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2.マインドコントロール
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「マインドコントロール……」
いつだってなにかが起こるときは突然だ。
ある日突然いじめられる日々が始まったように。
そしてある日突然、僕は現状を打開する方法に出会った。
それは偶然だった。
いつものように玲奈のパシリをしていたときだ。
今日はコンビニのスイーツが食べたいと、購買ではなくわざわざ近くのコンビニまで買い出しにいくことになった。
そのとき一緒に買ってくるよういわれた週刊誌を手にしたとき、たまたまその文字が目に入った。
記事の内容はカルトにはまった芸能人の末路を扱ったものだった。
タイトルから推測するに、マインドコントロールされたその芸能人が表舞台から姿を消したあと、カルトを盲信し破滅するまでが綴られているようだ。
この芸能人がカルトにはまったことついては僕もニュースで見たことがあるので知っていた。
だからその後どうなったかというのは少し気になったが、それよりも僕の気を引いたのはマインドコントロールという言葉だ。
破滅するまで人を操れるというのはどうも胡散臭いが、実際この芸能人の他にもカルトを盲信して身を滅ぼしたなんて人の話はよく聞く。
胡散臭いというだけで否定するのは性急だろう。
「もし須藤さんをマインドコントロールすることができたら……」
この辛い日々を終わらせることができるかもしれない。
それだけじゃない。
散々いじめられた仕返しだって……。
そんなうまい話があるわけない。
冷静な自分がそう警告するが、現状に疲弊していた僕はまともではなかった。
マインドコントロールという言葉が暗闇に射した一筋の光のように思えたのだ。
失敗したところで現状より悪くなることもない。
この日から僕の復讐が始まった。
◇
マインドコントロールというのは、相手への依存である。
僕はそう結論付けた。
「須藤さん、おはようございます」
「体育お疲れ様です。スポーツドリンクどうぞ」
「スクールバッグ持ちますよ」
「……なんか最近奴隷のくせに元気じゃない? キモいんだけど」
「気のせいですよ。
そんなことより、今日のお昼もミルクティーでいいですか?」
「いいけど……」
「それじゃあ買ってきます」
まず僕が始めたのは、積極的に玲奈と接触することだった。
これまでは玲奈に声をかけられるのをビクビク待っていた。
しかし、それをあえてこちらから積極的に動くことで玲奈との接触回数を増やし、玲奈の一日における僕といる時間を長くした。
正直苦手な相手に積極的に話しかけるのは苦痛だったが、現状を脱し復讐をするという目標を立てたお陰か、自分でも不思議なほどにくじけることなく頑張ることができた。
接触回数を増やすといっても、やっているのはこれまでと同じようにパシリをしているだけだ。
だが僕といるときは楽できる、僕がいないと自分でやらなくてはならないので面倒だと思わせていくのが目的なのでそれで問題ない。
作戦はそれだけではない。
「早乙女さんて数学得意なんですね。成績上位者に名前があってビックリしました!」
「そうか? 数学は公式さえ覚えれば、あとは数字を当てはめるだけだから楽なんだよ」
「いえいえ、すごいですよ! 僕なんか公式を覚えても、どれを使ったらいいかわからなくなっちゃって」
「ふーん、そんなもんか」
「……ねえ響、テストの話なんかより、今日帰りにカラオケ行かない?」
僕と響の会話を中断するように玲奈が割ってはいる。
どこか不満げな玲奈の姿を見ながら僕は内心せせら笑った。
これも作戦のひとつである。
玲奈が一人でいるときは、積極的に玲奈へと話しかける。
しかし、玲奈と響が一緒にいるときは、響に話しかける頻度を多めにしているのだ。
積極的に玲奈と接触しているだけでは、いつまでたっても玲奈のなかでの僕は何でもいうことを聞く便利な奴隷のままである。
そこであえて響にも従順であるという姿を見せつけることで、僕が玲奈のためだけに動く存在ではないことを印象づける。
これが響以外だと「なに勝手に人の奴隷を使ってるんだよ」と、玲奈の一喝で現状を破壊されてしまう可能性があるが、友人であり、僕を奴隷にするきっかけになった響相手なら玲奈も強く出ることはない。
玲奈にできるのは精々話を遮ることくらい。
それだってあまり不自然にやりすぎてしまえば、響から不審に思われてしまう。
自分の奴隷なのに、どうして他人を構うのか。
そんな釈然としない気持ちが少しずつ玲奈の中に積もっていく。
いつだってなにかが起こるときは突然だ。
ある日突然いじめられる日々が始まったように。
そしてある日突然、僕は現状を打開する方法に出会った。
それは偶然だった。
いつものように玲奈のパシリをしていたときだ。
今日はコンビニのスイーツが食べたいと、購買ではなくわざわざ近くのコンビニまで買い出しにいくことになった。
そのとき一緒に買ってくるよういわれた週刊誌を手にしたとき、たまたまその文字が目に入った。
記事の内容はカルトにはまった芸能人の末路を扱ったものだった。
タイトルから推測するに、マインドコントロールされたその芸能人が表舞台から姿を消したあと、カルトを盲信し破滅するまでが綴られているようだ。
この芸能人がカルトにはまったことついては僕もニュースで見たことがあるので知っていた。
だからその後どうなったかというのは少し気になったが、それよりも僕の気を引いたのはマインドコントロールという言葉だ。
破滅するまで人を操れるというのはどうも胡散臭いが、実際この芸能人の他にもカルトを盲信して身を滅ぼしたなんて人の話はよく聞く。
胡散臭いというだけで否定するのは性急だろう。
「もし須藤さんをマインドコントロールすることができたら……」
この辛い日々を終わらせることができるかもしれない。
それだけじゃない。
散々いじめられた仕返しだって……。
そんなうまい話があるわけない。
冷静な自分がそう警告するが、現状に疲弊していた僕はまともではなかった。
マインドコントロールという言葉が暗闇に射した一筋の光のように思えたのだ。
失敗したところで現状より悪くなることもない。
この日から僕の復讐が始まった。
◇
マインドコントロールというのは、相手への依存である。
僕はそう結論付けた。
「須藤さん、おはようございます」
「体育お疲れ様です。スポーツドリンクどうぞ」
「スクールバッグ持ちますよ」
「……なんか最近奴隷のくせに元気じゃない? キモいんだけど」
「気のせいですよ。
そんなことより、今日のお昼もミルクティーでいいですか?」
「いいけど……」
「それじゃあ買ってきます」
まず僕が始めたのは、積極的に玲奈と接触することだった。
これまでは玲奈に声をかけられるのをビクビク待っていた。
しかし、それをあえてこちらから積極的に動くことで玲奈との接触回数を増やし、玲奈の一日における僕といる時間を長くした。
正直苦手な相手に積極的に話しかけるのは苦痛だったが、現状を脱し復讐をするという目標を立てたお陰か、自分でも不思議なほどにくじけることなく頑張ることができた。
接触回数を増やすといっても、やっているのはこれまでと同じようにパシリをしているだけだ。
だが僕といるときは楽できる、僕がいないと自分でやらなくてはならないので面倒だと思わせていくのが目的なのでそれで問題ない。
作戦はそれだけではない。
「早乙女さんて数学得意なんですね。成績上位者に名前があってビックリしました!」
「そうか? 数学は公式さえ覚えれば、あとは数字を当てはめるだけだから楽なんだよ」
「いえいえ、すごいですよ! 僕なんか公式を覚えても、どれを使ったらいいかわからなくなっちゃって」
「ふーん、そんなもんか」
「……ねえ響、テストの話なんかより、今日帰りにカラオケ行かない?」
僕と響の会話を中断するように玲奈が割ってはいる。
どこか不満げな玲奈の姿を見ながら僕は内心せせら笑った。
これも作戦のひとつである。
玲奈が一人でいるときは、積極的に玲奈へと話しかける。
しかし、玲奈と響が一緒にいるときは、響に話しかける頻度を多めにしているのだ。
積極的に玲奈と接触しているだけでは、いつまでたっても玲奈のなかでの僕は何でもいうことを聞く便利な奴隷のままである。
そこであえて響にも従順であるという姿を見せつけることで、僕が玲奈のためだけに動く存在ではないことを印象づける。
これが響以外だと「なに勝手に人の奴隷を使ってるんだよ」と、玲奈の一喝で現状を破壊されてしまう可能性があるが、友人であり、僕を奴隷にするきっかけになった響相手なら玲奈も強く出ることはない。
玲奈にできるのは精々話を遮ることくらい。
それだってあまり不自然にやりすぎてしまえば、響から不審に思われてしまう。
自分の奴隷なのに、どうして他人を構うのか。
そんな釈然としない気持ちが少しずつ玲奈の中に積もっていく。
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