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145話 伏魔殿へ 2
しおりを挟む「おぉお…」
つい変な声が出てしまった。
馬車を降りた周囲では、煌びやかな装飾を施された馬車から、煌びやかな衣装の人々が現れ、他の馬車から降りた人と話したり、城から来た従者に中へ案内されたりと賑わっている。
その光景は現代人には見慣れない映画のワンシーンのような非現実感があり、ここが異世界であることを今更ながら感じる。
周りの人々も派手だが、今日はオレも派手だ。
純白の生地に金の刺繍、さらに創造錬金でサファイアを糸にして紋様を施したトーガとローブを重ねて着込み、頭には鎖状のサークレットを髪に編み込み合わせて着けている。
トーガとローブは大司教からもらったものにオレが髪と色を合わせる為にアレンジを加えた。
髪をセッティングしたのはもちろん瑠璃、この複雑なセットは自分でほどく事が出来る気がしない。
横にいる大司教は神官服、式典等で使われる少し装飾の入った派手な物だ。
教会の馬車に乗り合わせて一緒に来たファル爺は周囲と同じ"ザ貴族"といった服装、深い若草色の生地に金の刺繍が施されたコートとウエストコート姿で重厚な雰囲気を醸し出している。
周りに見入っている間に案内のメイドが現れ、
…頬を赤らめながらポーっとオレを黙って見ている。
すかさずメイドの背後から男性従者が飛んできて、
「ロンドル大司教様、ワーディル卿、リルト様ですね、こちらへご案内致します」
と言い、ハッと再起動したメイドがオレ達を案内し始める。
歩を進めながらファル爺が話しかけてくる。
「クックッ、リルト、少し気合いを入れすぎたのではないか?」
「…こうなったらと思ったんだけど、やり過ぎたかな?」
「いえいえ、とてもお似合いですよ。
まぁ、今夜は舞踏会のような若い人向けの催しではないですから大丈夫でしょう」
大司教は言うがフラグに聞こえて怖い。
案内された先は小さいが華やかに整えられた控室。
会場にすぐ行くかと思ったが、服装や化粧を整えたり、他の貴族と雑談したりしていると会場へ案内される、というシステムらしい。
案内されると同時に用意されたお茶を飲みながらオレ達も雑談をしている。
「しかし、よくラテルが聞き分けたな」
「瑠璃がすぐ了承したから、自分だけ我が儘言えないと思ったんじゃないかな?」
出発前にラテルには瑠璃と精霊界に帰っているように言った。
貴族の晩餐会にさすがに連れて来れないし、力を持った使役獣を会場内に入れる事に難癖を付けられる可能性をファル爺から指摘されたからだ。
大司教が言う。
「面談の時なら平気ですよ。
彼らは護衛を必要としない王族ですから」
「そういえば元冒険者なんですよね?
どれくらい強かったんですか?」
ファル爺は腕を組み頭を傾げながら。
「確かパーティーはAには到達していたと思ったが、どうだったかな。
"試練の塔"のどれかで最高到達記録を持っていたな」
"試練の塔"というのはこの世界にいくつかある特殊ダンジョンだ。
どこも高レベル帯向けなので今のオレではまだまだ挑戦は出来ないだろう。
少し雑談していると案内され会場へ。
広いホールのあちこちから値踏みするような纏わりつく視線をいくつも感じるが、一緒の二人がビッグネームなので近寄っては来ず遠巻きに見られるにとどまっている。
さて、あとはのんびり…出来るといいなぁ。
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