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2.敵前放尿

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「全部で六か。
 いくぞ、エリーゼ!」

「ええ!」

 シンは先頭にいるゴブリンを振り下ろす一撃で切り捨て、返す剣で右から迫る一体を切り上げた。

 シンを追うようにエリーゼも前に出る。

「風よ!」

 エリーゼは精霊魔法で細剣に風属性の付与を行い、鋭さの増した刺突でゴブリンの頭部を容易く貫く。

 ゴブリンといえば、最弱で有名な魔物だ。
 数が揃えば厄介だが、六体程度ではシンたちの相手にもならない。

 瞬く間に六体のゴブリンを制圧した二人は、素材の回収を始めた。

「おっ!
 このゴブリンの持っているダガー、錆びもないしそれなりの値段で売れそうだな」

 シンはゴブリンの死体から回収したダガーを見ながらいった。
 ゴブリンが使用していたので、汚れや多少の歯こぼれはみられるが、十分手入れ可能な範囲だ。
 冒険者ギルドに持ち込んでも、買い取り拒否をされるようなことはないだろう。

「見て。
 魔石もゴブリンのものにしては大きいわ。
 さすが、人気のダンジョンは違うわね」

 エリーゼがゴブリンから剥ぎ取った魔石は、確かに通常のものより一回り大きいように見える。
 紫黒色の魔石は中に魔力を蓄えており、その容量は大きさに比例する。
 魔石は様々な魔道具の動力として利用されているため、需要がなくなることはない。
 つまり、大きい魔石ほど高く売れるというわけだ。

 ツェローシュクのダンジョンは儲かるという噂を信じてここまで来たわけだが、どうやら噂は本当だったらしい。
 ゴブリンでこれなら、より深い階層の魔物ならもっと美味しいはずだ。
 シンは胸が熱くなるのを感じた。

「そろそろ昼か。
 少し休憩して、飯でも食おう」

「そうね」

 周囲に魔物がいないことを確認してから、二人はその場に腰を下ろした。

 リュックから朝、ダンジョンへ来る途中で買った串焼きを取り出して頬張る。
 すっかり冷めてしまっているが、香辛料がたっぷりと使用されていて味が濃いため、冷たくても美味しく食べられる。

 正面ではエリーゼも同じ串焼きを食べている。
 エルフは菜食主義だという話があるが、あれは真っ赤な嘘だ。
 精々、肉嫌い、野菜好きといった程度の、種族的な好みの話である。

 そしてエリーゼは、エルフだが大の肉好きだ。
 そしてその肉はあの豊かな体の一部になっていくのだろう。

「じろじろ見て、どうかした?」

「今日もエリーゼはかわいいなと思っただけ」

「もう……、馬鹿」

 溜め息をついて視線をそらすエリーゼ。
 だがシンは、エリーゼの笹穂耳が赤くなっているのを見逃さなかった。



「ふう、ご馳走さま。
 ……シン、ちょっと良い?」

 少し恥ずかしそうに、エリーゼがいった。
 
「ああ、わかった」

 そういうと、シンは長剣を持って立ち上がった。

 これはエリーゼのいつもの合図である。
 催したから、少しはなれて周囲の警戒をしてくれという意味だ。

 エリーゼとしては恥ずかしいのかもしれないが、こんなやり取りも慣れたものである。
 シンはいつものように少しはなれて、周囲の警戒をしようとした。

「ちょっと待って」

 だが、そんなシンを、エリーゼが止めた。

「どうかしたか?」

 何かあったのか。
 それとも催したわけではないのか。

 いうのを躊躇っているのか、口を開いては閉じて、を繰り返すエリーゼ。
 そんなエリーゼの言葉を、シンは黙って待った。

 暫しの沈黙のあと、決意したエリーゼが呟いた。

「……側で見ていてほしいの」

 瞳を潤ませ、頬を染めたエリーゼの顔を見て、シンは全てを悟った。

 昨日の夜、初めていわれたときは驚いたが、どうやらエリーゼは排泄する姿を見られると興奮するらしい。
 そして、そんなエリーゼの姿を見たシンもまた、今までにない昂りを感じた。
 お陰で昨夜はいつもより盛り上がってしまった程だ。

