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228話 ラスカリア 34
しおりを挟む「これは…けっこうヤバいなぁ…」
「だね」
オレの抑えた呟きにポラリスが応える。
ダンジョン"コボルドの古代地下街"、地下20階。
おそらく裏ルートの最終階層だと思われるここに存在していたのは、岩山の壁面をくり抜いて作られた石の城。
その奥は、かなりの数のアンデッドコボルド達が存在していた。
進行ルートが複数あり、戦闘中に他のルートからの増援があったりもして、それでも2パーティの殲滅力で進んで来たが、最奥と思われる箇所が見えて来ると全員の勢いが止まった。
通路から顔を出して見える広間は、中央に薄汚れたカーペットが真っ直ぐに引かれており、その終着点には玉座が鎮座していてそこに一体のアンデッドコボルドが座っている。
玉座の間にはその王と思われるコボルドしかいない代わりに、部屋の両側には壁面を覆い尽くす程のおびただしい数の骨が天井に届きそうなほど山のように積まれている。
今までの攻略中にもあった事だが、白骨の山が出来ている場所付近には必ず"アンデッドコボルド・ネクロマンサー"がいて、そのスキルにより白骨の山から"コボルドスケルトン"が生成され襲いかかってくる。
今までの攻略で見てきた骨の山は1~2mのもので、そこから1~3体くらいのスケルトンが生成された。
…今見えている玉座の間、5~6m程の高さの天井、2~30mはある奥行き。
一体どれだけのスケルトンが生成されるか検討がつかない…
「…やはり骨からは魔力を感じます。 おそらくほぼ全てが待機中のスケルトンです」
王宮魔法士のヨハスさんが言う。
「これ全部…何十、いえ百でもきかない?」
リーチェさんが呟く。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【アベンジャー・ギャウラス】
(アンデッドコボルド・ネクロマンサー)
レベル:54
種族:死族(獣魔)
スキル:生命察知・死霊魔法・邪王の号令
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
"死霊魔法"はアンデッド特化の召喚士系職業スキル。
死体からゾンビやスケルトン等の配下を生み出したり、墓場や戦場跡 等で彷徨う魂を隷属させゴーストを使役したりも出来る。
"邪王の号令"…"服従状態にある配下を強制使役出来る"と、オレのまだイマイチな鑑定には説明があるが…
効果がよく分からない。 既に使役されているアンデッドに使って意味があるのか?
(…オレが今レベル39、レシアナ以外のみんなはプラス10~15。…これは、ちょっと無理か)
「別に焦る攻略ではないですから、今回は一旦ここまでにして脱出しましょう。
街に戻って作戦を考えます」
ーーーーーーーーーー
「…アンデッドコボルドの王、ですか…」
教皇さんが呟く。
ラスカリアの拠点に帰り、食事中に見る物ではないので夕食後にお茶をしながら撮っていた動画を見る。
攻略中に撮影出来るようにカメラをイヤーカフスにして装備していたので、拠点メンバーにも探索を見せる事が出来る。
「この骨が全てスケルトンになるか…
流石に2パーティでは無理じゃろうな」
ファル爺が思案げに言う。
「そ、それなら私がお手伝いします、いや、させて下さい!」
教皇さんが立ちあがる。
「……」
一瞬の静寂。
「あ、あれ?」
教皇さんは皆の反応に戸惑っている。
「それじゃ、私達の攻略とはいえない」
ポラリスが呟く。
「あ…」
「まぁ、確かにソーレリスさんの神聖魔法の力を借りれば攻略は出来そうですけど…
それを言ったらボクの"娘達"の力を借りれば、コボルドの地下街どころか、世界中のダンジョンをあっという間に攻略出来ちゃいますよ?」
「…そう、ですね」
教皇さんはゆっくりと席に着く。
「生活の為に頑張ってる冒険者の人からすれば贅沢なんでしょうけど、ボク達は自分達の力で攻略したいんです。
ワガママ言ってすいません」
「いえ!リルト様が謝る必要はありません!
私が考え無しでした」
「いや、協力したいという気持ちは受け取りましたから」
「ありがとうございます」
「でも、実際手が足りないのはどうするの?」
レシアナが訊ねる。
「うーん…」
「相手はアンデッドですから、聖水を買い込む…あ、リルト様は自作出来るんでしたね」
大司教が呟く。
「聖水か…」
そういえば効果は試したが、その後は使ってなかった。
確かに聖水をかければ弱体化はするが、攻撃出来る時間を引き換えにして使用するほど効率がいいか、というとそれほどでも無いからだ。
聖水…弱体…使用…範囲…
「…いけるかも知れない…」
皆がこちらを見る。
「大司教、いいアドバイスだったよ。
これで攻略出来たかも」
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