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120話 新たな道標 11

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…スーッ、スー…

 背後からポラリスの控えめな寝息が聞こえる、振り返るとソファーに横になり、オレがかけてやった毛布にくるまってよく寝ている。

 向かいの席ではファル爺が、腕を組んで考え込んでいるような体勢のまま寝ている、こっちも一応肩から毛布をかけてある。

 テーブルには沢山の紙にデザインやメモが書きなぐられ散乱しており、床には材料に使った魔物素材や鉱物の山が…

 背後を見ていた顔を正面に戻す。


…ブフー、ブルル



 そこには本物の馬のように足元のラグの匂いを嗅ぐ馬型のゴーレムが"2頭"…


ーーーーーーーーーー

 完成形を見られたのが功を奏したのか、オレの"馬型ゴーレム用E-AI"は作成に成功した。


 一番の重要パーツが出来たのなら、やっぱりその先が気になるのが人のさが、ポラリスとファル爺も乗り気で店を閉め、ストレージ内に全員で籠りそのままゴーレム作りを始めてしまった。


 基本的にはE-AIとなった微精霊と思念で会話しながら身体を作っていく。
 微精霊達はどういう仕組みなのか、コアになった者とそれ以外がやり取りして情報を集めており、馬の骨格、体型、動きなどの知識を少しずつ集め本物の馬のような外見、動きにどんどん近づいてくる。


 素材についてはファル爺が在庫を大盤振る舞いしてくれ潤沢にあったので、ここは遠慮せずガンガン使う事にした。

 まずは軽くて硬度の高い金属を芯にして"オーガ"の骨で骨格を作り。
 丈夫で伸縮性がある"ジャイアントスワンプトード"というカエルの魔物の革を、細く切って帯のようにしたものを束ねて、筋や筋肉にして動きをサポートさせる。


 水晶や宝石を使い眼球を、スライムジェルと革を融合加工して舌や口の中、声帯と段々と調整に時間のかかる細かい部位になってきた頃には夜も更け、ポラリス、ファル爺と順番に轟沈していった。

 ラテルは最後まで付き合うつもりなのか、静かに近くのラグの上で丸くなって作業を見ている。 


 触り心地のいい毛皮を使って表面の皮を作り、まつ毛やたてがみ尻尾などを形成して完成するとかなりの再現度で、1~2m離れるともう作り物である事もよくよく見ないと分からないレベルだ。


 さすがに疲れてラグの上に胡座をかき座り込むと、もぞもぞとラテルが乗って来る。


「キューン?」
 二人を起こさない配慮なのかラテルが小さく鳴く。
 何となく「出来た?」と聞かれてるようだ。

「うん、一応完成かな。
 後は外で実際に走らせてみないとね」
 ラテルを撫でながらオレも小さく返す。


 と小声で話しているとフィっと瑠璃が現れ、何やらテーブルの上を指差す。
 そこにあった勇者ユウタの作ったゴーレムコアを拾い上げると、中から微精霊の思念が伝わってくる。


「え、え~…オマエも馬になりたいの?」

 確かに馬車を引かせる為に、元々2頭作る予定ではあったんだけど。
 …まぁ、こいつも何か働けると思ってコアになったのにずっと箱に仕舞われていたから可哀想ではある。


「…やるか」
 オレはラテルを一撫でして胡座から下ろし立ち上がる。



ーーーーーーーーーー

 一頭ゼロから作り上げ、過程が頭に入っているからなのか、二頭目は調整いらずであっという間に出来た。

 ポラリスが「白馬がいい」と言っていたが目立ちすぎるので、オレのコアの馬を芦毛あしげ(白っぽい薄茶)、勇者のコアの馬を栗毛にした。




 オレは近くに畳んで置いてあった毛布を掴み、潜り込んでくるラテルと共にその場で横になる…




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