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239話 ルティスタ 2

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 ルティスタ、暮らしていた頃に利用していた安宿ではなく、商業ギルド隣の、小さな街でも一等地にあたる場所にある高級宿の一室。


「でリルトよ、この街で何をする気なんじゃ?」

 お茶を一口飲んでファル爺が問いかけ、皆の視線も集まる。

「とりあえずは2つ。
 一つは今日飛空艇で降りた脇にあった真っ黒い森、あそこがフィールドダンジョン"夜の森"なんだけど」

「ぁあ、ちらっと聞いたな、ボスしかいない特殊なダンジョンだったか?」

「そう。
 王都で頼まれてあそこの調査に協力するはずだったのに、半年も寝ちゃって延期。
 起きて今度こそと思ったら"人種差別エルフ"に絡まれてまた無期延期。
 まぁ、ボクのせいじゃないんだけど気になっててね、せめてボスの生態調査でも提出したいな、って思ってるんだ」


「でも…前にダンジョン学の教授と話してた時は、あんまり乗り気じゃなかったわよね?」
 レシアナさんが訊ねる。

「確かにあの時はね。
 "位相転移"がちゃんと発動して、ちゃんと効果があるか不安だったから。
 でもこの間、アリルメリカのウルリッヒ王に対して"位相転移"を使ったらちゃんと効いてた。
 ウルリッヒ王はレベル116…だったよね?」

「はい、以前聞いた時はそうでした。
 そのレベルだとそう簡単にはレベルは上がらないでしょうし、政務の合間にレベル上げは無理ですから、たぶん今も116だと思います」
 リーチェさんが答える。

「ボクのレベルが今43。
 倍以上レベルが離れてても効くんだから、たぶんレベルやステータス差で破られる事は無いと思うんだ。
 まぁ冒険の一環だから手は借りたくないけど、もしも隠密が破られるような事があれば躊躇ちゅうちょなく精霊達の力も借りるつもりだから」

「ナ~ン」

 一鳴きしたエレを撫でる。
〘エレスマデュアもその時はよろしくね?〙
〘もちろんでございます、リルト様〙


「なるほどね、確かに今なら安全策も十分か…」
 レシアナさんが頷く。


「で、もう一つは何ですか?」
 大司教が訊ねる。

「今、計画中な事が一つあってね、それには素材、建材もろもろ沢山必要なんだけど、特に金属素材がオルガスティアだとちょっと流通量に不安があってね。
 イシュタル…地精霊の娘に頼んだら鉱脈を見つけてくれたんだよ、それが"夜の森"の先にある"ベスティア山脈"の中ってわけ」


 以前、たしか冒険者ギルド長から聞いた話にあった、昔のゼニス伯爵が探していた鉱脈がやっぱりあったらしい。


「まてまて、まずその"計画"とやらを言わんか」
 ファル爺がすかさず突っ込む。

「まだナイショ。
 というかまだどう転ぶかボクにも不明なんだ、確定したら教えるよ」

「…魔道具か?」

「含むけどそれだけじゃないかな?
 ちゃんと新しい魔道具作る時は声かけるから」

「それなら良い」

(…ファル爺は相変わらずブレないな)


「"ベスティア山脈"ですか…近隣にはオルガスティアしかありませんが、国内と言い張るには未開ですし、勝手に採掘しても問題は無さそうですね?」
 大司教が言う。

「いやいや、さすがにランドルフ王やマリウス宰相に相談済だよ。
 イシュタルが言うにはかなりの埋蔵量らしいから、ボクが"自由採掘権"をもらう代わりに後はオルガスティア、っていうかゼニス領で好きにしていい、って事で了解は得てるよ」

「そ、それは大盤振る舞いすぎませんか?」

「いいんだよ。
 国と隣接した鉱山なんて、一人で抱え込んだって後々問題になりそうだし、使い切れないだろうし」

「…まぁリルト様が納得済ならばよいのですが」


「リルト、"夜の森"のボスは倒さないの?」
 ポラリスが訊ねる。

「…う~ん。
 ボクが見たのはレベル15の時だから何とも言えないけど、たぶんボクらのレベルじゃまだ無理だと思うな。
 まぁ、まずは見てからだね」

「分かった」


 さて、明日は久しぶりのルティスタ冒険者ギルドだな。




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