198 / 244
198話 幕間 近くて遠い星 2
しおりを挟む「ギュー…」
「ふふふ♪」
キュベレーさんがラテルちゃんを抱き優しく撫でている。
ラテルちゃんはちょっと不満そうだけど大人しくしてて、リルトきゅんの肩に乗った瑠璃ちゃんがそれを心配そうに見ている。
キュベレーさんの方が精霊として格上だから逆らえない、とかなのかな?
「しかし…"創造錬金"に"ストレージ"まで使える精霊とは、規格外にもほどがあるな」
ワーディル老は感心しきりだ。
たしかに、使役されている精霊は術士の魔法の補助の他に術士を守る為に自らで魔法を使うとは聞くけど、スキルを使うっていうのは聞いた事が無い。
「まぁ、さっきも言った通り基本的には引き籠ってるから、みんなの役に立つ事はあんまり無いんじゃないかな?」
リルトきゅんはキュベレーさんの手の中からラテルちゃんを掬い上げる。
「キュキュ♪」
「あっ!おとうさま何を」
「何を、じゃないの。嫌がってるでしょ?
無理矢理な事してると嫌われるよ?」
「失礼な。仲良くなろうとしただけなのに…」
少しむくれるキュベレーさんの頭を軽く撫でながらリルトきゅんが皆を見回す。
「それよりも、重要な話をしなきゃいけないんだ。
今のところこのメンバーにしか話せないようなね」
真剣な表情だ。みんなの空気もピリッとする。
「キュベレーは偶然の中で産まれたとはいえ、ちゃんとボクの最初の目的通りの力を持ってる。
さっきポラリスが目潰し食らったように、今この時も世界中から微精霊がキュベレーの元に集まり、情報のやり取りをしてまた世界中へ飛び広がっている。
そして、微精霊の集めた使役者の情報はキュベレーという"精霊と人"という両方の視点を持つ存在を通して、精霊に、人に、世界にとって必要か審判を受ける」
「審判…」
「だから、悪意によって、邪な欲望によって精霊を使役している者は…」
リルトきゅんがキュベレーさんを見る。
「わたしがその事実を上位精霊に伝え、その力で精霊との使役契約を強制破棄させています」
「き、強制破棄…そんな事が出来るのか」
ワーディル老は恐ろしいものを見る目だ。
「ファル爺…」
「ん?」
「悪意ある者は、精霊魔法が、使えなくなるんだよ?」
リルトきゅんはワーディル老を見つめながら、噛み砕くように繰り返す。
「何を?……!? ま、まさか?」
リルトきゅんはまたキュベレーさんを見る。
「はい。 "統率派"と呼ばれる思想派閥に属するハイエルフの約8割が既に"使役強制破棄"の判定を受け精霊魔法を失っています。
残りの2割は既に闘争に疲れ活動から遠ざかっている者です。
他の"統率派"エルフ達も、他種族を蔑む者、"自然派"に対する悪意に満ちている者達が順次精霊魔法を失っている最中です」
もともと外の喧騒の聞こえないストレージ内に、痛いほどの静寂が広がる。
「か、神々がこの地より天に帰られてから二万年。
長きに渡り続いて来た不毛な争いが…終わる?」
ワーディル老は震えている。
私だって身体中に鳥肌が立ってる。 今、この時、これからの歴史書に代々記されていくべき出来事が起きている…
「焦らないでね。
彼らはどうせ精霊魔法が使えなくなった事をひた隠しにする、特にハイエルフ達は絶対に公表しないでしょ?
今は緩やかに争いが無くなっていく事を静観する段階だよ」
「そ、そうだな…ヤツらが力を失っていくのは確定なのだ、焦る必要は無いのだな」
「そう、だからファル爺も祖国に報告したいかも知れないけど今は黙っていてくれる?
今、急激に変化が起きれば逆に争いが広がっちゃう可能性もあるし」
「分かった。リルトの言う通りにしよう」
ワーディル老はリルトきゅんに真摯に頷く。
…やっぱりリルトきゅんはスゴいなぁ…
0
お気に入りに追加
519
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
『スキルの素』を3つ選べって言うけど、早いもの勝ちで余りモノしか残っていませんでした。※チートスキルを生み出してバカにした奴らを見返します
ヒゲ抜き地蔵
ファンタジー
【書籍化に伴う掲載終了について】詳しくは近況ボードをご参照下さい。
ある日、まったく知らない空間で目覚めた300人の集団は、「スキルの素を3つ選べ」と謎の声を聞いた。
制限時間は10分。まさかの早いもの勝ちだった。
「鑑定」、「合成」、「錬成」、「癒やし」
チートの匂いがするスキルの素は、あっという間に取られていった。
そんな中、どうしても『スキルの素』の違和感が気になるタクミは、あるアイデアに従って、時間ギリギリで余りモノの中からスキルの素を選んだ。
その後、異世界に転生したタクミは余りモノの『スキルの素』で、世界の法則を変えていく。
その大胆な発想に人々は驚嘆し、やがて彼は人間とエルフ、ドワーフと魔族の勢力図を変えていく。
この男がどんなスキルを使うのか。
ひとつだけ確かなことは、タクミが選択した『スキルの素』は世界を変えられる能力だったということだ。
※【同時掲載】カクヨム様、小説家になろう様
Switch jobs ~転移先で自由気ままな転職生活~
天秤兎
ファンタジー
突然、何故か異世界でチート能力と不老不死を手に入れてしまったアラフォー38歳独身ライフ満喫中だったサラリーマン 主人公 神代 紫(かみしろ ゆかり)。
現実世界と同様、異世界でも仕事をしなければ生きて行けないのは変わりなく、突然身に付いた自分の能力や異世界文化に戸惑いながら自由きままに転職しながら生活する行き当たりばったりの異世界放浪記です。
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活
mio
ファンタジー
なんやかんや、無理矢理あいつに異世界へと連れていかれました。
こうなったら仕方ない。とにかく、平和に楽しく暮らしていこう。
なぜ、少女は異世界へと連れてこられたのか。
自分の中に眠る力とは何なのか。
その答えを知った時少女は、ある決断をする。
長い間更新をさぼってしまってすいませんでした!
他力本願のアラサーテイマー ~モフモフやぷにぷにと一緒なら、ダークファンタジーも怖くない!~
雑木林
ファンタジー
地面に頭をぶつけた拍子に、私は前世の記憶を取り戻した。
それは、他力本願をモットーに生きていた、アラサー女の記憶だ。
現状を確認してみると、今世の私が生きているのはファンタジーな世界で、自分の身体は六歳の幼女だと判明。
しかも、社会的地位が不安定な孤児だった。
更に悪いことは重なり、今世の私には『他者への攻撃不可』という、厄介な呪いがかけられている。
人を襲う魔物、凶悪な犯罪者、国家間の戦争──様々な暴力が渦巻く異世界で、か弱い私は生きていけるのか……!?
幸いにも、魔物使いの才能があったから、そこに活路を見出したけど……私って、生まれ変わっても他力本願がモットーみたい。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる