まずまずといったところだった。
物珍しさこそあるものの、基本的に窯などで代用がきくからだ。
生活必需品というわけではないので、そんなものなのだろう。
ロバートに聞いた話では、ちゃんと黒字を出しているということだったのでよしとしようと思う。
長期的にみて、売れてくれればそれでいい。
こうして収入源を得たアリシアだが、当然オーブントースターだけで終わるつもりはない。
アリシアが次に目をつけたのは、ドライヤーである。
この世界では、洗髪後はタオルで水気を拭き取り、後は自然乾燥というのが一般的である。
ドライヤーなどないのだから、仕方のないことではあるのだが。
濡れたままの髪を放置するということは、キューティクルが開いたままになってしまうということだ。
この状態でのブラッシングや就寝は、髪を痛める原因となってしまう。
また、濡れたままの髪というのは、雑菌も繁殖しやすく、臭いやかゆみ、フケの原因となる。
アリシアを含め、髪の長い女性というのは、貴族の世界には多い。
やはり髪というのは女性の象徴であり、その美を語る上で切っても切れない関係といっても過言ではないだろう。
美貌を武器の一つとしている貴婦人や令嬢ならば、なおさら髪に対する思いも強いはずだ。
アリシアはこの世界でもドライヤーは売れると確信していた。
古来より、女性の美にかける執念には恐ろしいものがある。
それは戦争を起こし、国を傾けるほどだ。
その欲望に手をつけようというのだから、売れないわけがない。
「ふふっ」
飛ぶように売れる未来を想像して、思わず笑みがこぼれる。
そうと決まれば、早速ドライヤー作りである。
ドライヤーの基本構造というのは、簡単にいうと、通電することによって金属線が発熱し、それに風を当てることによって温風を生み出しているのである。
これを魔石で再現する。
土魔法で作った筒の中に火の魔石、その後ろに風の魔石を取り付ける。
後はこれに魔力を流せば完成という、いたってシンプルな製造方法だ。
アリシアは早速魔力を流しこんでみた。
「おぉー」
フゥーという小さな音と共に、温かな風が筒の中から流れてきた。
前世のドライヤーと違い、モーターなどがないため、音も静かなものだ。
一度止め、風の魔石を一回り大きな物へと取り換え、再び魔力を流す。
すると、より強い風が筒から吹き出してきた。
つまり、2種類の風の魔石を取り付ければ、強温風と弱温風を使い分けることができるというわけだ。
そして冷風。
ドライヤーの冷風は、冷たい風とはいうが、要するに風のみを送り出しているだけである。
火の魔石を止め、風の魔石にのみ魔力を流せば、冷風となるのだ。
強温風、弱温風、冷風。
これだけあれば、立派なドライヤーだろう。
商売相手に早速売り込もうと、早速アリシアは次の日の放課後、ロバートをサロンへと招待することにした。
◇
放課後になり、以前と同じように人目がなくなったところで、ロバートへと声をかける。
「これはアリシア様。
いかがされましたか」
「この後、少しお時間をいただけるかしら」
「ええ、問題ありません」
「でしたら、このまま……」
サロンへいきましょうと続けようとしたときだった。
「アリシア様」
ちょうど廊下の角から現れたメリアが声をかけてきた。
「メリアさん」
ニコニコと笑みを浮かべながら近づいてきたメリアだったが、アリシアが一人ではないことに気がつくとその足を止めた。
「申し訳ありません。
お取り込み中でしたか?」
チラリとロバートへと視線を流しながら、メリアが尋ねた。
「いえ、大丈夫ですよ。
少し、相談したいことがあっただけです。
同じクラスなので面識はあると思いますが、一応紹介しますね。
彼はロバート・グストン。
大商家であるグストン商会のご子息です。
そしてロバートさん。
こちらメリア・アレスティア。
アレスティア子爵家のご令嬢です」
アリシアは、さも当然のように互いを紹介した。
攻略キャラであるロバートをメリアに紹介するのは、アリシアにとってリスクのある行為だ。
本心としては接点を持たせたくはなかった。
