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125話 新たな道標 16
しおりを挟む「要請に答える事は出来ますが、安全は保証出来ません」
オレはきっぱりと答える。
「それはどういう事ですかな?」
オレはチラリと"隼の瞳"の連中を見て、馬車の影にストレージの入り口を出す。
「おお!これは?」
「これが"アイテムストレージ"です、今だけ入室許可を出しました。
今の言葉の意味をお教えしますので、まずは入って下さい」
「私も同行していいかしら?」
ダニアさんが聞いてきたので許可する。
内部の生活空間に驚いている3人を尻目にオレは倉庫から予備の短剣を取り出し、助手の一人に差し出す。
「これを腰に差しておいて下さい」
「え?あ、分かりました」
助手の人は困惑しながらもベルトに短剣を差した。
「教授、今からボクと助手のお二人にボクの隠密スキルをかけます」
「はい」
教授はオレが何をしようとしているのか分からない様子だが、問い質さずに見ている。
「ではお二人はこのまま動かないで下さいね」
「「はい」」
オレは二人の肩に触れ"空間壁"からの"位相転移"を発動し、壁を消す。
「おお!見えない上に"いる"という気配も全く無い!すごいスキルですな!」
オレは短剣を持つ助手の人に、
「では、ボクらが少し離れたら短剣を持って鞘から引き抜いて下さい」
「わ、分かりました」
オレともう一人の助手の人が下がって離れたのを確認した助手の人は短剣を引き抜いた。
教授はビクッと後ずさる。
「おお!ジム、こんなところにいたのか」
オレは位相転移を解除する。
教授はすぐに気づき、
「おお!リルトさんとポールはそっちにいたのか」
「実験はこれで終了です、外に戻りましょう」
ーーーーーーーーーー
テーブルに戻りお茶のおかわりを飲みながら話し始める。
「今のを見て分かったように、ボクの隠密スキルは一度かければ離れても発動したままになります、ボクの視界内だいたい10m前後だと思います」
「ほう、なるほど」
「そしてジムさんの姿が突然見えるようになったのは、ジムさんが"短剣を引き抜く"という攻撃準備行動を行ったので解除されました」
「…なるほど、それでリルトさんの言いたい事が分かりました。
我々のうち誰かが恐慌に陥って隠密が解除されればその後の保証は出来ない、という事ですな?」
「そういう事です。
そうなった場合にその場で隠密魔法をかけ直す事は可能か不可能かで言えば可能ですが、それにはボクも"あの魔物"に見つかる危険を犯さなければなりません。
現状あの魔物に勝てる気はしませんからそのリスクは負えない、という事です」
「……」
教授はまた髭を擦りながら考える姿勢に入ってしまい、助手二人は不安げだ。
「まぁまだルティスタまでは日にちがあります。
他にもいい手段が見つかるかも知れませんし、そろそろ出発しましょうか?」
オレは皆を促し出発の準備を始める。
学者組も"隼の瞳"の方へ戻って行き、あちらも出発の準備を始めていた。
オレは仲間に指示を出しているアホ女をチラリと見て一人呟く。
「さて、これからが正念場だな」
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