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18.ダンジョン生存訓練③

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「その身一つになってしまったとき、まず始めにするべきこと。
 それはナイフの獲得だ」

「ナイフ、ですか?」

 エリーゼは裸体を晒したまま、小首を傾げた。

「一部の獣人のように、自前の爪で何でも切り裂けるのなら話は別だけど、少なくとも僕たちエルフにそんなことはできない。
 ナイフは植物を加工したり、食料を捌いたりするのにも必要になってくる。
 衣食住の確保を優先したくなるところだけど、その効率を上げるためにも、まずはナイフを作るんだ」

 リュートはそう言うと、足元に転がっていた拳大の石を拾い上げた。

「ナイフと言っても、立派なものを作る必要はない。
 最低限、ものを切ることができればそれで十分だ。
 まずはこうして、石の端を他の石に叩きつけて剥離させる」

 リュートがカッ、カッと何度か石を叩きつけると、先端の部分が割れて、滑らかな面か現れた。

「これを両面行うことで、簡単な礫器を作ることができるんだ。
 いくつか試して、形のいいものが手に入れば上出来だね。
 エリーゼもやってみて」

 リュートの指示に従い、エリーゼも拳大の石を拾って、近くの石に叩きつけた。
 振りかぶる腕の動きに合わせて、たぷん、たぷんと豊かな胸が波打つ。
 宙をさ迷う桃色の蕾をリュートに見られていると思うと、どうしても恥ずかしさが込み上げてきてしまう。

 カッ、カッと三つほど石を割ったところで、ようやくそれなりの石のナイフができた。

「次にやるのは体温の維持だ。
 人は水がなければ三日、食料がなければ三週間で死んでしまうけど、過酷な環境下では三時間もあれば命は尽きると思っていた方がいい。
 この階層は比較的快適に過ごせる気温だけど、それでも夜になると冷え込んでくる。
 濡れた服のまま寝ようものなら、そのまま目が覚めないなんてこともあるかもしれない。
 だからエリーゼには服を脱いでもらったわけだけど、裸のままではどんどん体温を奪われていってしまう。
 そこで次にするのは、衣類の確保だ。
 樹皮でも、草でも何でもいい。
 束ねて身に纏うことで、体温の維持に務めるんだ」

 エリーゼは出来立ての即席ナイフで辺りの草を刈り始めた。
 切れ味はやはりそれ相応といったところだが、それでも素手で千切るよりはよっぽど効率よく集めることができる。

 エリーゼは草で服を作る方法など知らないので、リュートに最も簡単な服の作り方を教わった。

 まず、集めた草の一端を蔦に結びつけていき、カーテンのようなものを二つ作る。
 あとは一つを首、もう一つを腰の位置で蔦を結んで身につけることで、簡易な服の完成である。
 見た目は、草でできたスカートを上半身と下半身に身に纏っているような状態だろう。
 余った草は足に巻きつけ、靴の代わりにする。

 手早くそれなりの量の草を集めたつもりだったが、身につけてみると草の間から素肌が覗いているのがよくわかった。
 とくに胸は、草が膨らみを避けるように左右に流れてしまうため、頂点の蕾に至るまで全て露出したままだった。
 下半身はじっとしていれば見えないが、歩く度に草の割れ目から秘裂がチラチラと覗いてしまっている状況だ。

 草の服を纏った分、露出は減ったはずだが、どういうわけか恥ずかしさは全裸より増した気がする。

「次はテントを作る。
 これができれば、この階層で夜に凍死するようなことはほとんどないだろう。
 まず、地面に落ち葉や枝葉などをありったけ敷き詰める。
 直接地面に寝るのは避けた方がいい。
 地面に体温を奪われてしまうからね」

 エリーゼは森の中の少し開けた場所に、落ち葉や枝葉をかき集めた。
 ふんわりと盛り上がっており、これなら横になっても地面の冷たさを感じることはないだろう。

「次に枝を蔦や草で結んでテントの骨格を作る。
 非常用だから、横になって寝るだけのスペースがあれば十分だよ。
 あとは枝葉なんかで屋根を作れば完成だ」

 試しに出来上がったテントに潜り込んでみる。
 這うこともままならない狭さだが、風は十分に防げそうであり、落ち葉の布団をかければ夜に寒い思いをすることもなさそうだ。

