上 下
192 / 244

192話 ラスカリア 22

しおりを挟む

「…はい。で、追い込まれてあそこに…」


 オレのストレージ内リビングルーム。
 とりあえず回復だけした後は9階の中央洞窟まで移動して風呂&食事、今はお茶しながら事情を聞いていた。


 まぁ推測通り、8階でアンデッド側拠点をサクサク狩れてしまい、気を良くして9階へ。
 中央で夜営をしたが当番が居眠り中に奇襲を受けて剣士1人と神官が負傷、撤退戦してあそこに…という流れ。


「あのニルってヤツに夜営は習ってなかったの?」
 パルマというリーダーの少年に聞く。


「ニルさんは…ザッと話だけはしてくれました。
 ちょっと不安だったんで一度一緒にして欲しかったんですけど"忙しい"って…」

「あらら…」

「戦闘訓練とかはしてくれた?」
 ポラリスが他のコに聞く。

「…最初に一度だけしてくれました」


(…全然面倒見てねぇじゃん)


 オレはため息を一つつく。
「…陰口みたいだからあんまり言いたくなかったけど、ニルは捜索隊はいらないって言ってたよ。
君達を信頼してじゃなく、
"俺達の評価が下がる"
って言ってた。
 正直ギルドに話してサポーター変えてもらった方がいいよ」


 パルマくんはちょっとビックリした顔をした後、俯いて、
「実は…サポートは向こうから声をかけられて。
 メンバーが近所の、友達のお兄さんとか何となく知ってる人達だったので受けたんですけど…
 全然何も教えて貰えないし、こんなもんなのかな?って…」


「まぁ、変えた方がいいって言うのはあくまでもボクの意見だから自分達で相談して考えて。
 決める前にギルドで相談するのもいいよ。
 ギルドには連絡しておくから今日はここに泊まって、明日ラスカリアに帰ろう」

「はい。
 あの…何から何までありがとうございます」

「「ありがとうございます」」
 全員が頭を下げる。


 その後、ダンジョンで何かあったら使おうと事前に決めていた連絡方法で瑠璃にレシアナさん宛の伝言を届けて貰う。

 別に難しい事じゃなく瑠璃が一度精霊界へ戻るだけ、これでこちらに戻る座標をラスカリアのギルドにすれば一瞬だ。
 後はレシアナさんにコッソリ声をかけ、レシアナさんからの質問に瑠璃が答えるだけで伝言が成立する。

 人見知りの瑠璃がレシアナさんに慣れたので出来るようになった方法だ。



ーーーーーーーーーー

「おはようございま…あっ"白の聖杖"のみんな!」
 受付嬢が大声を上げたのでギルド中の人々の注目を浴びる。

「おお!無事だったか!」
「良かったわ」
「リルトくんが助けたらしいわよ」


 喜ぶ冒険者達の中を抜けレシアナさんが現れる。

「ご苦労様リルトくんポラリス、"白の聖杖"のみんなも無事で良かったわ。
 疲れてなければ事情を聞きたいんだけど大丈夫?」

 パルマくんが前に出る。
「はい、リルトさんにお世話になって、ゆっくり休ませてもらいましたから大丈夫です。
 あと、僕らもちょっと相談したい事があるので」

「分かったわ、じゃあ奥へ行きましょう」



ーーーーーーーーーー

「なるほどね…このサポート制度、上手くいっていたから露呈ろていしなかったけど、これは改善が必要ね」

 オレが答える。
「そうですね。
 新人が下手に優秀で、そのサポーターになった者が悪質だった場合、今のままだと何も教えず評価だけ奪い取るような事が起きる訳です。
 一定期間毎に新人に聞き取りを行うとか、サポート側に何を教えるのかあらかじめ決めておいて指示するとか…まぁ色々必要でしょうね」


…コンコンコン


「レシアナさん、ニルさんが来られました」
「通してちょうだい」


 開いた扉からはニルが一人入って来る、他のメンバーはいないようだ。
 ニルは入ってくるなりオレを睨み、"白の聖杖"のメンバーに声をかける事も無く席に着く。

("大丈夫?"の一言も無いのかよ…)


「で、何ですか?"白の聖杖"は無事みたいだし、何か他に用ですか?」
 ニルは面倒そうにレシアナさんに聞く。

「ええ、今回の件を踏まえてあなた達パーティー"レッドソード"は"白の聖杖"のサポーターから外します」

「なっ?!」


(…何がレッドソード赤い剣なんだろ? そういえばオレ達も3人以上になったらパーティー名付けろって言われてるけど…何にしようかな…)


「ギルド側の確認や指示不足もあり偉そうな事は言えませんが、あなた達がサポーターとしてほとんど何も教えていない事が聞き取りで分かりましたから。
 当然今まで得た評価ポイントも没収です」


(あぁ、疲れたのと臭いのとで適当にブッ込んだけど、一応あのネームド戦の戦利品確認しておこうかな)

 オレは目立たないように手元でストレージのリストを表示していじる。


「なんだよそれ! 別にギルドからも何をどれくらい教えろなんて指示されてねぇぞ!」

「だから言ったでしょう?
 "ギルド側の指示不足もあった"と。
 では聞きますが、戦闘訓練を一度だけ、夜営に関しては口で説明するだけ、…あなた達は何の為にサポーターになったんですか?」

「ぐっ…」


(腐った死体、魔石、魔石、腐った死体、錆びた剣、腐った死体、死体…お? 何だこれ?)

