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210話 幕間 新時代 4

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「だから!そんな事しなくても他に方法はあるでしょ!」
「いえ!誠意を見せるにはやっぱり!」
「…!!」
「!…?!」


「…はぁ」

 私は何でここにいるんだろう…
 もう自腹で別の部屋取って寝ちゃダメかな?



ーーーーーーーーーー

 話し合い二日目。

「じゃあ最後に…私も結論が出てないけど。
 リルトくんに支払う報酬について」


 とうとう来た、 一番の難問。
 陛下はどうするつもりなんだろう?


「……」

「…?」


「…どうしよう?」

ガクッ!

「お父様?!」


「だって…これ本当に難しいよ? 始祖様以外直せなかった物が直るんだもん、そもそもお金に換算出来る問題じゃないんだよ」


 …やっぱり陛下でも無理だったんだ。
 私は疑問をぶつけてみる。

「陛下。 歴代の王達は今まで依頼した錬金術士達にどのような報酬を提示してきたのですか?」


「それはもちろん"王様あるある"だよ」
「はあ?」


「"望みのままの褒美を取らせよう"…ってヤツだよ」
「「あぁ…」」


 物語なんかでよくあるヤツだ。
 ドラゴンとか魔王を倒すとか無理難題を解決する時に、挑む者に王様が言う定番のセリフだ…


「だから飛空艇が直ってない今の状況から分かると思うけど歴代全て同じで。
魔法契約して、飛空艇を見せて、
"直せません"
"ご苦労さま、はい手間賃"
って感じの流れなんだよ。 本当に褒美の話までたどり着くのは約6000年で私達が初めてなんだよ…」


 これは…本当にどうしたらいいんだろう?


「ふふ…♪」
 リーチェから小さな笑いが。
「「…? リーチェ?」」


「私は考えましたよ。 リルト様への適切な褒美を」
「「……」」


 …絶対にろくでもない事言うぞコヤツ…




「私がリルト様に嫁ぎます!」
「却下ーー!!!!!」





 おお!さすが陛下の反射神経!


「ファルーサ子爵!」
「はい陛下!
 リルト様とは謝罪、飛空艇の件での話し合い、後は宿でリルト様のお連れの方々がいる所で軽く挨拶をした程度で親密度は0ゼロ、今のは姫の単なる妄想です」

「フー…フー、そうかそれならいい」

「親密度は0ゼロ…」
 リーチェは何かダメージを受けている。



「ふっ♪…お父様、この案はキチンとした具体策なんですよ」
「いやだから却下だって」


「まぁまぁひとまず聞いて下さい。

 現在アリルメリカ唯一の姫である私が嫁ぐ。
 当然莫大な持参金が手に入ります。 嫁入り道具だってありとあらゆる高価であり希少な物が手に入ります」

「…まぁ当然そうだね」
 通信機向こうの陛下の声は不満げだ。

「自分で言うのもなんですが、我が国での私の人気はけっこう高いです」


 それはお前が国民の前では猫被ってるからだ。


「その私を"飛空艇を直した"という誰も異論を唱えられない功績でめとるのですから、リルト様もアリルメリカに暖かく迎えられ、名誉も得られます」

「そうだね」

「私の夫ですから、望めば公爵の地位も得られるでしょう」

「…」

「そして豊かな領地が与えられれば、永続的な報酬を提供出来るのと同義です」

「…」


 い、以外と考えられてる…
 お金・物・名誉・地位、一応与えられそうな物も網羅しているし。
 普段ボケボケなくせに、時々コヤツはこうやって急に賢い時があるんだよなぁ…


「な、何かちょっと説得力あるけどダメ!」
「何でですか!理由を言って下さい!」
「まだ結婚なんて早い!」
「私ももう19です、早くは無いでしょう!
 だいたい貴族なのにこの年まで婚約者もいないのはおかしいです!」


 おい、やめろ。 それは私にも効く…



「とにかく却下!」
「…!」
「…!!」
「!…?!」



ーーーーーーーーーー

 …そうして本日は不毛な言い争いが始まって四日目。
 私だって自腹で部屋を取る以外の解決策を考えていなかった訳じゃない。


「…!!」
「!…?!」

「…お二方」

「「?!」」

「この争いにの決着が着く事になりました」

「ど、どういう事?」

「簡単な事です。
 リルトさんにこの現状を話して助言を求めて来ました。
 "一応の"と付けたのは、こちらがリルトさんの要望をはね退けた場合はまた白紙に戻るからです」

「…なるほどね」

「なっ! ルーサ! 貴方だけリルトさんとお話ししてズルいわよ!」

(…お前のせいじゃろがい)


 私は真剣な顔でリーチェを見る。
 と、空気を悟ったリーチェも静かになり聞く姿勢になる。
「では、お伝えしてよろしいですか?」

「ああ」
「いいわ」


「まず最初に…」

 二人の息を呑む音が聞こえる。


「地位・名誉・リーチェはいらないそうです」

「よし!!」
 弾んだ声から陛下のガッツポーズが見えるようだ。

「そんな…」
 リーチェは机に突っ伏している。


「リーチェ安心しなさい。
 リルトさんは別に貴方が嫌いとかそういう事ではなくて、
"人は報酬として差し出すモノではない"
と言っていたわ」


 リーチェはガバっと起き上がる。
「そうよね?!さすがリルトさん!」

(報酬になるって言い出したのお前だけどな)

「…チッ」
 何処からか舌打ちが聞こえる。




「コホン。
 ではリルトさんが要望した報酬をお伝えします」




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