ロバートに声をかけるタイミングは考えたつもりだったが、注意が足りなかったようだ。
だが、だからといって、ここでどちらかを遠ざけるのは、あまりにも不自然である。
こういうときは変に対応せず、自然に振る舞う方がかえって不信感を抱かせないはずだ。
「ロバート・グストンと申します。
以後お見知り置きを、メリア様」
「こちらこそよろしくお願いします、ロバートさん」
互いに礼をするロバートとメリア。
「少々グストン商会にお願いしたいことがありまして、ロバートさんとお話をしていたところです」
視線を送ると、同意するようにロバートがうなずいた。
「そうだったのですね。
アリシア様がいらっしゃったので、つい話しかけてしまいました。
大切なお話のようですし、私はこれで失礼します」
ペコリと頭を下げるメリア。
折角メリアから話しかけてきてくれたのだ。
もう少しメリアとの時間を過ごしたいところだが、アリシアから声をかけたロバートを待たせるわけにもいかない。
話したい気持ちをグッとこらえると、微笑みを浮かべる。
「また今度、お茶会をしましょうね」
「はい!」
手を振りながら、立ち去るメリアを見送る。
「アリシア様はメリア様と仲がよろしいのですね」
名残惜しそうに手を振り続けるアリシアへロバートが声をかけた。
「ええ。
メリアさんは私にとって、掛け替えのない存在ですから」
「そうなのですね」
ロバートはそれだけいうと、それ以上聞いてくることはなかった。
この学園の生徒でアリシアとメリア、そしてレイネスの関係を知らないものはいないだろう。
だからこそ、アリシアとメリアの仲がいいことに疑問を抱かないわけがない。
なにせ王子の元婚約者と、王子のお気に入りなのだ。
普通に考えれば、仲がいいことなどあるはずがない。
だというのに、ロバートは聞いてこなかった。
それはロバートの優しさなのか、はたまたアリシアたちに対してそれほど興味がないのか。
どちらにしろ、聞かれなかったことを答える理由もない。
二人はサロンへと向かった。
物珍しさこそあるものの、基本的に窯などで代用がきくからだ。
生活必需品というわけではないので、そんなものなのだろう。
ロバートに聞いた話では、ちゃんと黒字を出しているということだったのでよしとしようと思う。
長期的にみて、売れてくれればそれでいい。
こうして収入源を得たアリシアだが、当然オーブントースターだけで終わるつもりはない。
アリシアが次に目をつけたのは、ドライヤーである。
この世界では、洗髪後はタオルで水気を拭き取り、後は自然乾燥というのが一般的である。
ドライヤーなどないのだから、仕方のないことではあるのだが。
濡れたままの髪を放置するということは、キューティクルが開いたままになってしまうということだ。
この状態でのブラッシングや就寝は、髪を痛める原因となってしまう。
また、濡れたままの髪というのは、雑菌も繁殖しやすく、臭いやかゆみ、フケの原因となる。
アリシアを含め、髪の長い女性というのは、貴族の世界には多い。
やはり髪というのは女性の象徴であり、その美を語る上で切っても切れない関係といっても過言ではないだろう。
美貌を武器の一つとしている貴婦人や令嬢ならば、なおさら髪に対する思いも強いはずだ。
アリシアはこの世界でもドライヤーは売れると確信していた。
古来より、女性の美にかける執念には恐ろしいものがある。
それは戦争を起こし、国を傾けるほどだ。
その欲望に手をつけようというのだから、売れないわけがない。
「ふふっ」
飛ぶように売れる未来を想像して、思わず笑みがこぼれる。
そうと決まれば、早速ドライヤー作りである。
ドライヤーの基本構造というのは、簡単にいうと、通電することによって金属線が発熱し、それに風を当てることによって温風を生み出しているのである。
これを魔石で再現する。
土魔法で作った筒の中に火の魔石、その後ろに風の魔石を取り付ける。
後はこれに魔力を流せば完成という、いたってシンプルな製造方法だ。
アリシアは早速魔力を流しこんでみた。
「おぉー」
フゥーという小さな音と共に、温かな風が筒の中から流れてきた。
