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8.ご主人様

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「……今日のお願いはもう終わってるけど、今新しくお願いしてもいい?」

「ええ、いいわよ」

 百合の声質が変わった。
 緊張しているような、それでいて期待しているようなそんな声だ。
 今の俺にできることは、その期待に応えることだろう。

「なら、早速お願いをするよ。まず、ビデオ通話に切り替えて」

「わかったわ」

 少ししてスマホの画面が切り替わる。
 するとそこには、一面の肌色が映し出された。

「ちょ、泉堂さん!? なんでなにも着てないの!?」

 柔らかそうな双丘。
 その頂に咲いている淡い桃色の蕾。
 それらが一切隠されることなく俺の目に飛び込んでくる。

「私、自分の部屋では裸族なのよ。それに、どうせこの後脱がされるんでしょう?」

「確かにそのつもりだったけど……」

「ならいいじゃない」

 なんだろう。
 リリとして接していた頃も、中身は今と同じ百合のはずなのに、何かが違う気がする。
 このお願いでこの時だけでも主導権を握ってやろうと思ったのに、完全に俺の方が遊ばれている。

「まあいいや……。泉堂さん、そのままオナニーして見せてよ。それが次のお願い」

「っ!」

 百合が息を飲むのがわかった。
 平然と胸をさらけ出す百合でも、自慰を見られるということには羞恥を感じるらしい。
 その頬はみるみるうちに赤く染まっていった。

「わかったわ」

 百合はスマホを置くと、少し離れて全身が映るように床に座った。
 膝を立て、脚を開くようにしているため、先程まで見えなかった陰毛と、その下の秘裂まではっきりと映っている。

「んっ……」

 百合の左手が右の胸へと伸びる。
 白く滑らかな膨らみを優しく包み込むように、細い指が沈み込んでいく。

 指の間には、ツンと突き出た淡い桃色の蕾が顔を覗かせている。
 柔らかそうに形を変える胸の動きに合わせて宙をさまよう乳頭。
 まだ直接刺激を与えられたわけでもないのに、それはすっかり勃ち上がっていた。
 百合は俺に裸体を、自慰を見られて快感を得ているのだ。
 
 右の手は下半身へと伸びていた。
 けっして激しい動きではない。
 割れ物を扱うように、優しく表面をなぞるような手つきだ。
 刺激としては、たいしたことはないだろう。
 しかし、己の感じるところを的確に捉えているのか、時折腰が震えているのがわかった。

「くぅっ……、ふぅ……、っ」

 次第に百合の吐息が熱を帯始めてきた。
 羞恥によって赤く染まっていた頬は、自慰によってもたらされる快楽により、いっそうその色味を増していく。
 潤んだ瞳は懸命にカメラの方を見ようとしているが、無意識に顎が上がってしまい、画面越しに俺と視線が重なる時間が減っていく。

 ひとしきり右の胸を揉んだ百合は、隣の膨らみへと標的を変える。
 左の胸を優しく包み込み、右と同じように揉み始めるかと思った。
 しかし、百合は俺の予想を軽く越えてきた。

 なんと、左胸を持ち上げると、自身の乳頭に口をつけたのだ。

 舌を伸ばし、チロチロと桃色の蕾を弾く。
 硬くしこり勃った乳首は舌に翻弄されながらも、さらにその存在を主張するように大きさを増していく。
 唾液に濡れたそれはテラテラと室内灯を反射し、まるで宝石のように輝き始める。

「ちゅぱっ、ちゅっる、ちゅうぅぅぅっ!」

 水音を立てながら、百合が己の乳房に吸い付く。
 口の中ではきっと執拗に乳首を攻め立てているのだろう。
 その激しさを伝えるように、持ち上げられた左の乳肉が波打っているのが見える。

 その淫靡な光景を眺めていると、ふとあるものが目についた。
 左乳房の下、付け根の部分にポツンと一つの黒子があったのだ。
 本来ならたとえ全裸になろうとも見えることのない位置。
 それがこうして乳房を持ち上げたことによってその姿を現した。

 あの位置だ。
 もしかしたら百合自身ですら存在を知らないのではないだろうか。
 本人すら知らない身体の秘密を、俺は知っている。
 そう思うと、えもいわれぬ興奮が沸き上がってきた。

 初めは緩やかだった右手の動きも、次第に情熱的になっていく。
 親指で皮の上から肉豆を弾きつつ、中指は肉壺の中へと挿入されていた。
 出し入れされる中指の動きに合わせて、ピチャピチャと粘度の高い水音が混じり始める。

