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4.誰よりもアミーラを知る者
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「ところで旦那様」
そのとき、アルトの雰囲気が変わったことに、私はすぐに気がつけなかった。
「妊娠の確認はどのように行うかご存じですか?」
「ん? いや、医学に関しては完全に門外漢でな」
侯爵家の跡取りとして高水準の教育を施されてきたが、それらは全て領を治めるためのものだ。
その中に医学について学ぶ機会はなかった。
「まあ、いろいろあるのですが。
例えば今回の奥方様のようにつわりの症状も判断材料のひとつですね。
見た目でわかる変化としては、胸が大きくなることや、乳頭や陰部の色素沈着などがあります。
奥方様の身体にこういった変化は感じませんでしたか?」
なんだ、その質問は。
アミーラの胸が大きくなったか答えろ?
女の部分の色について答えろ?
いや、確かに夫婦である以上、アミーラの妊娠について知識をつけておくことは重要だろう。
もし二人きりのときに何かがあれば、私が対処する必要だってあるのかもしれないのだから。
だが、いくら医師とはいえ、その質問は配慮に欠けるのではないだろうか。
「……」
「まあ、劇的に変化があるわけではないので、注意して見ないと気がつかなくても不思議ではありません。
とくに奥方様は胸の豊かな方なので、多少大きくなっても変化に気がつきにくいですし、乳頭や陰部の色素沈着についても、現時点ではほとんど変化はありませんでしたしね」
現時点では?
それはつまり……。
「……アルト殿は見たのか、妻の身体を」
「はい、それが仕事ですので」
仕事、か。
確かにそうだ。
アルトはアミーラと共にやって来た宮廷医なのだ。
アミーラの裸体を見ることだってあるだろう。
聞かなくてもそれくらいわかっている。
だからこそ、気にしない振りをしていたのに。
だが、アルトは私の想像を遥かに超えていた。
「奥方様のことは幼少の頃より診ていたので、身体の隅々まで把握しております。
いつから胸が膨らみ始めたのか。
恥毛が生え始めたのはいつからか。
初潮はいつだったのか。
陰部の形の変化や、肛門の皺の数。
乳頭や陰核の大きさ。
子供の頃から今に至るまでの全てを私は知っています」
バンッ――。
私はテーブルを叩くとアルトを睨み付けた。
「なぜその話を私にした?」
仮にアルトの言うことが事実であるとして、だ。
それを私に知らせる意味がわからない。
「そんなの決まっているではないですか。旦那様のその顔を見るためですよ」
「貴様あっ! 今ここで斬り殺してくれるわ!」
私は壁際に立て掛けてあった剣を手に取った。
訓練用の剣であり、刃は潰してあるので綺麗に斬ることはできないだろうが、人一人殺すには十分だ。
そのとき、アルトの雰囲気が変わったことに、私はすぐに気がつけなかった。
「妊娠の確認はどのように行うかご存じですか?」
「ん? いや、医学に関しては完全に門外漢でな」
侯爵家の跡取りとして高水準の教育を施されてきたが、それらは全て領を治めるためのものだ。
その中に医学について学ぶ機会はなかった。
「まあ、いろいろあるのですが。
例えば今回の奥方様のようにつわりの症状も判断材料のひとつですね。
見た目でわかる変化としては、胸が大きくなることや、乳頭や陰部の色素沈着などがあります。
奥方様の身体にこういった変化は感じませんでしたか?」
なんだ、その質問は。
アミーラの胸が大きくなったか答えろ?
女の部分の色について答えろ?
いや、確かに夫婦である以上、アミーラの妊娠について知識をつけておくことは重要だろう。
もし二人きりのときに何かがあれば、私が対処する必要だってあるのかもしれないのだから。
だが、いくら医師とはいえ、その質問は配慮に欠けるのではないだろうか。
「……」
「まあ、劇的に変化があるわけではないので、注意して見ないと気がつかなくても不思議ではありません。
とくに奥方様は胸の豊かな方なので、多少大きくなっても変化に気がつきにくいですし、乳頭や陰部の色素沈着についても、現時点ではほとんど変化はありませんでしたしね」
現時点では?
それはつまり……。
「……アルト殿は見たのか、妻の身体を」
「はい、それが仕事ですので」
仕事、か。
確かにそうだ。
アルトはアミーラと共にやって来た宮廷医なのだ。
アミーラの裸体を見ることだってあるだろう。
聞かなくてもそれくらいわかっている。
だからこそ、気にしない振りをしていたのに。
だが、アルトは私の想像を遥かに超えていた。
「奥方様のことは幼少の頃より診ていたので、身体の隅々まで把握しております。
いつから胸が膨らみ始めたのか。
恥毛が生え始めたのはいつからか。
初潮はいつだったのか。
陰部の形の変化や、肛門の皺の数。
乳頭や陰核の大きさ。
子供の頃から今に至るまでの全てを私は知っています」
バンッ――。
私はテーブルを叩くとアルトを睨み付けた。
「なぜその話を私にした?」
仮にアルトの言うことが事実であるとして、だ。
それを私に知らせる意味がわからない。
「そんなの決まっているではないですか。旦那様のその顔を見るためですよ」
「貴様あっ! 今ここで斬り殺してくれるわ!」
私は壁際に立て掛けてあった剣を手に取った。
訓練用の剣であり、刃は潰してあるので綺麗に斬ることはできないだろうが、人一人殺すには十分だ。
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