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227話 ラスカリア 33

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 オレのストレージ内リビング。
 今は夕食を終え皆でお茶をしている。
 "一緒に戦ってくれる仲間"と認識したからか、瑠璃もリーチェさんとルーサさんの前でフルーツを食べている。

「はぁ~可愛いなぁ…」
「ピッ?」
 ルーサさんに見つめられ不思議そうに小首を傾げる瑠璃。


 出会った頃は無表情で虫っぽかった瑠璃も、オレ達と接してるうちにだんだんと表情や仕草が人間ぽくなってきた気がする。


「オセットさんとヨハスさんにお茶渡してきたわ」
 レシアナがストレージに入って来た。


 ラスカリアからウルリッヒ王と一緒に来た近衛騎士で獣人のオセットさんと魔法士のヨハスさんは、リーチェさんを守る為ラスカリアに残る事になりパーティを組んでいるんだけど、律儀にストレージの入口を守ると外で夜営している。

 ちなみにキリアムとかいう貴族っぽい騎士は、賄賂と脅迫で無理矢理この遠征に参加していた事が分かって、絶賛締め上げられてるらしい。



 夜営してる二人には、襲撃があったらストレージの中に来るように言ってあるから大丈夫だろう。


…ドスッ!


 レシアナがソファーに乱暴に座る。

「…で? 何なのポラリス?」
 隣のポラリスを睨む。

「……」

「今日一日、心此処にあらず、って感じで。
 リルトく…と連携も上手く出来てなかったし、何かあったの?」
 レシアナが詰め寄り、リーチェさんやルーサさんも困った顔で成り行きを見守っている。


「……その…」
 俯いていたポラリスが皆を伏し目がちに見渡す。
 と、一度大きく深呼吸すると顔を上げる。
 





「レシアナ!リーチェさんごめん!
 私、リルトと結婚する事になった!」





「…は?」


「「「…ええええぇぇー!!!??」」」
 オレ以外三人の声がハモる。


(何言って…ああ、ヤツか)


 に来て色々納得した、物語で起きるイベントと実際の違い。
 今回のは"起きなさそうだけど実際に起きる"イベントか。


 と、レシアナに服を掴まれて揺さぶられる。

「リルトくん!? どういう事! 結婚って何!?
 いつそんな事になったの?」


「…そ、そんな…ポラリスさんとの仲がそこまで進んでたなんて…」
 リーチェさんはソファーに身を投げ出して放心している。
「いや、何か話がおかしくない?」
 ルーサさんは冷静だ。


 オレはレシアナの腕を抑える。
「落ち着いて。 ポラリスの勘違いだよ」
「は? 勘違い?」

「…え?」
 ポラリスもオレの落ち着き具合に違和感を感じて困惑した顔をしている。


「…今朝、ボクが起きたら飲み過ぎて部屋を間違えたポラリスが隣に寝てたんだよ」

「「「え~!?」」」


「…ひ、ひょっとして…?」
「何も無いよ、ただ寝てただけ」


「「「…ほっ」」」
「?」
 三人は安心した顔で、ポラリスは首を傾げている。

「…え?じゃあ何でポラリスは結婚なんて?」
 レシアナが不思議そうにポラリスを見る。


「ポラリス、お父さんかお母さんに何か言われてたんでしょ?」
 オレはポラリスに訊ねる。

「…うん。パパが、
"男の人と一緒に寝たら結婚しなきゃいけなくなって、パパとママとは一緒にいられなくなっちゃうから気をつけるように"
って…」


「「「…何言ってるの?ポラリスのパパ…」」」
 三人はガックリしている。


 この世界には義務教育が無い。
 アリルメリカみたいな発展した国なら、貴族なんかに一定の年齢で決められた教育機関に入学する、等の決まりがあったりするけど、一般人は適用外だ。

 街では教会が簡単な読み書き計算なんかを教えてたりもするが、それだって家庭の事情が優先されて、全ての子供が通える訳じゃない。
 それに"一般常識"なんて科目は無い。

 インターネットもテレビも無い、新聞や雑誌も無い。
 そして、ポラリスみたいに旅暮らしなんてしてたら同世代の友達から知識を学び合う事も無い。


 結果として日本だったらあり得ないけど、間違った常識(…というか男親の変な予防線)が植え付けられてこういう勘違いが生まれるわけだ。


「ポラリス、ちょっとコッチに来なさい」
 立ち上がったレシアナが困惑した顔のポラリスを掴む。

「リルト、ちょっと向こうで話してくるわ」
「分かった」

(まぁ、男の前じゃ話しづらい部分もあるか)



ーーーーーーーーーー

…カチャッ

 女性陣の寝室のドアが開き皆が戻って来る。
 レシアナ以外の三人は顔が赤い。

(…レシアナ、どんだけエグい内容話したの?)


「常識を叩き込んで来たわ!」
 レシアナが腕を組んで自信満々に言う。


 と、ポラリスが進み出る。
「リルト、いきなり訳分かんない事言ってごめん」

「ううん。 お父さんはポラリスが心配だからそう教えたんだと思うよ。
 本当の事は分かった?」

「…うん、分かった…」

「分かったというか…分かりすぎたというか…」
 ルーサさんが顔を手であおぎなが言う。


「…レシアナ…」
「あはは、話してたらちょっと盛りがっちゃって」
「…まぁ別にいいけど…」


「良くない!」
 レシアナが急に声をあげる。

「は?」


「ポラリスの勘違いは解決したけど、ポラリスだけリルトきゅんと一緒に寝てズルい!」

「…ズルいって」


「だから今日はみんなで寝よう!」
 レシアナが高らかに宣言する。


「…何言って…」


 オレが反論する間もなくレシアナ以外の三人が素早く寝室に戻り、枕や布団を引きずって現れる。

(…ウルリッヒ王にバレたら殺されそうだなぁ…)




「まぁ、いいか…」



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