「あっ……、ああっくぅっ……」

 脳を揺さぶるような艶かしい声がスマホから流れてくる。
 百合の瞳は固く閉じられ、もう俺と視線が合うことはない。
 内から溢れそうな何かに堪えるように、それでいてその何かを待ちわびているかのように。
 時折震える身体をただひたすら慰める。

「はあっ……、はあっ……、ふうっ」

 百合の右手はコクコクと溢れ出す蜜液によって既にべっとりと濡れていた。
 膣へと潜る指は、いつの間にか二本に増えている。
 快楽を貪るために、自身の良いところを刺激し続ける百合。
 己の情欲に屈し、クラスメートの男の前で自慰に更けるその姿には、いつもの優等生である百合の凛々しさは欠片も見られない。

「イクときは教えてね」

「ふっ……、は、はいっ……!」

 雌の声を上げながらも、俺の問いに答える百合。
 これだけ乱れていながらも、俺の存在は忘れていなかったらしい。

 それも当然か。
 既に一片の疑いもなく、百合は見られることに興奮を覚える人種なのだ。
 今この場で唯一のギャラリーである俺の存在を忘れるはずがない。

「はあっ、そ、そろそろイキそう……っ!」

 ラストスパートに入った百合の手が激しさを増す。
 その手つきには、初めの割れ物を扱うような優しさはなかった。
 白い手から溢れる豊乳を揉みしだき、硬く張り詰めた乳首を捻り上げる。

 肉豆もすっかりその顔を覗かせていた。
 桃色の真珠のようなそれを、こねるように親指の腹で刺激する。
 皮の上から刺激するのとは訳が違うのだろう。
 少し指が動く度に、まるで電流に貫かれたように百合の身体が跳ねる。

 ぱっくりと二本の指を咥えた肉壺も、既に頂へと至るための準備を始めていた。
 雄の物だと勘違いをしているのか、キュッと百合の指を締め付けている。
 しかしそれは指の動きを止めるためのものではない。
 溢れ出る蜜液は潤滑油としてその効果を発揮し、いやらしい音と共に指は滑らかにピストン運動を繰り返す。
 膣を締め付けることにより、指の刺激をより鮮明に感じているのだ。

「はあっ、はあっ、はあっ!」

 上気し、うっすら汗ばんだしみ一つない肌。
 ぺったりと額に貼り付いた前髪。
 掌からこぼれる豊乳。
 その頂にある小さめの乳輪と、痛いほどにしこり勃った唾液まみれの乳首。
 滑らかな曲線を描くウエスト。
 左右に開かれた肉付きの良い脚。
 薄く茂る灰色の陰毛。
 真珠のような陰核。
 肉厚で、幼さを残しながらも雌であることを主張する女陰。

 俺はその全てを脳に焼きつけるように、スマホへとかじりつく。

 そしてその時は来た。

「イクッ……、はあっ、イクッ、イックうぅぅぅぅぅっー!」

 ビクン、ビクン、ビクン――。
 腰が持ち上がり、大きく何度も百合の身体が跳ねる。
 頂へと至った己の身体を、百合は力一杯抱き締めていた。
 胸は大きく揺れ、指が抜かれたにも関わらず肉壺はパクパクとその口を動かしていた。

 やがて腰が床に落ちると、股座からはシャーッと黄金のゆばりが噴き出した。

「はあ……、はあ……、はあ……」

 よほど深い絶頂だったのだろう。
 失禁姿を晒しているというのに、百合がそれを気にかける様子はなかった。

 尿が床を叩く音だけが響く。
 溜まっていたのか、思いの外放尿時間は長かった。

 最後にぴゅっ、ぴゅっと残りを噴き出すと、数十秒にも渡る放尿が終わった。

 静寂の中に、百合の荒い息遣いだけが聞こえる。
 今目の前で繰り広げられていた百合の痴態に、俺は声を出すことができなかった。

 最初に沈黙を破ったのは百合だった。

「どうだった、かしら?」

「……凄く良かった。めちゃくちゃエロかったよ」

「なら良かったわ」

 絶頂の余韻に浸っているのか、少し惚けた様子の百合が笑みを浮かべた。

 既にお願いは終了したというのに、未だに百合は局部すら隠すことなくスマホの向こうにいた。

「これからよろしくね、泉堂さん」

「はい、ご主人様!」

 おどけたように百合が言った。
 ご主人様、か。
 いったいどちらが本当のご主人様なのだろうか。

 俺は百合の裸体を眺めながら苦笑した。
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