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4.胸

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「あとは自分で洗うよ」

「僕がやるから、雪乃姉ちゃんは座ってて」

 私がやると言っても、宏人は自分で洗いたいらしい。
 流石にこれ以上は恥ずかしいのだが、折角お手伝いをしてくれている宏人の親切心を無下にするのは申し訳ない。
 相手はまだ子供だ。
 少しくらい恥ずかしくても、しっかりその優しさを受け入れてあげるべきだろう。

 泡で覆われた宏人の手が鎖骨にかかる。
 優しく丁寧に洗いながら、その手は少しずつ下りていく。
 そして両の胸へと触れた。

「っ!」

 まるで割れ物を扱うように宏人の手は優しい。
 豊かな双丘の表面を撫でるように手が滑っていく。
 上部を撫でた手は横乳を通り、乳房を下から掬うように動いていく。
 宏人は円を描くように胸を洗っていった。

「高校生になると、みんな雪乃姉ちゃんみたいにおっぱいが大きくなるの?」

「んっ……、それは人によるかな。
 身長だって背の高い人もいれば、低い人もいるでしょ。
 それと同じだよ」

「そっか」

 宏人は丹念に胸を洗っていた。
 その丁寧さは宏人のいいところなのだろうが、今だけはあまり歓迎できなかった。

 泡だらけの手で優しく何度も何度も胸を撫でられる。
 その焦れったいような弱い刺激は、少しずつではあるが確実に雪乃の中に行った快楽を蓄積していた。
 相手は弟のように可愛がっている宏人であり、これは胸を触られたことによる生理的反応であることは十分にわかっている。
 しかし、雪乃も多感な女子高生だ。
 どれだけ優等生であろうとも性欲はあるし、いやらしい気持ちにもなる。
 彼氏の弟を前にこんな気持ちを抱いてしまう自分が少し嫌になりそうだった。

 だが、こんな気持ちになるのは、宏人にも責任があると思う。
 これだけ丁寧に胸を洗っているというのに、未だに乳首には一度も触れていないのだ。
 まだ直接刺激をされていないというのに、すっかり硬くしこり勃ってしまっている桃色の蕾。
 まさかその変化に宏人が気づいているはずもないが、これだけ触れられないとわざと焦らされているのではないかと思いたくもなる。

「乳首も触って」と言ってしまいたい気持ちをどうにか抑え込む。
 私がこんなに葛藤しているというのに、当の本人は楽しそうに胸を洗い続けており、少しだけ憎たらしい。

「そういえば雪乃姉ちゃん」

「どうしひうっ!」

 それは油断だった。
 なんの前触れもなく、いきなり宏人の手が乳首に触れたのだ。
 いや、宏人からしたら順番に洗っているだけなのかもしれないが、私からしたら突然の刺激であったことに変わりはない。

 不意に襲った、痺れるようなその感覚に、思わず甘い声が漏れる。

「どうしたの、雪乃姉ちゃん?」

 心配そうに顔を覗き込んでくる宏人。
 宏人に乳首を触られて感じてしまったなどと言うわけにもいかず、「なんでもないよ」と誤魔化す。
 その間も宏人は乳首を洗い続けていた。

 親指と人差し指の腹で優しく挟み、表面を擦すりあげる。
 けっして強い刺激ではない。
 だというのに、そこからもたらされる痺れは私に切なさを与えた。

「雪乃姉ちゃんっておっぱい洗ってると、いつも乳首が大きくなるけどどうして?」

「っ! そ、それは……」

 バレてた。
 まさか気がつかれていたなんて。

 だがどうする。
 宏人に胸を揉まれて感じていたなんて言うわけにもいくまい。
 そもそも、まだ精通もしていないだろう宏人に感じるという言葉の意味を理解できるとも思えない。

「……宏くんに洗ってもらうのが気持ちいいからかな」

「気持ちいいと乳首が大きくなるの?」

「そうだよ」

 嘘ではない。
 宏人は私の身体を洗っているだけだし、私はそれを気持ち良く思っている。
 ただ、その気持ち良さが性的なものであるということを伏せただけだ。
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