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202話 ラスカリア 27

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「ガァア!」

 スネの辺りを狙うコープスドッグの噛みつきを空間を蹴りかわす。
 骨と皮、かろうじて残っている筋だけで通常はヨロヨロと動きが遅いくせに、攻撃や回避の瞬間だけ魔力を纏い急激に早くなる。
 変に緩急がついて逆に避けずらい…

 噛みつき攻撃を空振り、体勢の崩れたコープスドッグにラテルの石の弾丸が突き刺さり頭蓋を砕く。
 コープスドッグを先行させて隙を突こうとしていたアンデッドコボルドは瑠璃の牽制魔法で動けないところを、自分の相対していた敵を既に倒したポラリスに横から仕留められてひとまず戦闘は終了。


「ふう…まぁ乱入されない限りは何とかなるね?」
「うん。敵の強さ的にも丁度いい」


 レベルは現在ポラリスが34、オレが30で出会った頃よりはだいぶ近づいた。



ーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー裏ルート 10階ーー

「これは…」


 洞窟を抜けた先で次のエリアへ進んだオレ達は、湿地帯の中央で異様なモノを発見する。

 そこは直径20mほどの円形に石を敷き詰められた舞台のような場所で、様々な形でコボルドの死体が飾られている。
 はりつけにされ四方から槍を刺されている者、首から縄を掛けられ宙吊りにされている者、祭壇のような台の上で四肢を切断されている者…
 時間の経っているミイラのような死体もあれば、まだ血の乾ききっていない死体もある。
 …ひとまず人間はいないようだ。


「処刑…というより、殺してもてあそんだ、って感じだな…」
「何か気分悪いね」


 その後11階まで探索し、初日ということもあるので一旦帰る事にした。



ーーーーーーーーーーーーーーーー

「ふむ…その光景を聞く限り、平時からアンデッドとノーマルが共闘しないのは、死者と生者だからという理由では無く、学者の説である"2つの部族の対立"という説が正しいようだの」


 宿に帰り夕食後ストレージに集合。今日の探索の話をするとファル爺は関心を示した。

「ダンジョンは不思議な場所だからのう。
 そういった過去の対立構造がさも"ダンジョンの仕組み"かのように再生されていてもおかしくは無い」

「なるほどね~」


「それで、これからはどうするのです?
 やはり泊まりで潜る事になりますか?」
 大司教が少し心配そうに訊ねる。


 いくら"位相転移"を使って戦闘無しで移動しても、今くらいの深度が日帰りの限界点だ。
 これ以上奥まで進むならばダンジョンでの泊まりが必須になるだろう。


「うん…だけど拠点や工場、それにレシアナさんの事もあるし、まだ街を長く空けるのもね。
 って事で、スゴく不安なんだけどキュベレーの"例の力"を借りようかなと。
 明日は潜らずに一日じっくりそれの検証に費やすつもり」

「昨夜話していた"精霊界を経由した転移"か…
 安全であれば確かに素晴らしい力なんだがのう…」


 ファル爺もオレと同じで不安なようだ。
 とはいえオレの娘を自認しているキュベレーがわざわざ父親のオレに提案しているんだ。本当はオレも危険が無い事は分かってるんだけど…


「えー? 大丈夫でしょ。
 転移魔法なんて勇者様みたい! 私も早くやってみたいなぁ」
「私も明日が楽しみ」

 レシアナさんとポラリスは不安どころか楽しそうだ。
 キミらはメンタルが強いのか楽観的なだけなのか…


「ついでにアーロウスに渡す魔道具も検証してくるよ。
 大丈夫そうなら明日渡すからね?」

「やったー!俺の武器!」
 アーロウスはレシアナさんの肩でピョンピョン飛び跳ねてる。

「良かったねアーくん」
「うん!」


 さて、明日はどうなる事やら…




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