 それはともかく、ここはダンジョンだ。
 魔物と命をかけて戦う場所。
 そんなところで、性的な快楽を感じるべきではない。
 仲間なら止めるべきだ。

「……わかった」

 だが、シンは止めることができなかった。
 熱に浮かされたように、ぽおっとした表情で見つめてくるエリーゼから目が離せなかった。

 エリーゼはゆっくり立ち上がると、ショートパンツを膝まで下げる。

 壁の光る鉱石に照らされただけの、薄暗いダンジョンの中で、エリーゼの下半身は下着だけになった。
 その下着の股ぐらは、暗がりでもわかるほど変色している。

 ダンジョンという日常に、エリーゼという非日常が交錯する。
 そして、非日常の中で、エリーゼは下着を下ろした。

 うっすらと茂っている金色の若草が、股間にベットリと張り付いてしまっているのが見えた。
 エリーゼはこの状況に、いったいどれ程の興奮を覚えているのだろうか。

 エリーゼは足を少し開き、しゃがみこむ。
 シンの位置からだと、少し開いたエリーゼの、薄桃色の女の部分が見えてしまっている。
 そしてそのことを、エリーゼもわかっているはずだ。

 淫靡な空気が二人を包む。
 そんな空気に当てられたのか、シンは見ているだけで、くらくらしてしまいそうだった。

 そして、非日常は静に目を閉じた。

 シヤアァァァァァ……

 黄金のゆばりが、湯気を立てながら放たれる。
 静かなダンジョンの中に、激しく地面を叩く水音が響いた。

 排泄という、生物として当然の行為。
 それがどうしてこんなにも美しく、淫靡にみえてしまうのだろうか。

 小さく体を震わせながら、未だ排泄を続けるエリーゼに、シンはすっかり見とれていた。

 だからだろう。
 敵の接近に気がつくのが遅れてしまったのは。

 わずかな殺気に振り返ると、そこには四体のゴブリンがすぐそこまで迫ってきていた。



「ゴブリンだ!」

 シンの声にエリーゼは目を開いた。

 するとそこには、すぐ目の前まで迫っているゴブリンの姿が見えた。

 シンを近くに呼び寄せたことで、いつもより周囲の警戒を怠ってしまった。
 だが、それにしても、あまりにもゴブリンの距離が近すぎる。

 おそらく、たった今湧いたばかりの個体ではないだろうか。

 魔物はダンジョンの至るところから出現する。
 その瞬間を目撃することはあまりないが、ないわけでもない。
 そして今回は運悪く、目と鼻の先でゴブリンが湧いてしまったのだろう。

(私も戦わなきゃ!)

 エリーゼは立ち上がろうとするが、未だ自身の股ぐらからゆばりがほとばしっていることに気がつき、慌てて腰を下ろす。
 一度始まった放出は、自分の意思ではなかなか止めることができない。

 シンが戦っているすぐ後で、股を開き、用を足している。
 焦燥感を抱く一方で、この非日常的な状況に陶酔し掛けている自分がいた。

 魔物という下等な存在に、排泄姿という、生物として最も無防備な姿を晒してしまっている。
 それはまるで、ゴブリン以下の存在に成り下がってしまったかのようだった。

 ああ、体が熱い。
 爛れてしまいそうだ。

「エリーゼ!」

 シンの声で、悦楽に溺れていた思考が、現実に引き戻される。

 そして、そこにはシンの横を抜けて、エリーゼに襲いかかるゴブリンの醜悪な顔があった。

「っ!」

 エリーゼはとっさに細剣を盾に、ゴブリンの斬撃を受け止める。
 だが、体勢が悪かった。
 排泄中の、腰を下ろした姿勢では、いくら弱いゴブリンの攻撃とはいえ、踏ん張ることができなかった。

 背中から倒れたエリーゼは、地面を背に、どうにか斬撃を受けきる。

(排泄中とはいえ、ゴブリンごときに倒されるなんて!
 ……排泄中?)

