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3.彼らの関係

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 誰だ、あの子は?
 彼の子供ではないだろう。
 彼は私と結婚するのだから、子供がいるはずはない。
 では、親戚の子供だろうか。
 頻繁に彼の家を訪れているのだとしたら、いってきますという言葉もわからなくはない。

「こら、走ったら危ないでしょ!」

 幼女に続くようにして、一人の女が彼の家から出てきた。
 年の頃は私と同じくらいだろうか。
 雰囲気からして、幼女の母親だろう。

 きっとこの女が彼の親戚に違いない。
 親族とはいえ、年頃の男性が異性を家に招き入れるという行為は周囲の誤解を招きかねない。
 私は理解のある人間だが、近隣住民全てがそういうわけではないだろう。

 仕方ない。
 これからは私が家にいる間に遊びにきてもらうことにしよう。

「お父さんも早く~!」

 幼女が家の中に呼びかける。
 なるほど、家族全員で遊びにきていたのか。
 それなら周囲に誤解を受けることもないだろう。
 どうやら私の心配は杞憂だったようだ。

「今行くよ」

 そして出てきた男を見て、私は目を見開いた。
 彼だ。
 十六年という時が経ち、見た目もすっかり大人になっているが、私が彼を見間違えるはずがない。
 輝く金色の髪に眩しい笑顔。
 幼き頃の面影もしっかり残っている。
 間違いなく彼だ。

 ようやく彼の姿を見ることができた喜びで叫びだしそうになるのをどうにかこらえた。
 私は呼吸を整えると、仲良さそうに街へと消えていく三人の背中を見る。

 幼女。
 その母親らしき女性。
 そしてお父さんと呼ばれている彼。

 これらの情報から導き出される答え。
 それは……。

「彼はあの子の父親代わりをしているのね」

 きっとあの幼女の本当の父親は訳あって居なくなってしまったのだろう。
 悲しむ母子を前に、心優しい彼は父親代わりになってあげることを決意したに違いない。
 心の中では私との結婚の約束を大切に思っているが、目の前に悲しむ人がいるのに手を差し出さない彼ではない。

「なんていい人なの……!」

 やはり私の婚約者は素敵な人のままだった。
 その事実がたまらなく嬉しい。

「さて、でもそうなるとこれからどうしようかしら?」

 予定では彼と再会を果たした後、そのまま結婚をする予定だったが、これではそういうわけにもいかない。
 彼が折角あの幼女の笑顔を守っているというのに、ここで私が出ていってしまっては彼の努力が無駄になってしまう。
 彼の邪魔をするようなことだけはしたくない。

 となると私がとれる選択肢は。
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