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194話 ラスカリア 24
しおりを挟む「おとうさま」
「……」
「おとうさま?」
「……」
「おとうさま!」
ビクッとして顔を上げる。
「あっ、え?"おとうさま"?オレの事?」
胡座をかいて床に座るオレの目の前には20歳くらいの女性が座っている。
オレと同じ藍色の髪と瞳、緩くウェーブのかかった髪は床に広がるほど長く、大きくパッチリとした瞳はまっすぐオレを捉えている。
ティナに似ていると言えば似ているが、なんだろう?
ティナは"可愛い系"、目の前の娘は"セレブ系"?
ただ、決定的にティナとも"普通の人間"とも違う部分がある。
それは"継ぎ目"。顔に、身体に、関節に、うっすらとしたライン状の継ぎ目が存在していて、まるで巨大なカラクリ人形だ。
オレはソッと目の前の女性の手を取り、ライン状の継ぎ目を触る。
人間と同じ柔らかく温かい肌、継ぎ目の間から何か見える訳でもなく、ピッチリと閉じたそれは指先に伝わるほのかな窪みが無ければライン状の刺青かと思うほどだ。
「何でこんなデザインに?こんなイメージした覚えないんだけどなぁ…」
オレは自問自答のように呟く。
「わたしがしました」
「え?」
オレは女性を見る。
「わたしは"人"ではない事を皆さんに分かって貰わないと、だからおとうさまの記憶から人形を見つけて、それを使いました」
「別に間違われてもいいんじゃない?」
「いえ、わたしはおとうさまの作った"魔道具"です。
人間と思われるのは不本意ですから」
「魔道具…かなぁ? もうそういう次元じゃないような気が…」
オレは自分のした事ながら目の前の存在をどう捉えていいものやら図りかねている。
「それよりおとうさま」
彼女は真剣な表情でオレを見ている。
「はい」
「わたしに名前をください」
「名前ね、ちゃんと考えておいたよ。
キミの名は"キュベレー"。
他の世界の大地母神の名前で、"知識の保護者"という意味がある。キミが精霊と人間達の知識を集め、その知識で精霊達を守って欲しい、そういう願いを込めたんだ、どう?」
「キュベレー…いい名前です」
彼女は、キュベレーは嬉しそうに微笑んでいる。
ーーーーーーーーーー
オレはファル爺の魔道具店で初めて微精霊と意思を疎通させた時に感じた。
神界で得た情報よりもずっと感情らしきものを感じる一つの"個"がそこにある事を。
だからゴーレム馬を作り上げた時から考えていた。
"微精霊に人型の身体をあげたらどうなるのか?"
と。
だがゴーレム馬のような"E・AI"ではダメだ。
あれはただ身体を馬のように動かす事だけを考える装置に過ぎない。
それで身体を人にしたところで人のように動くゴーレムが出来上がるだけだ。
だからオレは"E・AI"に代わるものを試行錯誤していた。
オレの人間としての基本的な精神構造をコピーして、自我を持ち、それに合わせて自分で行動出来る。
そんな"脳"の代わりになる"核"を。
そしてオレはビネスに出会った。
人間の精神構造を、心を、欲望を知らず汚される精霊達。
一方的に使われ、一方的に消費される関係に「何だか不公平だなぁ」と感じたオレは考えていた"核"を精霊達を守る為に使えないかと考え始めた。
ゴーレム馬の時に精霊達が見せた情報収集力、あれを逆に発信する為にも使えないかと。
そしてオレの無茶と偶然から産まれた。
精霊を守る自我を核に持ち、情報収集から人間の精神を学び、共に歩むに適さない人間から精霊を守る、そんな"守護者"が。
ーーーーーーーーーー
オレはキュベレーを"精霊視"で見る。
おびただしい数の微精霊達がキュベレーの身体に入って行き、また飛び出して散って行く。
大気をかき混ぜる気流のような光の奔流に目がチカチカして気絶しそうですぐに"精霊視"を切った。
「情報収集と発信、してる?」
「はい、常に。
今も世界中で精霊を悪用している者達の元へ上位の精霊を向かわせて、使役をブチ切ってます」
(言葉づかいが悪いのはオレのせいか…)
「"上位精霊を向かわせて"って…やっぱりキミもう魔道具じゃないよね?」
「いえ、わたしは何時までもおとうさまの魔道具です、それが変わる事はあり得ません」
キュベレーはキッパリと言う。
「強情だなぁ…」
オレはストレージから紙とペンを取り出しガリガリと書きなぐる。
「ほら!これがキミの鑑定結果!ちゃんと見て、これのどこが魔道具なの!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【キュベレー】
レベル:---
種族:精霊(機)
スキル:創造錬金・アイテムストレージ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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