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119話 新たな道標 10
しおりを挟むオレはそっとゴーレムコアを箱から摘まみ上げ、手のひらに置く。
(…【鑑定】)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【Elemental artificial intelligence】
・魔道具
微精霊を取り込み疑似知能を得た魔道具の部品。
単体では機能しない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
目覚めてから片っ端から鑑定を使い、人は無理だが物品には簡素な説明文が付くようになった。
詳細はまだ分からないが大きな進歩だ。
(ゴーレムコアというよりも、魔道具全般用の"AI搭載CPU"のようなものなのか。
魔石の中に微精霊を取り込み、それを"意思の核"にしている…という事なのか? 魔石が脳、ミスリルは神経、水晶は…頭蓋骨?)
オレの中の"創造錬金術師"の力なのか、何となくどういう作りなのか分かる…ような気がする。
もしオレのカンが能力に基づいた正しいものなら、オレにもゴーレムが作れるかも知れない。
問題はこの【E-AI】のとっかかり、
"微精霊をどうやって魔石に取り込むのか?"
そして、
"どうやってAIとして機能させるか?"
だな。
「ユウタから研究用に1つもらっていたんだが、すっかり忘れておってな。
前にリルトと話した事で思い出したんだが見つからなくて探しておったんだ」
ファル爺は頭を掻きながら笑っている。
「リルト、これ何なの?」
ポラリスがオレの手の中のゴーレムコアを覗き込みながら問いかける。
「簡単に言うと、魔道具の脳ミソかな?」
「脳みそ? 計算とか出来るの?」
「教えればね。
ただ微精霊とどうやって会話するんだろ?」
「え?リルトなら出来るでしょ?」
「え?」
「「……」」
…なんか話が噛み合ってないような。
オレ達の話を静かに聞いていたファル爺が口を開く。
「なるほど、リルトは"精霊視"を習っていないのか」
「精霊視?」
「まぁ簡単にいえば、精霊を見る才能を持つ者が出来る"目のピント合わせ"のようなものだな。
精霊はあらゆる所に無数にいるからな、見える力を持つ者でも普段からずっと見えていたら生活にならん、下級、中級になれば話しかけてきて騒がしい精霊もいるしな。
だから普段は無意識に感覚を閉じてるんだ」
…難しいな、ピント…いや、周波数を合わせるようなものか?
精霊…そういえばラテルや瑠璃も実体化しているとはいえ精霊だったっけ、とラテルをじっと見る。
「キュ?」
(うーん、特になにも感じない…瑠璃は…)
ファル爺の前だから人見知りな瑠璃は出て来ないだろう、オレは胸に手をあてて目を閉じ自分の中に瑠璃の存在を探す。
…クス、クス
誰かの小さな笑い声が聞こえる、それは何処から聞こえて来るのか探っていくと、辿り着いたのは自分の中だった。
(瑠璃?)
(ピ~♪ ピピ~♪)
(…ラ~♪)
オレの中の瑠璃が何かメロディーを奏で始めると、周囲からもそれに合わせるこのようにハミングが聞こえてくる。
「うわっ!」
音に釣られるように目を開け見渡すと、いくつもの色とりどりの光の球が周囲をフワフワと漂っていた。
「これが…微精霊?」
「うん、見えたみたいだね」
「何やら楽しそうに歌っておるのう」
「キュ~♪」
(…うーん、なんか楽しそうにしてるのを見ると余計にパーツに"使う"っていうのが…?)
と、勇者の作ったゴーレムコアをふと見ると、コアの中からも歌が聞こえてくる。
(…何ていうかパーツになってるというより、中で楽しく働いてる感じ?)
まぁ、本人?達が楽しいならいいか、とストレージから魔石、ミスリル、水晶を取り出す。
(…作るぞ、オレの初めての作品"馬型ゴーレム"!)
こんな事もあろうかと購入していた"ウィンドホース"という、使役獣によく選ばれる馬系の魔物の魔石を球状に加工する。
(…魔力を登録した者の命令を聞く…馬の動きの模倣…周囲の魔力から補給…足りない場合は魔石から…あと…)
出来上がる過程、付与される能力、完成形をイメージしながら素材に魔力を加えていく。
周囲にいた精霊達が魔石の中に入って行き、ミスリルの線が接続され、水晶に覆われていく…
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