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224話 幕間 空船の守り人 4

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 着陸した"空船の守り人号"の船体後部が上下に開き、その開いた下部分を床にしてリルト達が中から現れる。
 リルトが中へ何か合図をすると床はそのままゆっくりと降下して地面に接地する。


「戻りました。 どうでした? "空船の守り人号"は?」
 リルトが皆に歩み寄りながら訊ねる。

「…やっぱり飛空艇作れたんだね?」
 ウルリッヒ王が訊ねる。


 リルトは答える前にワーディル老を見る。

「ある程度は話しておいたぞ」

「上手く作れる自信が無いタイミングでアリルメリカから話をもらって、その後に作れるようになってみたら、ファル爺が言うには性能が高すぎる、という事だったんで説明するより見てもらおうかと」


「…核は直せるんだよね?」

「…始祖王の偉業を称える記念、とかで何機か遺す。 という意味でなら直しますよ。

 ボクが手掛けるのにわざわざ安全性の低いモノを作る気にはなれませんから、直すのであれば以前の核は使いません」


「まぁ、それはそうだろうね。
 分かった、リルトくんが言うように1機は始祖様の作ったままで直してもらおう。
 それ以外の飛空艇は新たな核で直してもらう」

 ベアトリーチェとファルーサが微笑み合いながら小さく拍手している。

「まぁその前に、ウチの船の中も案内しますよ。
 軽く飛んで乗り心地もみてもらって。
 皆も一緒にどう?」

「もちろんワシらも行くぞ」
 ワーディル老、ロンドル大司教、教皇、オルガスティア陣営の皆が頷く。



ーーーーーーーーーー

「はぁっ!?」

 ウルリッヒ王の驚きの声が響く。
 王は自らが乗ってきた床から身を乗り出し船体の外を見て、また船内を見る。

「こ、これは…?」
 ピグミア宰相も船内を見回し困惑している。

「ど、どうなっているんですか?」

 
 皆が乗り込んだ船内は"倉庫"といった雰囲気の広々とした空間。
 ただし、船体とほぼ同じ横幅、奥行きも船の全長に近い。
 で、ありながらも壁面には階段と2階踊り場が設置され、いくつもの扉が見える。
 幅を見る限り扉を開ければそこはもう船の外だろう、という不可思議な光景にこの船の性能を知らない面々はただキョロキョロとするしかない。

「大したものは入っていませんが開けて見ていいですよ?」

 リルトがそう言うとウルリッヒ王は手近の扉を開く。
 そこには棚が置かれた倉庫があった。

 隣の扉を開くと、そこにはベッドやテーブルを置いた小さな宿の一室のような居住空間があった。

「こ、これは一体…?」

「この倉庫自体が実際の船内ではなく、ボクが付与した機能で作られている"拡張空間"になっているんです」

「ストレージの中、みたいなものですね?」
 ロンドル大司教が訊ねる。

「そうだね。
 飛空艇をストレージ内で作ってるうちに、だんだん手狭になるにつれてその工作空間を広げてたらイメージを付与出来るようになってね、それを使ってるんだ」


「これは、大型輸送機と同等…いや、もっと容量がありそうです」
 ピグミア宰相が周囲を見渡しながら呟く。

「じゃあ船内の構造は好きな形に出来る、という事なんですね?」
 ベアトリーチェがリルトに訊ねる。

「まぁそういう事だね。
 でもボクの手間が増えるばっかりだから、その辺は代金に上乗せしないとだなぁ…」


「…これなら一隻でも多機能にすればいいんじゃねぇか?」
「いや、リルト殿がせっかくまだ何処からも受注していない好機ですから、今のうちに何隻か頼んでおく方が利口ですよ」
「…たしかにな」

 オルガスティア陣営はボソボソと話し合っている。


「ウチの飛空艇なんて、狭い通路と居住空間を何とかやりくりして、窮屈な思いして乗ってるのに…」

「ここまで性能が違うともう"型落ち"と言われても腹も立ちませんね」


「じゃあ甲板に出て、乗り心地をみようか?」

 リルトの案内で階段を上がり甲板に出る一行。

「わぁ、甲板も広くて気持ちいいですね」
 ファルーサが見回しながら言う。



「…やっと来たな、諸君」

 背後上方向から突然声がかかり、一同は振り向く。

 そこには船尾楼の上に立ち腕を組む少女が一人。


「うわ…また違う上位精霊が…」
 ウルリッヒ王がげんなりとした表情で少女を見る。


 そこにいたのは10歳前後に見える少女。
 輝く茶色のクセのあるショートボブの髪、軍服と軍帽で装い、軍服の上着は袖を通さず肩に羽織っている。
 そして身体には人形のようなラインが刻まれている。



「私は地の精霊イシュタル。
 この船の船長であり、また父上が娘達の中で最も愛している最愛の娘でもある」


…ガシッ!


 空中からラインの入った手が現れイシュタルの頭を掴む。

「…ふざけた事を言っていると捻り潰しますよ?」
「…ごめんなさいキュベレーお姉さま」



 手が放されるとイシュタルはおもむろに船尾楼から身を投げ、フヨフヨと飛び降りてくるとリルトに抱きつく。


「…死ぬかと思った」
「何してるのキミ?」





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