 オレは最小限にストレージを開き目的の物を取り出す。

 それは直径10cmくらいの磨かれた石のメダルに模様が彫られていて、そこに"コボル鉱石"が流し込まれているけっこう精巧な作りのペンダントだ。

(これは…そういえばあのネームドがこんなの付けてた気もするな…"鑑定")

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【魔鍵のペンダント】
・魔道具

魔法によって封じられた特定の扉を
開く為に作られた魔道具。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



(これは…二重の意味で"カギ"を見つけたか?)



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。 アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。 ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。 アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。 去ろうとしている人物は父と母だった。 ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。 朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。 クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。 しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。 アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。 王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。 アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。 ※諸事情によりしばらく連載休止致します。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

『スキルの素』を3つ選べって言うけど、早いもの勝ちで余りモノしか残っていませんでした。※チートスキルを生み出してバカにした奴らを見返します

ヒゲ抜き地蔵
ファンタジー
【書籍化に伴う掲載終了について】詳しくは近況ボードをご参照下さい。 ある日、まったく知らない空間で目覚めた300人の集団は、「スキルの素を3つ選べ」と謎の声を聞いた。 制限時間は10分。まさかの早いもの勝ちだった。 「鑑定」、「合成」、「錬成」、「癒やし」 チートの匂いがするスキルの素は、あっという間に取られていった。 そんな中、どうしても『スキルの素』の違和感が気になるタクミは、あるアイデアに従って、時間ギリギリで余りモノの中からスキルの素を選んだ。 その後、異世界に転生したタクミは余りモノの『スキルの素』で、世界の法則を変えていく。 その大胆な発想に人々は驚嘆し、やがて彼は人間とエルフ、ドワーフと魔族の勢力図を変えていく。 この男がどんなスキルを使うのか。 ひとつだけ確かなことは、タクミが選択した『スキルの素』は世界を変えられる能力だったということだ。 ※【同時掲載】カクヨム様、小説家になろう様

Switch jobs ~転移先で自由気ままな転職生活~

天秤兎
ファンタジー
突然、何故か異世界でチート能力と不老不死を手に入れてしまったアラフォー38歳独身ライフ満喫中だったサラリーマン 主人公 神代 紫(かみしろ ゆかり)。 現実世界と同様、異世界でも仕事をしなければ生きて行けないのは変わりなく、突然身に付いた自分の能力や異世界文化に戸惑いながら自由きままに転職しながら生活する行き当たりばったりの異世界放浪記です。

他力本願のアラサーテイマー ~モフモフやぷにぷにと一緒なら、ダークファンタジーも怖くない!~

雑木林
ファンタジー
地面に頭をぶつけた拍子に、私は前世の記憶を取り戻した。 それは、他力本願をモットーに生きていた、アラサー女の記憶だ。 現状を確認してみると、今世の私が生きているのはファンタジーな世界で、自分の身体は六歳の幼女だと判明。 しかも、社会的地位が不安定な孤児だった。 更に悪いことは重なり、今世の私には『他者への攻撃不可』という、厄介な呪いがかけられている。 人を襲う魔物、凶悪な犯罪者、国家間の戦争──様々な暴力が渦巻く異世界で、か弱い私は生きていけるのか……!? 幸いにも、魔物使いの才能があったから、そこに活路を見出したけど……私って、生まれ変わっても他力本願がモットーみたい。

辺境暮らしの付与術士

黄舞
ファンタジー
ファンタジー小説大賞50位でした。 応援ありがとうございました!!  若い頃に視力を失った元冒険者のカイン。自ら開発した付与魔法を駆使し、辺境の村で慎ましやかに暮らしていた。  しかしカインは気付いていなかった。付与魔法を扱える者は、この世にただ一人だということを。娘に送った初心者用装備に宝具と呼ばれるほどの性能を与えたことを。 「私がお父さんにお母さんの花を見せてあげる!」  娘のサラは父の視界に色を取り戻す薬の原料を手に入れるため、冒険者となりAランクへと駆け上がっていた。 「ご苦労様でした。目標を完遂出来て私は今非常に機嫌がいい」  しかし、ジェスターと名乗る男は、サラ達が集めようとする原料を盗んでいく。  果たして、サラは無事に父の視界に色を取り戻すことが出来るのだろうか?  これは父と娘の数奇な運命の物語である。 タイトルは父親であるカインの事ですが、娘のサラの話と行きつ戻りつの形で話は進んでいきます。 表紙絵は藍里さんに描いてもらいました(*´ω`*) 藍里さんのアカウントですhttps://twitter.com/lyon_sosaku

処理中です...