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207話 幕間 新時代 1

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 …チュン、チ、チチチ、チュンチュン…


 …もう朝なの?…昨日は大変だった。


 忘れないうちにリルトさんとの話し合いの内容をまとめたいのに、今も隣のベッドでお姫様みたいな顔で…(あ、本当に姫だった)寝てるリーチェがリルトさんの事ばっかり話すから全然集中出来ないし。

 やっと報告書がまとまったから陛下に連絡を取って内容を伝えたら、リーチェの反応から何かを察した陛下がリルトさんの事ばっかり聞いてくるし、

 挙句の果ては親子喧嘩が始まって仲裁させられるし、


 なんで私コヤツの側仕えなんて受けちゃったんだろう…


 陛下は報告された内容については熟考してから今夜連絡をくださると言っていた。
 …今日は、ひとまずはこのラスカリアに長期滞在する可能性を考えて買い出しかな?

「…うふ♪、リルトさん…」

(…ひとまずはコヤツを叩き起こすか…)



ーーーーーーーーーー

「街のっぽい服がもう少し必要よね?」
「そうね。 じゃまずは服屋さんね」

 朝食を摂りにリーチェと話しながら1階へ降りる。
 ウチの国にもゴマンといる権威主義の貴族なら部屋に持って来させるのが当たり前だけど、私達は堅苦しいのが好きじゃないので食堂に行って食べる。


 食堂に入るとリルトさんがお連れの方々と朝食の最中だった。 リルトさんも気づいてくれたけど、食事中に話しかけるのは失礼なので会釈に留めて少し離れた席に着く。


 無作法にならないようソッと見る。

 リルトさんとパーティメンバーのポラリスさん。
 何かの式典で一度だけ見かけた事があるワーディル老。
 …やっぱりハイエルフに進化されている。

 後の二人は知らない。
 一人は聖職者の矍鑠かくしゃくとした老人、質素な服だがその胸元の文様は…大司教?

(…確か小さい国なのにオルガスティアの王都大神殿には大司教がいらっしゃったはずだ。 何故リルトさんと?)

 もう一人は金髪のメガネ美人、やり手そうだが冒険者といった雰囲気では無い…誰なんだろう?



 食事しながら小声で話す。

「大司教が一緒なのも不明だけど…あの美人のお姉さんは誰なんだろう?」

 リーチェはリルトさんの周りに美人さんがいるのが不安そうだ。


「…リルトさんの彼女じゃない?」
「!?」


 …冗談のつもりで軽く言ったのに泣きそうな顔になるな。


「冗談よ。分かんないけど、たぶん食事終わったら紹介してくれるんじゃない? 向こうはもうお茶してるし、早く食べちゃいましょ」
「そ、そうね!」



ーーーーーーーーーー

「…うわあぁ、ホントに部屋なんだ…」
 リーチェが呟く。

 推測通り食事後に仲間を紹介したいと言う事でご招待頂いた。

 リルトさんの"アイテムストレージ"に…

 書物によれば我が国の始祖様は超高レベルの"アイテムボックス"を所持していて、そこから山のような量の魔物の死体を出したり、何時でもホカホカの食事を出して周りの冒険者から羨ましがられていたという。

 だけど"アイテムストレージ"は別格だ。 というか所持者が物語の中にしかいない。
 いわくその容量は無限であり、いわくその中は永遠に生物が生活出来る環境であり、いわく一つの世界であると。


 …やっぱりこの人は並大抵の人物じゃない。


「魔道具で聞こえなくしても良かったんだけど、それでも人目は引くからコッチの方がいいかなって思ったんだけど、わざわざごめんねベアトリーチェさん、ファルーサさん」


 その後は軽く自己紹介をし合って終えた。


 神職の方はやはり王都に配属された大司教ロンドル様。

 お仕事の関係でこちらに用向きがあったので、懇意にさせて頂いたリルトさんに随行させてもらったらしい。
 リルトさんが胡散臭そうな目で大司教を見ていたので、無理矢理付いてきたのでは?と推測してる。

 まぁ、"神に見守られている人物"なんて、敬虔な方はお側にはべりたいものなんだろう。


 メガネ美人さんはレシアナさん。

 冒険者ギルドの職員さんで、本部からの指示で特別にリルトさん専属となって随行しているらしい。
 リルトさんの冒険者登録もして、この中でも一番の長い付き合いらしい。 リーチェがハンカチを噛みそうな顔で仲良さそうな二人を見ていた…

 完全中立を歌っている国際独立組織である冒険者ギルドでさえもリルトさんの事は特別視している、という事だ。


 ワーディル老は私達の事は覚えていらっしゃらなかったが、キチンと挨拶した訳じゃないので仕方ない。
 なんと進化した際に"神の啓示"を受けたので、国に戻って政治の舞台に立ち戻るつもりは無いらしく、今は趣味の魔道具作りを一緒にするためにリルトさんに付いて回るつもりだとか。

 国としては手強い政治家が復活しないので有り難いような、最重要施策である"飛空艇復活"のキーマンであるリルトさんの近くにいるのが厄介なような、微妙な感じだ。


 …そろそろ陛下から連絡の来る時間だ。
 陛下は、国はどう判断するんだろう…



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