【R18】同級生のエロアカをみつけたので、いろんな「お願い」をすることにした

黒うさぎ

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1.最初のお願い

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 それは偶然だった。
 俺――斉賀涼はいつものように目的もなくSNSを眺めていた。
 すると、あるエロアカが目についたのだ。
 リリと名乗るそのアカウントは、特別珍しいものでもなかった。
 顔は見せず、下着姿の画像を上げているだけのものである。

 光の加減とか、ポーズとか画像を良く見せようとするための工夫がなにひとつされていない、素人丸出しの自撮り。

 確かにリリのスタイルは良かった。
 ブラに収まる白い胸は深い谷間を作っていたし、腰は滑らかな弧を描いていた。
 だが今どきネットを探せば、無修正の性器だって簡単に見られるのだ。
 顔出しもせず、扇情的なポーズでもなく、写りも悪い下着姿は、それほどそそるものでもなかった。

 実際、その投稿はあまり伸びていなかった。
 いいねの数も二桁止まり。
 本来人に見せるべきではない下着姿を晒して、見返りとして得られたのはたったそれだけだ。
 リリが何を考えて下着姿の自撮りをしたのかはわからないが、エロアカだってそんな簡単なものではない。
 ただ下着姿を晒せば、皆が見てくれると思ったら大間違いだということを理解したことだろう。

 しかし、そんなことはどうでも良かった。
 俺がこのありふれた自撮りに目を奪われた理由。
 それはリリの背後に写っている壁に、うちの高校と同じ制服がかかっていたからだ。
 襟元にうちの校章までしっかりついているから、まず間違いないだろう。

 顔さえ写らなければ大丈夫だと思ったのだろうか。
 それともそこまで考えが至らなかったのか。
 どちらにせよ、脇の甘いことだ。

 赤いリボンということは、俺と同じ二年生なのだろう。
 同級生の中に、この下着姿を晒した女がいる。
 そう思うと、このありふれた画像も特別な意味を持ってくる。

 俺はすかさず画像を保存すると、以前使用していたスマホでSNSの捨て垢を作成。
 早速リリのアカウントへダイレクトメッセージを送った。

「スタイル良いですね! やっぱり東林丘高校の生徒は違うなあ~!」

 かなりストレートな文面だ。
 俺はお前の通っている高校を知っているぞ、という脅しに近い言葉。
 さて、リリはどう反応してくるか。

 ドキドキしながら待っていると、しばらくしてリリに動きがあった。
 俺からのメッセージを見たのだろう。
 リリが件の下着画像を削除したのを確認した。
 ただ、アカウントはそのままだし、俺のアカウントも返信こそないがブロックもされていない。
 リリもどうすれば良いのか迷っているに違いない。

 俺はリリの反応を見て、つけ入る隙があると確信した。

「折角綺麗な身体をしてるのに、消しちゃうなんてもったいない! 東林丘の他の生徒にも見せてあげましょうよ。特に二年の男子連中は喜ぶんじゃないですか? 同級生の下着姿ですし」

 再びメッセージを送る。
 学年まで把握しているぞとほのめかす。

 だが、そこまでだ。
 下着画像以外に画像はなかったし、プロフィールにも身元を特定できるような情報はなかった。
 警察のようなプロならともかく、素人の俺がこれ以上リリの素性に迫る手段はない。
 これでリリが俺を突き放したらそれで終わりだ。

 しかし、そうはならなかった。
 天は俺に味方したのだ。

「やめてください。失礼ですよ」

 なんとリリから返信が来たのだ。
 無視をすればそれで良いのに、わざわざ返信をしてきた。
 それはつまり、リリは俺という未知の存在を警戒しているということだ。
 もしかしたら俺がリリの正体を知っているかもしれない。
 だとしたら、無視をするのは悪手なのではないか。
 そんな疑念が俺との接触に踏み切らせたのだろう。

「代わりに私が見せてあげましょうか。
 あの画像は保存させてもらいましたし、印刷して校門にでも貼りつけておいてあげますよ。
 きっと皆喜びますよ」

「最低です。警察に言いますよ」

 すぐに返信が来る。
 さすがに警察に言われるのは俺だって困る。
 だが、本当に言う気があるなら、俺に宣言なんてせずにすぐに通報するべきなのだ。

 警察に通報するというのは、一般的な高校生にとってハードルの低い行為ではない。
 それに、事情を説明するとなると、確実に己の下着写真を警察に見せる必要が出てくる。
 リリとしても、それは避けたいことなのだろう。

「警察とは物騒ですね。
 もし通報されたら、私も自棄になってこの画像を本名と共に東林丘に送りつけるかもしれません。
 私の逮捕と引き換えに、あなたは全校の男子からいやらしい視線を向けられながら残りの学生生活を過ごすことになるでしょうね」

 本当はそんなことできない。
 俺はリリの正体を知らないのだから。
 ハッタリもいいところだ。

 だいたいどうしてこんなことをしているのか自分でもわからない。
 画像の背景にウチの制服が写っているのを見つけた瞬間に、思わず勢いで行動に移してしまったが、これは明らかに犯罪だ。
 いくら女っ気のない高校生活を送っているとはいえ、こんな脅迫をしてまで俺はこの女――リリをどうしたいのだろう。

 冷や汗が背筋を濡らす。
 こんな下らないことで警察のお世話になるなどあまりに情けない。
 ふと冷静な自分が語りかけてくる。
 今なら引き返せるぞ、と。

 しかし、引き返してどうなるというのか。
 またあの代わり映えのしない、平凡な日常に戻れというのか。
 折角こんな面白そうな玩具を見つけたというのに。

 リリがいれば、退屈な日常とおさらばできる。
 熱に浮かされた思考が良心を蝕んでいく。

 そしてどうやら、天はとことん俺に味方をしてくれるらしい。

「画像さえ消してくれれば、私も警察には言いません」

「いえ、警察に言っていただいても結構ですよ。
 こんなクソみたいな人生を続けるより、刑務所のほうがよっぽどいい生活ができそうだ。
 まあ、ついでにあなたも道連れにしますけどね」

 最高の人生だとは思わないが、刑務所のほうがマシだと思うほど悲惨な生活は送ってない。
 捕まるのなんて、まっぴらごめんだ。

 リリのメッセージが止まった。
 悩んでいるのだろう。
 本当に警察に捕まることを恐れない相手だったら。
 通報すれば、被害を受けるのは自分だけなのではないか。

 そんなわけないと、冷静になればわかるはずなのに、少しの疑念が徒に不安を膨らませる。
 そしてその不安が、ついに俺の求める言葉を引き出した。

「どうすれば画像を消してくれますか?」

 来た。
 この言葉を待っていたのだ。
 話の主導権を握り、リリの正体を突き止めるための一手。

「そうですねえ。ではこうしましょう。
 明日の月曜日から金曜日までの五日間、毎日一つリリさんにお願いをします。
 リリさんがそのお願いを聞いてくれれば、土曜日に画像は消しましょう。
 それに、今後リリさんに関わらないとお約束します。
 ですが、もし途中でお願いを聞いてくれないようでしたら、そのときはあなたの下着姿が学校中に晒されると思ってください」

 またリリからのメッセージが途切れる。
 そしてしばらくして返信が来た。

「わかりました。その条件を飲みます。
 ですが、あなたのお願いがリスクに見合わないと判断した場合、すぐに警察に通報しますから」

 リリなりの牽制なのだろう。
 こちらに主導権を譲っている段階で、その牽制が意味をなすとは思えないが。

「もちろんそれで構いません。
 では早速、明日のお願いを聞いていただきましょうか。
 そうですねぇ、リリさんの持っているヘアゴムを全て見せてもらってもいいですか?」

 少ししてヘアゴムを並べた画像が送られてくる。

「ありがとうございます。
 それでは一つ目のお願いを発表します。
 リリさんは明日から金曜まで、その緑色のヘアゴムをして登校してください。
 証拠として朝、昼、晩の三回、ヘアゴムをつけている画像を送ってくださいね」

 俺は画像に写っているヘアゴムの中から、編み込みのある、明るい緑色をしたヘアゴムを選んだ。

「ヘアゴムをつけて生活するだけでいいんですか?」

「ああ、画像を撮るときだけつけるなんてズルは駄目ですよ。
 もし私がヘアゴムをつけていないリリさんを見かけたら、即座に例の画像が公開されることになりますので」

「そんなことはしません。
 それより、一日一つしかお願いをしないというのなら、あとから別のお願いを追加したりしないですよね?」

「追加のお願いなんて出しませんよ。
 私はリリさんのような綺麗な人が、私のお願いを聞いてくれるというだけで嬉しくてたまらないような人間なので」

 当然そんなのは嘘だ。
 最初のお願いをヘアゴムにした理由は二つ。
 一つは最初のお願いを簡単にし、そこから徐々に難しいものにしていくことで、後々のお願いを受け入れやすくするため。

 そしてもう一つは、リリの正体を突き止めるためだ。
 リリが東林丘高校の二年生であることまではわかった。
 しかし、二年生だけでも一クラス四十人で六クラスある。
 ちょうど半数が女子だとしても、リリの候補は百二十人にものぼる。
 おおよその体型などからもう少し絞り込めるかもしれないが、特定までは難しいだろう。
 そこでヘアゴムだ。
 明日、俺の指定したヘアゴムをした女子がいた場合、そいつがリリであるというわけだ。
 ヘアゴムはリリの持っているものの中からなるべく明るくて、目立つものを選んだ。
 偶然同じヘアゴムをつけている奴がいる可能性もゼロではないが、考慮するほどの確率でもないだろう。

「五日間だけですから。約束はちゃんと守ってください」

「もちろんです。これから一週間よろしくお願いしますね」

 俺はスマホを眺めながら口角を上げた。
 楽しく、刺激的な一週間になりそうだ。
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