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175話 幕間 追いかける者たち 4

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 子供達の対応をリルトさんがポラリスと呼んでいたダークエルフの娘に任せて、私達3人は急遽借りたギルドの会議室に場所を移した。


 リーチェの涙も引っ込み、いたたまれない顔だがなんとか落ち着きは取り戻したようだ。

 リルトさんはおもむろにアイテムボックスから私も持っている消音の魔道具を取り出し起動させる。

「分かってるかも知れませんが自己紹介を、冒険者兼錬金術師をしております、ハーフエルフのリーフゼルファルートと申します。
 リルトと呼んで頂ければ」

「私はアリルメリカ王国、カザマ公爵家のファルーサ=フォン=カザマ子爵です。
 ここは公式の場ではないですし、そのようにかしこまられなくて結構です。」

「分かりました」

「……」

 ぽーっとリルトさんを見ている隣のリーチェを肘で突く。

「あっ、あの、私はベアトリーチェ=フォン=グラン=アリルメリカと申します」

(ガチガチやないかい…)


 リルトさんはリーチェの名乗りを聞いても驚いた顔一つ見せず、胸に手を当て頭を下げる。

「王族の方だったのですね、いやしい冒険者の身ですので礼儀に行き届かないところもあるかと思いますがご容赦下さい」

 リーチェはパタパタと両手を振る。
「そんな!礼儀知らずなのは我が国ですので。
 ルーサも言っていましたがここは公式の場ではないですから普通にして下さい」

「そうですか、そう言って頂けて良かったです」


(王族を前にしても落ち着いてるなぁ…逆に隣の王族は全然落ち着いてないけど…)


「それで、その…リルトさん、城の晩餐会にて我が国の大使が大変失礼な事を言って、本当に…本当に申し訳ありませんでした」

 リーチェが頭を下げるのに合わせ私も下げる。
 頭を上げるとリルトさんはほんのりとした笑顔で私達を見つめていた。

(イケメンの笑顔は目に毒だなぁ…)

 リルトさんは怒ってはいないようなので謝罪は受け入れてもらえそうで良かった。


 リルトさんは私達を見ながらキッパリと言う。
「私は、"あの時"の発言を許すつもりはありません」


「「えっ!?」」

(ヤバい…これは本気で怒ってるの?)


「何故ならあの"ハーフエルフの血は汚れている"と言う言葉は生きとし生ける全てのハーフエルフをおとしめる言葉です。

 単純に私個人がけなされたのであればそれは許す事ができます、ですが"あれ"は種族全てをけなす言葉です、私が許す許さないを決められるような安いあざけりではありません」


 …確かにそうだ。
 私達は国にとって重要人物になるであろう相手に無礼を働いた事にばかり目が行き、その発言の意味を安易に捉えていた。

 あのブタの言った事は、私の友達のあの娘も、あの行きつけのお店で産まれた可愛い赤ちゃんも、街を歩く知らない人達も、全てをおとしめる事だった…
 
「ですが、貴女あなたがた方は私個人に謝罪しに来たのでしょう。
 そういう意味では私は謝罪を受け入れます。

 しかし忘れないで下さい、貴女方の国は一つの種族を貶める、そんな言葉を感情に任せて安易に吐くそんな人物を国の代表として送り出した事を。

 国の方針の事は私には分かりません。
 ですが、愚かな者を泳がせて駒として使うのであれば、それはどうか自国の中だけで行って下さい」


「も、申し訳、本当に申し訳ございません…」

 リーチェが頭を下げるのに合わせ私も下げる。
 言った事全てがあまりにももっとも過ぎて返す言葉も見当たらない。


「……」


 室内に静寂が訪れた瞬間、リルトさんが「失礼」と一言言い突然席を立ち扉の方へ向かう。
 一瞬帰られてしまうのかと思ったが、リルトさんが扉を開けるとそこには可愛い動物を抱いたポラリスさんがいた。


「リルト、報酬渡し終わったよ」
「キュキュ!」

「ありがとポラリス、こっちはまだかかるから悪いけど先に帰ってて」

「分かった、じゃあまた後でね」

 リルトさんはポラリスさんから動物を受け取り抱くとまた席に着く。

「まだお話はあるでしょう? ちょっと一旦休憩にしましょうか?
 あ、この子はラテル、私の使役している精霊獣です」

「キューン」
 ラテルちゃんは前足でリルトさんにしがみつきながら顔だけを私達の方へ向け、少し不安そうに見ている。

(か、可愛い…)

 

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