206 / 244
206話 幕間 新米
しおりを挟む「おはようございまーす」
「おはよー!」
真新しい革の部分鎧やブーツを身に着けた冒険者スタイルでギルドに入る。
「おはようございますレシアナさん、アーくん。
今日も早いですね」
受付嬢が私の肩にいるアーくんに小さく手を振る。
「冒険者は早起きしていい依頼取らないとなんだぞ!」
「そうなんだ、偉いねぇ」
「へへっ♪」
アーくんは受付嬢に褒められて嬉しそう。
最初は驚かれたけど今では受付嬢や女性冒険者にけっこう人気がある。
(アーくん可愛いもんなぁ)
まずは日課として依頼端末にギルドカードを触れ、受注出来る依頼のリストを確認する。
…もうこの行動からして"冒険者"っぽくていまだに顔がニヤけてしまう。
リストは昨日から特に変更はない、私は予定通りまずは訓練場へ向かう。
「お、レシアナちゃん今日も訓練か?」
道すがら見たことがあるベテランぽい冒険者に声をかけられる。
「ええ、まだ"身体強化"の動きに慣れないから」
「まぁ最初は振り回されるわな。
なるべく身体の力を抜いてリラックスするのがキモだぜ」
「ありがとう、やってみるわね」
私が名前を知らなくてもギルド職員をしていた私の方は名が知れてるからこんな事も多い。
リルトきゅん達がいるからそれほどではないけど冒険者には横の繋がりも重要だ。 知り合いが多いに越した事はない。
訓練場へ出てメガネを外し軽く準備運動。 アーくんが運動しないのに真似してて可愛い。
「じゃあいくよ!アーくん!」
「うん!」
「チビちゃんも一緒に走る?」
私は一瞬強く瞬きをして視界を"精霊視"に切り替える。
すると、アーくんに寄り添うように水色の淡く光る小さな玉が浮かんでいるのが見え、その玉は私の声掛けに反応して嬉しそうな気配を漂わせながらクルクル回っている。
実は私の使役している精霊はもう一体いるのだ。
初めてアーくんと出会う直前、キュベレーさんは、
ーーーーーーーーーー
…あなたの周りに昔からいて、ずっとあなたを見ていた精霊達が、あなたが冒険者になる助けになりたい。あなたに使役して欲しい。って言うのでどれだけ適正があるのか確かめたくて…
ーーーーーーーーーー
と言っていた。
そう、"精霊達"とちゃんと言っていたんだけど、アーくんと出会ってわちゃわちゃしてしまったので、後になってから気がついた…
ただ、もう一体の水の精霊は見た目通りまだ微精霊からちょっと成長した程度の子なので、これからどうなるかは未知数だ。
キュベレーさんにも、
"形や思考が定まるまではまだ名付けない方がいい"
と言われたので愛称で"チビちゃん"と呼んでいる。
私が声をかけるとアーくんは何も無いところから"精霊従剣"を取り出す。
剣の水晶は既に黄緑色に輝いている。
と、アーくんからの精霊力が私を包み込み、軽く地面を蹴って送り出した身体は羽が生えたように軽やかに前へ進む。
(身体の力を抜いてリラックス…)
本当にスキップ程度しか力を入れていないのに、素の私の全力疾走よりも早い。
冒険者の人達はこれを制御しながら武器を振るったり、魔法を使ったりするんだ、ポラリスなんてさらにいくつもの武器を使う…
(いや…関連付けちゃいけない。制御とかじゃなく 無意識でこの状態になって戦闘出来てこそ意味があるんだ)
ーーーーーーーーーー
身体強化に慣れる訓練を一通りして一件依頼をこなす。
そしてギルドに戻って今度は魔法の訓練。
最近の私はただただこの繰り返しだけど…楽しい…
上手く出来なくても、身体強化の揺り返しで筋肉痛になっても、自分が少しづつ冒険者になっていっているのだと思うとそれすら楽しい。
(早くリルトきゅんやポラリスと一緒に冒険に出たいなぁ…)
「レシアナ~」
訓練場の入口からポラリスが声をかけながら近づいてくる。
「あらポラリス。 一人?」
「うん。 リルトは今日は用事があるから攻略お休み」
「そっか」
私が冒険者になってポラリスとはだいぶ距離が近づいた気がする。
妹のような…先輩のような…恋のライバルのような微妙な関係だけど仲はいい。
「レシアナ…改めて見ると髪、けっこう変わってきたね?」
アーくんとチビちゃんを使役して、身体強化や魔法を使うようになったら髪色や質がだんだん変わってきて、子供の頃羨ましかった子みたいに輝いてきている。
「うふ♪、なんか毎朝鏡を見るのが楽しみなの」
「キレイだもんね」
「ううん、"冒険者"になっていってるんだなぁ、って」
「…レシアナ変わってる」
「そう?」
私も女だからキレイになるのは嬉しいけど、今は冒険者としての適正が上がっているのだと思うとそちらの方が嬉しい。
「そういえば…」
「ん?」
「リルトが急にパーティの名前考えたって」
「え!?な、何?なんて名前にするの?」
パーティ名…ギルドのカウンターで名乗ったり、功績を挙げて他の冒険者や一般の人に覚えてもらう重要なもう一つの自分の名前だ。
ポラリスが一拍置いて口を開く。
「"空船の守り人"」
「…"空船の守り人"…」
「うん。 もう私達パーティ用の飛空艇を制作始めたから、完成と同時に名乗り始めるつもりだって。
いまのところ世界で唯一個人で飛空艇を持つ冒険者パーティだから、絶対被らないし偽物も現れようがないだろ?って」
冒険者の名が知れると、その名を語って詐欺を行う者が現れたりするが…確かにそれなら騙しようが無い。
「か、カッコいい!」
「だよね」
…空を駆ける冒険者…本当に物語の主人公みたい…
「どうも、"空船の守り人"のレシアナです」
私はギルドカードをサッと提示して名乗る。
「…イケてる」
ポラリスは頷いている。
「だよね!だよね!」
私も早く"空船の守り人"として活躍する為に…もっと訓練頑張らないと!