 エリーゼはサッと視線を下げた。
 いや、見なくてもわかっている。
 まだ、排泄が終わっていないということは。

 テラテラと光る、薄桃色の秘唇。
 ぱっくりと開いたその割れ目から、黄金のゆばりは未だ絶えず流れ出ている。

 そしてそのゆばりは、エリーゼの股ぐらから放物線を描き、ゴブリンの足へと降り注いでいた。

 下着を下ろして股を開き、尿を垂れ流しながら、ゴブリンに押し倒されている。

 魔物以下、ゴブリン以下に成り下がってしまったかのような錯覚。
 エルフとしての尊厳を貶められ、無様な姿を晒されてしまっている。

 ああ、もし抵抗を止めたらどうなってしまうのだろうか。
 ゴブリンは魔物だが、人の形をしている。
 その股間には、体の大きさ相応ではあるが、確かに雄の象徴がぶらさがっている。

 ゴブリンのような、下等な存在に組み敷かれ、この肉体を貪られてしまう。
 そんな、あってはならない、禁断の状況。

 身体が、エリーゼの女の部分が熱く疼く。
 ようやく止まったゆばりの代わりに、ダクダクと濃い蜜を吐き出しながら。

 ゴブリンに襲われているというのに、エリーゼの思考はすっかり惚けきっていた。
 熱い息が、ゴブリンへと吹きかけられる。

 細剣を支える手から、力が抜けていく。

(ああ、あと少しで……)

 その潤んだ瞳は、まるで目の前に迫った絶望を歓迎しているようで。
 その顔は惚けた笑みを浮かべていた。

 そして……。

「エリーゼから離れろ!」

 シンに蹴り飛ばされたゴブリンは、そのまま追撃したシンの一太刀で呆気なく息絶えた。

「エリーゼ、大丈夫か!」

 駆け寄ってきたシンは、未だ倒れていたエリーゼを抱き起こすと、怪我がないか確認してから、力強く抱き締めた。

「すまない。
 油断して警戒を怠っていた」

 少し上ずったシンの声に、エリーゼの頭はスッと冷えていった。

「……私こそ、ごめんなさい。
 私があんなことシンに頼まなければ……」

「俺も止めるべきだった。
 どうせゴブリンしかでないから大丈夫だろうって、誘惑に勝てなかった。
 本当にすまない」

 明らかにエリーゼのせいだというのに、頭を下げるシン。
 エリーゼにはそんな姿が、堪らなく愛おしく映った。

「もう二度とこんなことがないよう、次からは気をつけましょう」

「ああ、そうだな。
 ……え、次?」

 呆けるシンに、エリーゼは悪戯っぽく微笑んだ。



「シン、お願いがあるの」

 腕の中にいる裸体のエリーゼがいった。

「どうした?」

 初雪のように白く、サラサラな背中を撫でながら答える。

「ちょっとこっちに来て」

 ベッドから抜け出したエリーゼは、シンの手を引っ張ると、宿の床の上に座らせた。

「なんだ、いきなり」

 目の前に立つエリーゼを見上げるようにして、シンは尋ねた。

「その、ね。
 私の、お、おしょ、お小水をシンに浴びてほしいの!」

 「キャー!いっちゃった!」と赤くなった頬に手を当て、身を悶えさせるエリーゼ。
 その姿は想い人に愛を伝えた娘のようにみえないこともない……、が。

「いや、ちょっと待て!
 いっている意味がわからん!」

「だから、私のお小水を」

「いや、いい。
 二度もいうな。
 わからんが、お前のいいたいことはわかった。
 だが、ここは厠じゃないぞ」

「それは、ちゃんと後で私が片付けるから」

 ひっそりと部屋の隅に用意された、雑巾と桶を指差してエリーゼはいった。

「……見るだけじゃ駄目なのか」

「駄目なの。
 いや、見られるのは、それはそれでアリなんだけど、今日はそれだけじゃなくて。
 ……やっぱり、お小水を浴びるのは嫌?」

 潤んだ瞳で見つめてくるエリーゼ。
 それは純粋にお願いをしているようにみえて、実際はその奥に、熱い情欲を宿していると、シンは見透かしていた。

「……嫌じゃない」

 むしろ、浴びてみたい。
 だが、その言葉はどうにか飲み込んだ。

 目を輝かせながら、頬を上気させるという、子供と大人の混ざったような顔をしたエリーゼは、立ち姿のまま、最愛のパートナーにゆばりをほとばしらせた。
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