「あの、すみません。
 少しお手洗いに」

 ギルドでリュートと会い、そのままダンジョンの第十階層まで潜って、かれこれ半日以上の時間が経過していた。
 ギルドで飲んだ紅茶のせいもあってか、エリーゼの尿意はかなり高まっていた。

「おお、それはちょうどいい。
 ちなみに、どっちが出るの?
 もしかしてどっちも?」

「なっ!
 し、小水ですけど……」

 あまりに配慮にかける質問に思わず眼を剥いてしまったが、どうにか答えを告げる。

「なら、早速しに行こうか」

「えっ、いや。
 まさか、リュートさんも着いてくるの?」

「もちろん、そのつもりだよ。
 ただ排尿をするだけなんてもったいないからね」

 にこりと笑いかけてくるリュートに、エリーゼは言葉を詰まらせた。
 だが、講習をしっかり受けようと決めたのだ。
 わざわざリュートが着いてくるということは、何か意味があるのだろう。

 リュートはテントから少しはなれた位置まで移動すると、一本の木を指差した。

「それじゃあ、この木に向かって尿をかけてもらおうかな」

「……それはなぜかしら?」

「マーキングだよ。
 縄張りを主張するための、ね。
 魔物相手にどこまで効果があるかは正直僕もわかってないけど、経験上、獣型の魔物には有効な手段だと思ってる。
 少しでも身の安全を確保できる可能性があるのなら、これくらいの手間は惜しむべきじゃないね」

 リュートの話は理に適っているように聞こえる。
 非常時において、避けることができるのなら、魔物との遭遇はできるだけ回避するべきだろう。

(でも、獣のようにマーキングをするなんて……)

 やることは変わらない。
 尿を出すだけだ。
 だが、そこに意味を持たせた途端、どうしてこんなにも羞恥を揺さぶるのだろう。

「できればテントのある位置を中心に、ぐるっとマーキングをしたいところだけど。
 エリーゼは排尿を途中で止めることはできる?
 ちょっとずつかけて回りたいんだけど」

「そ、それは……!
 ま、まあ、できるとは思いますけど……」

「それならよかった。
 女性は身体の構造的に排尿を途中で止めるのが苦手らしいからね。
 そろそろ日も暮れ始めるだろうし、早くマーキングしていこう」

 リュートの急かす声に押され、エリーゼは木の前に立った。

 やると決めたのだ。
 これくらいのこと、どうということはない。

 足を肩幅に開き、腰を突き出す。
 飛び散らないよう秘唇を左右の手で引っ張るように開いて、尿道口を露出させる。

 厠ではない野外。
 女の秘すべきところを自らさらけ出したエリーゼは、異性に見守られる中、頬を赤く染めながら力を抜いた。

 シャアァァァ……

 湯気を上げながら、黄金のゆばりが木の幹を打つ。
 澄んだ森の空気の中に、芳しい香りが広がった。

「止めて!」

 リュートの声に、エリーゼは股間に力を込めた。
 ピュッと強めに噴き出したのを最後に、黄金のゆばりが止まる。

「なかなかいい出しっぷりだったね」

 放尿姿を褒められたエリーゼは、頬が熱くなるのを感じた。

「よし、次に行こう!」

 リュートに先導されながら、エリーゼはマーキングをしていく。
 何度も秘部を露出し、尿道口から尿が噴き出す瞬間を見られ続けた。

 排泄しているところを間近で観察される。
 それも、何度も、何度も。

 生物として当たり前のことをしているだけだ。
 それなのに、誰かに見られているというだけで、どうしてこんなにも女を刺激するのだろうか。
 沸き上がる羞恥。
 その羞恥はエリーゼの中に蓄積していき、熱くドロリとした感覚にのぼせそうになる。

 排尿によるマーキングだが、排泄量を器用に調節できるわけではない。
 そのため、マーキングできた箇所にいくらかの偏りができてしまったが、それでもどうにかテントの周りを囲うことができた。

 マーキングを終え、濡れそぼった女陰を葉っぱで拭くと、尿ではない液体が糸を引いていた。
 サッと顔を上げると、ニコニコしたリュートにその様子を見られていたことを知り、エリーゼは恥ずかしさで顔を伏せた。
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