【R18】花嫁引渡しの儀

黒うさぎ

文字の大きさ
上 下
1 / 11

1.花嫁に選ばれた王女

しおりを挟む
 レーヴル王国とラング王国。
 隣接する二つの国は、長きにわたる戦いで疲弊していた。
 数多の国民が犠牲となり、川のような血が流れた。
 もはや争いに勝てたとして、獲るものよりも、失ったものの方が多い現状。

 そんな二国の未来を憂えた今代の王たちは、争いの歴史に終止符を打つために、和平を結ぶことを決意。
 ついに、傷の絶えなかった両国に平和が訪れた。

 和平を結ぶにあたって両国は、互いに王族から無垢な姫を一名選び、花嫁として相手国へと嫁がせることにした。
 これは友好の証であると共に、再び争いを起こさぬための人質だった。

 そしてレーヴル王国から選出された姫というのが私――ルナール・レーヴルである。
 レーヴル王と第一王妃の間に産まれた、正統な血筋を引く王女だ。
 側室や妾の子ではなく、正妃の子を選ぶということからも、どれだけこの和平を大切にしているかということがわかるだろう。

 王族に産まれた以上、自由に恋愛ができるとは思っていなかった。
 王族としての責務を果たすという点において、争いの歴史に終止符を打つという平和の象徴になれるのだから、これ以上の幸福はないだろう。

 嫁ぎ先は我が国の民を殺してきた国の王族であり、まず間違いなく過酷な未来が待ち受けているはずだ。
 なにせ相手からしたら私は、家族を、仲間を殺してきた国の王族なのだから。

 だがもし、一縷の望みがあるとすれば。
 和平に応じた今代のラング王も、理知的な人物であるかもしれないということだ。
 そうであるならば、平和の象徴となる私に対して、過度に無体なことはしないだろう。
 そしてその子であり、私の婚約相手であるオネスト王子。
 未だ顔を合わせたことすらない相手ではあるが、ラング王の影響を受けて育ってきたとすれば、きっと誠実な人のはずだ。

 それが私の儚い願望なのだとしても。
 嫁ぐまでの短な間だけでも、一人の少女として夢を見ていたかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

処理中です...