0
お気に入りに追加
520
あなたにおすすめの小説
前世で眼が見えなかった俺が異世界転生したら・・・
y@siron
ファンタジー
俺の眼が・・・見える!
てってれてーてってれてーてててててー!
やっほー!みんなのこころのいやしアヴェルくんだよ〜♪
一応神やってます!( *¯ ꒳¯*)どやぁ
この小説の主人公は神崎 悠斗くん
前世では色々可哀想な人生を歩んでね…
まぁ色々あってボクの管理する世界で第二の人生を楽しんでもらうんだ〜♪
前世で会得した神崎流の技術、眼が見えない事により研ぎ澄まされた感覚、これらを駆使して異世界で力を開眼させる
久しぶりに眼が見える事で新たな世界を楽しみながら冒険者として歩んでいく
色んな困難を乗り越えて日々成長していく王道?異世界ファンタジー
友情、熱血、愛はあるかわかりません!
ボクはそこそこ活躍する予定〜ノシ
エラーから始まる異世界生活
KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。
本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。
高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。
冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。
その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。
某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。
実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。
勇者として活躍するのかしないのか?
能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。
多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。
初めての作品にお付き合い下さい。
えっ!?俺が神様になるの? チートで異世界修行物語。
偵察部隊 元リーコン
ファンタジー
主人公の名前は沢村尊流(さわむら たける)45歳。仕事に向かう途中にテロリストに感化された暴漢に遭遇、無差別殺人は防げたが、命を落としてしまう。
死んだ筈なのに先程とは違う場所に尊流は立って居た、知らない場所なのに何故か懐かしい感じがするその場所は、ある神様の神域だった。
そこで現れた神様によって驚愕の事実が告げられた。
沢村尊流は何度も転生して魂の位が上がり、もう少しで神と成れるというものだった。
そして神に成るべく、再度修行の為に転生することになるのであった。
とんでもチートを貰い転生した尊流ははたして神になれるのか、仲間と共に世界を旅するストーリーが始まる。
物語の進行は他の作品に比べかなり遅めかと思いますが、読んだ方が情景を思い浮かべられるように心掛けておりますので、一緒に異世界を旅して主人公の成長を見守り楽しんで頂けたらと思います。
処女作ですので、読みづらい事も有るかと思いますが、頑張って書いて行きますので宜しくお願い致します。
更新は不定期になると思います。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
異世界転生漫遊記
しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は
体を壊し亡くなってしまった。
それを哀れんだ神の手によって
主人公は異世界に転生することに
前世の失敗を繰り返さないように
今度は自由に楽しく生きていこうと
決める
主人公が転生した世界は
魔物が闊歩する世界!
それを知った主人公は幼い頃から
努力し続け、剣と魔法を習得する!
初めての作品です!
よろしくお願いします!
感想よろしくお願いします!
とあるオタが勇者召喚に巻き込まれた件~イレギュラーバグチートスキルで異世界漫遊~
剣伎 竜星
ファンタジー
仕事の修羅場を乗り越えて、徹夜明けもなんのその、年2回ある有○の戦場を駆けた夏。長期休暇を取得し、自宅に引きこもって戦利品を堪能すべく、帰宅の途上で食材を購入して後はただ帰るだけだった。しかし、学生4人組とすれ違ったと思ったら、俺はスマホの電波が届かない中世ヨーロッパと思しき建築物の複雑な幾何学模様の上にいた。学生4人組とともに。やってきた召喚者と思しき王女様達の魔族侵略の話を聞いて、俺は察した。これあかん系異世界勇者召喚だと。しかも、どうやら肝心の勇者は学生4人組みの方で俺は巻き込まれた一般人らしい。【鑑定】や【空間収納】といった鉄板スキルを保有して、とんでもないバグと思えるチートスキルいるが、違うらしい。そして、安定の「元の世界に帰る方法」は不明→絶望的な難易度。勇者系の称号がないとわかると王女達は掌返しをして俺を奴隷扱いするのは必至。1人を除いて学生共も俺を馬鹿にしだしたので俺は迷惑料を(強制的に)もらって早々に国を脱出し、この異世界をチートスキルを駆使して漫遊することにした。※10話前後までスタート地点の王城での話になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる