【R18】紅音~俺の彼女には男の幼馴染がいる~

黒うさぎ

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1.紅音と幼馴染み

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「おはよう、翔太くん」

 鈴の音のような優しい声色。
 後ろから聞こえたその声に、俺は振り返る。
 そこには声の主、榎本紅音えのもとあかねがいた。

 背中まで伸ばした、艶やかな黒髪。
 切れ長の眉に、涼しげな瞳。
 筋の通った鼻と瑞々しい唇。

 学年一の才女であり、そして俺の彼女。

 俺――紫藤翔太しどうしょうたは高校二年にして初めて彼女ができた。
 きっかけ、というほどのものはない。
 入学して同じクラスの隣の席になった。
 それ以降、いくら席替えをしても、必ず俺と紅音は隣の席になった。

 そんな偶然のお陰で俺と紅音は次第に親しくなり、二年の文化祭のときに俺から告白。
 紅音は驚いた顔をしていたが、笑顔で承諾してくれた。

 正直、紅音は俺にはもったいない彼女だと思う。
 整った容姿をしており、成績もトップレベル。
 真面目で教師陣からの信頼も厚い。
 それに比べて、俺は全てにおいて平均程度。
 何度も隣の席になるという偶然さえなければ、友達にすらなることはなかっただろう。

 とはいえ、紅音に選ばれたのは俺だ。
 俺が紅音の彼氏なのだ。
 今は不釣り合いだったとしても、いつかは隣に立ち、紅音を支えられる男になりたいと思う。

「おはよう」

 俺は右手を差し出す。
 微笑んだ紅音がすかさず手を重ねてきて、そのまま握り合う。
 柔らかく小さな手の温もりを感じる。

 彼女と手を繋いで登校。
 付き合い初めてしばらく経つが、未だにこそばゆいものがある。
 しかし、それを含めて紅音と付き合っているのだという実感が俺を満たしてくれていた。

 幸せだった。
 紅音と一緒にいられるだけで、心が温かくなる。
 今はまだ学生だが、このまま交際を続けていけば、いずれ結婚なんて未来もあるかもしれない。
 能天気かもしれないが、俺の思い描く紅音との未来は輝いていた。
 ……ある一点を除いて。

「よう、お二人さん! 朝からお熱いねぇ」

 背後から一人の男が俺達二人の肩に腕を回してきた。

「……おはよう、流也」

 小森流也こもりりゅうや
 一八〇センチオーバーの長身に、サッカーで鍛えられた体躯。
 陽気な性格に端正な顔立ちも相まって、女子人気も高いと聞く。
 そして俺にとって最も見逃せない要素。
 それは、流也が紅音の幼馴染みであるということだ。

 俺は流也が苦手だ。
 ただ単に紅音の幼馴染みだというだけなら、ここまで苦手意識を持つこともなかっただろう。
 異性の幼馴染みというだけで敵視するほど、俺も狭量ではない。

 しかし、流也と紅音の関係は、ただの幼馴染みと割り切るには些かいきすぎていた。

「はあ~~~っ、やっぱ紅音の胸は落ち着くわ」

 流也は肩に回した右手で、紅音の豊満な胸を揉みしだいていた。
 骨ばった大きな手の中で、紅音の柔肉がその姿を変える。

「まったく流也は、いつになっても子供なんだから……」

 彼氏の隣で別の男に胸を揉まれている。
 そんなありえない状況にいるというのに、紅音は一切慌てる素振りすらみせない。
 手を払いのけるどころか、流也の振る舞いをされるがままになって受け入れている。

「男なんて皆子供みたいなもんなんだよ。
 別に減るもんじゃないんだしいいだろ」

「あんたも少しは翔太くんを見習って大人になりなさいよ。
 ねぇ、翔太くん?」

「あ、あはは……」

 俺は苦笑いしかできなかった。

 何度か紅音に、流也との関係を見直してくれないかと頼んだことがある。
 いくら幼馴染みとはいえ、今は俺という彼氏がいるのだ。
 あまり異性と過度なスキンシップをして欲しくない。
 そう伝えた。

 しかし、紅音は俺の要望を真面目に取り合ってくれなかった。
「流也は昔から人懐っこくて」
「子供のやることだから」
 そんな感じで毎回流されてしまうのだ。

 紅音と流也は家が隣同士であり、生まれた頃から家族ぐるみの付き合いだという。
 ほとんど家族同然の環境で育ったためか、紅音は流也のことを異性としては見ていない。
 しかしその一方で、流也のすることに対してはどこまでも寛容だった。

 普通、いくら幼馴染みであろうと、付き合ってもいない女子の胸を揉んだりはしない。
 だが、紅音にとってその程度のことは幼馴染みのスキンシップの一環に過ぎないのだ。

 あまりに歪な関係。
 本当なら、彼氏の俺がもっと強気になるべきなのかもしれない。
 俺の彼女に手を出すなと、流也に詰め寄るべきなのだ。

 しかし、俺にそんな度胸はなかった。
 単純に俺より身体のでかい流也が恐いというのもある。
 だがそれ以上に、紅音に対して抱いている劣等感。
 俺なんかと付き合ってもらっているという思いが、紅音に対して強く出ることに抵抗感を抱かせていた。
 紅音が受け入れている流也の振る舞い。
 本人がよしとしているのに、俺が横から口出しをすることなどできなかった。

「そんなにツンツンすんなよ。紅音だって気持ちいいんだろ。
 ほら、乳首硬くなってるぞ」

 流也が二本の指で胸の一部を摘まんだ。

「んっ……、ちょっとそんなに強く摘ままないでよ」

 紅音の口から少し熱っぽい声が漏れる。
 紅音はワイシャツだって、そしてその下にブラだって着けているはずだ。
 そう簡単に乳首の位置などわかるはずがない。
 だというのに、流也は一発で紅音の乳首を探し当てた。
 それは紅音の反応を見ても間違いないだろう。

 流也はなんてことないように二本の指を擦り合わせるようにして、その間に挟まっているのであろう肉片を刺激する。
 まるで紅音の身体のことなど、全て知っているかのように。

「んっ……」

 俺はその小さく漏れた声を聞き逃さなかった。
 取り繕ってはいるが、いつもより笑顔がぎこちない。
 流也ほど付き合いは長くないかもしれないが、俺だって紅音の彼氏なのだ。
 たとえわずかな変化であろうと、見逃したりはしない。

 ほんのり赤見が差した頬。
 なにかを耐えるように噛み締められた下唇。
 強く握り返してくる右手。

 それなりに人通りのある通学路。
 そんな場所で、俺の彼女は白昼堂々胸を揉まれている。

 制服を押し上げる豊かな乳肉。
 骨ばった大きな手が、指を食い込ませるようにそれを揉みしだく。

 緩急をつけるように、時折ある一点を摘まむようにすると、紅音の肩がピクンと小さく震えた。

 俺は横目にその様子を眺めることしかできない。

「さて、紅音の胸も堪能したし、俺はそろそろいくわ。んじゃあな」

 ひとしきり弄んで満足したのか、流也が紅音の胸を解放する。

「きゃっ!」

 去り際に紅音の尻を一揉みした流也は、俺達を追い越して行った。

「まったくもう、馬鹿なんだから」

 溜め息をつく紅音。
 口では罵倒しているものの、その表情に怒りの色は見えない。
 そどころか、微笑ましいものを見るような、温かな視線を離れていく流也の背中へと向けている。

 俺はそんな紅音の表情を見て、胸の底にドロリとしたものが溜まるのを感じた。
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