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189話 ラスカリア 19
しおりを挟むゆっくりになった時の中、オレの首横数センチを槍が通り過ぎていく。
身体が伸びきっているスキに首元に"次元刃"を撃ち込んだ瞬間 時の流れが通常に戻る。
「ギャウン!」
なんと伸びきった状態で無理やり身体をひねって致命傷を逃れたようで、血を流しながらもオレの前に立ち塞がっている。
(やっぱり"直感"がヤバいっ!)
ポラリスはソードマンと一騎討ち中、それを邪魔しようとするマジシャンにラテルと瑠璃が遠距離で牽制しているが、マジシャンにはガードが付いていてクリーンヒットしない。
戦闘は完全に膠着状態中だ。
いけると思って挑んだがオレとポラリスの前にいる2体が"直感スキル"持ちで、それでもいけると踏んでいたんだけど野生のカンと合わさったそれが想像以上にいやらしくどちらも決定打を入れさせてくれない。
というかポラリスが相手しているソードマンが明らかに防御モードで、オレがランサーに沈められるのを待っている為 無駄に大振りもせずポラリスの"千手"でも崩れない。
(…疲労でトラブる前に手を打つしかない!)
「ポラリス!一旦オレが崩れるけど集中して、ソイツをまず落とす!」
オレはストレージから短剣を出し構えながら声をかける。
「分かった!」
ランサーがまた撃ち込んでくる。
コイツも血を流して焦ってきてるみたいだ、決めにくる勢いで槍が唸りをあげて伸びて来る。
オレは左手に構えた"空間壁"の盾に隠れるように半身になりながらもじっと"標的"を見る。
「ゴギャウ!」
咆哮と共にゆっくりになる時間、槍はまたオレの顔面に向かって来ている。
油断を誘う為にもギリギリまで回避を最小限にして集中する。
そして槍の軌道が完全にオレの頬をかすめる事が確定した瞬間 時の流れが通常に戻る。
「今!」
オレは標的の"ソードマン"に右後方から"次元弾"を撃ち込む。
…ドッ!
「ゴギャウン!」
突然の後方からの攻撃に慌て体勢の崩れたソードマンの首元にポラリスの槍が突き刺さる。
…ドガッ! ズサアッ!
オレは完全に無防備で、ランサーがかわされた槍を凪払うのを短剣で無理やり受け横へ吹き飛ばされる。
何とか受け身を取って顔を上げるとランサーの槍とポラリスの槍がつばぜり合いをしていた。
「はぁ…何とか勝ったか…」
オレはラテルの土弾を障壁で受けて防御が割れたマジシャンの後方から"次元刃"を発動し首を飛ばす。
護衛対象であり魔法障壁をかけてくれていたマジシャンを失ったガードはラテルと瑠璃に2方向から魔法攻撃を受け崩れ落ちた。
同じタイミングでポラリスに大剣で槍をへし折られたランサーの心臓に"千手"で切り替えたレイピアが突き刺さる。
「大丈夫リルト?」
「キューン!」
「大丈夫 大丈夫。"ミドルヒール"」
オレは自分に回復をかけながら立ち上がる。
「いやぁ、完全に"辛勝"って感じだったね」
「うん、完全に防御に回ってる敵があんなに崩しにくいとは思わなかった…」
「いや、ポラリスは善戦してたよ、ボク達の技量不足が原因だね」
ここは20階最奥にある山の麓に作られた砦のような建物の中で、今戦っていた一団が今回の"攻略認定依頼"の標的だ。
終わってみれば攻略達成はしたものの、ヤツラのレベルはポラリスと同格の30後半で、格下のオレ、ラテル、瑠璃の決定力不足が完全に足を引っ張っていた…
(魔道具作りに時間を取られていた弊害だな)
近づいてきたラテルを抱き上げ、瑠璃が頭に停まる。
「ラテル、瑠璃、ボク達もうちょっと修行が必要だね?」
「キュー…」
「ピピー…」
「私達はパーティーなんだから、みんなで強くなればいいよ」
汗を拭いながらポラリスが言う。
「…そうだね。
とりあえずこの辺の敵は一掃してるし、ストレージで風呂入ってゆっくり休憩してから戻ろうか?」
「うん、そうしよう」
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