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6.アミーラと
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しばし呆然としていたが、はっとアミーラのことを思い出した私は未だに握っていた剣を放り出すと、急いで寝室へと向かった。
「アミーラ、入るぞ」
寝室に入ると、そこにはベッドに横たわるアミーラの姿があった。
横になって休んだからか、それほど顔色が悪いようには見えなかったのでひとまず安心する。
「……旦那様、お仕事中に申し訳ありません」
「よい、そのまま横になっていなさい」
起き上がろうとするアミーラを制止して、布団をかけ直す。
「それよりアルト殿から聞いた。子が宿ったのか」
「はい! と言っても、まだ私自身自覚が持てないのですが……」
アミーラは喜び半分、戸惑い半分といった表情で微笑んだ。
突然妊娠したと言われても、腹が膨らんでいるわけでもない。
すぐに実感できるようなものでもないだろう。
「ありがとう」
私はアミーラに体重をかけないよう、そっと覆い被さるようにして肩を抱いた。
「旦那様……」
潤んだ瞳を閉じるアミーラにそっと口づけをする。
このまま舌をねじ込んでしまいたい衝動に駆られるが、アルトに言われたことを思い出す。
アミーラのためにも、腹の中の子のためにも無理をさせるわけにはいかない。
アルトの言う通りにするのは癪だが、こればかりは仕方がない。
名残惜しさを感じながら、私は身体を起こした。
気を紛らわせるために、話を変える。
「アルト殿はどうだ?」
詳しくは聞かない。
いや、聞けるはずもない。
私ですら知らないアミーラの身体の全てを知っている男が、普段どのようなことをしているのかなんて。
「先生には王城にいた頃から良くして頂いております。
あまり身体の強くない私が大病に冒されることなく、こうして旦那様の伴侶となれたのも先生のお陰に他なりません。
そんな先生が大切な私たちの子供の出産に立ち会ってくれるのです。
こんな心強いことはないでしょう」
「そうか……」
どうやらアルトは確かにアミーラの信頼を得ているらしい。
ではどうして私にあのようなことを言ったのか。
私を怒らせることが目的のような口振りだったが、何か恨みを買うようなことをしたのだろうか。
記憶違いでなければ、屋敷に来るまで顔すら合わせたことなかったと思うのだが。
「どうかなさいましたか?」
心配そうなアミーラの声で我に返る。
身籠っているアミーラを不安にするようなことは言うべきではないだろう。
「いや、なんでもない。これから大変だと思うが、一緒に頑張ろう」
「はい、旦那様!」
アルトの真意はわからないが、これからが一番大切な時期だ。
万が一のことがないよう、彼の動向には目を光らせおかなくてはならない。
「アミーラ、入るぞ」
寝室に入ると、そこにはベッドに横たわるアミーラの姿があった。
横になって休んだからか、それほど顔色が悪いようには見えなかったのでひとまず安心する。
「……旦那様、お仕事中に申し訳ありません」
「よい、そのまま横になっていなさい」
起き上がろうとするアミーラを制止して、布団をかけ直す。
「それよりアルト殿から聞いた。子が宿ったのか」
「はい! と言っても、まだ私自身自覚が持てないのですが……」
アミーラは喜び半分、戸惑い半分といった表情で微笑んだ。
突然妊娠したと言われても、腹が膨らんでいるわけでもない。
すぐに実感できるようなものでもないだろう。
「ありがとう」
私はアミーラに体重をかけないよう、そっと覆い被さるようにして肩を抱いた。
「旦那様……」
潤んだ瞳を閉じるアミーラにそっと口づけをする。
このまま舌をねじ込んでしまいたい衝動に駆られるが、アルトに言われたことを思い出す。
アミーラのためにも、腹の中の子のためにも無理をさせるわけにはいかない。
アルトの言う通りにするのは癪だが、こればかりは仕方がない。
名残惜しさを感じながら、私は身体を起こした。
気を紛らわせるために、話を変える。
「アルト殿はどうだ?」
詳しくは聞かない。
いや、聞けるはずもない。
私ですら知らないアミーラの身体の全てを知っている男が、普段どのようなことをしているのかなんて。
「先生には王城にいた頃から良くして頂いております。
あまり身体の強くない私が大病に冒されることなく、こうして旦那様の伴侶となれたのも先生のお陰に他なりません。
そんな先生が大切な私たちの子供の出産に立ち会ってくれるのです。
こんな心強いことはないでしょう」
「そうか……」
どうやらアルトは確かにアミーラの信頼を得ているらしい。
ではどうして私にあのようなことを言ったのか。
私を怒らせることが目的のような口振りだったが、何か恨みを買うようなことをしたのだろうか。
記憶違いでなければ、屋敷に来るまで顔すら合わせたことなかったと思うのだが。
「どうかなさいましたか?」
心配そうなアミーラの声で我に返る。
身籠っているアミーラを不安にするようなことは言うべきではないだろう。
「いや、なんでもない。これから大変だと思うが、一緒に頑張ろう」
「はい、旦那様!」
アルトの真意はわからないが、これからが一番大切な時期だ。
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