前世のドライヤーと違い、モーターなどがないため、音も静かなものだ。
一度止め、風の魔石を一回り大きな物へと取り換え、再び魔力を流す。
すると、より強い風が筒から吹き出してきた。
つまり、2種類の風の魔石を取り付ければ、強温風と弱温風を使い分けることができるというわけだ。
そして冷風。
ドライヤーの冷風は、冷たい風とはいうが、要するに風のみを送り出しているだけである。
火の魔石を止め、風の魔石にのみ魔力を流せば、冷風となるのだ。
強温風、弱温風、冷風。
これだけあれば、立派なドライヤーだろう。
商売相手に早速売り込もうと、早速アリシアは次の日の放課後、ロバートをサロンへと招待することにした。
◇
放課後になり、以前と同じように人目がなくなったところで、ロバートへと声をかける。
「これはアリシア様。
いかがされましたか」
「この後、少しお時間をいただけるかしら」
「ええ、問題ありません」
「でしたら、このまま……」
サロンへいきましょうと続けようとしたときだった。
「アリシア様」
ちょうど廊下の角から現れたメリアが声をかけてきた。
「メリアさん」
ニコニコと笑みを浮かべながら近づいてきたメリアだったが、アリシアが一人ではないことに気がつくとその足を止めた。
「申し訳ありません。
お取り込み中でしたか?」
チラリとロバートへと視線を流しながら、メリアが尋ねた。
「いえ、大丈夫ですよ。
少し、相談したいことがあっただけです。
同じクラスなので面識はあると思いますが、一応紹介しますね。
彼はロバート・グストン。
大商家であるグストン商会のご子息です。
そしてロバートさん。
こちらメリア・アレスティア。
アレスティア子爵家のご令嬢です」
アリシアは、さも当然のように互いを紹介した。
攻略キャラであるロバートをメリアに紹介するのは、アリシアにとってリスクのある行為だ。
本心としては接点を持たせたくはなかった。
ロバートに声をかけるタイミングは考えたつもりだったが、注意が足りなかったようだ。
だが、だからといって、ここでどちらかを遠ざけるのは、あまりにも不自然である。
こういうときは変に対応せず、自然に振る舞う方がかえって不信感を抱かせないはずだ。
「ロバート・グストンと申します。
以後お見知り置きを、メリア様」
「こちらこそよろしくお願いします、ロバートさん」
互いに礼をするロバートとメリア。
「少々グストン商会にお願いしたいことがありまして、ロバートさんとお話をしていたところです」
視線を送ると、同意するようにロバートがうなずいた。
「そうだったのですね。
アリシア様がいらっしゃったので、つい話しかけてしまいました。
大切なお話のようですし、私はこれで失礼します」
ペコリと頭を下げるメリア。
折角メリアから話しかけてきてくれたのだ。
もう少しメリアとの時間を過ごしたいところだが、アリシアから声をかけたロバートを待たせるわけにもいかない。
話したい気持ちをグッとこらえると、微笑みを浮かべる。
「また今度、お茶会をしましょうね」
「はい!」
手を振りながら、立ち去るメリアを見送る。
「アリシア様はメリア様と仲がよろしいのですね」
名残惜しそうに手を振り続けるアリシアへロバートが声をかけた。
「ええ。
メリアさんは私にとって、掛け替えのない存在ですから」
「そうなのですね」
ロバートはそれだけいうと、それ以上聞いてくることはなかった。
この学園の生徒でアリシアとメリア、そしてレイネスの関係を知らないものはいないだろう。
だからこそ、アリシアとメリアの仲がいいことに疑問を抱かないわけがない。
なにせ王子の元婚約者と、王子のお気に入りなのだ。
普通に考えれば、仲がいいことなどあるはずがない。
だというのに、ロバートは聞いてこなかった。
それはロバートの優しさなのか、はたまたアリシアたちに対してそれほど興味がないのか。
どちらにしろ、聞かれなかったことを答える理由もない。
二人はサロンへと向かった。
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