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111話 新たな道標 2

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「キュ?」

 呼ぶ意思を込めてもいないのに勝手にオレの中から現れた精霊獣、オレとラテルの周囲をハタハタと飛び回っている。


(…【鑑定】)

ーーーーーーーーーーーーー
瑠璃るり
レベル:???
種族:精霊獣(時)
ーーーーーーーーーーーーー


(……ダメだ、自分のせいなのにイラっとしてる)



 人を覗き見るようで気が引けて、使わないせいで錬度の上がらない情報の薄い鑑定。

 今回の事だってそうだ。
 安全マージンとか言ってみたり、一時期戦いばかりの生活になって嫌気が差してみたり、戦いを避けレベル上げに専念して来ずにいた結果が今だ。

 この髪の伸び方は月単位で意識不明だった、つまりかなり危険な状況だったんだろう。

"いきなりレベル100なんてつまらない"

 死ぬくらいだったら、いきなりレベル100の方がよっぽどマシだろ。


(…戦いが身近な世界に来たのに、いつの間にかぬるま湯に思考が流されてたな)


 前世で忙しい仕事をしていた時のように、普段の生活が侵食され過ぎるとまた嫌気が差す、バランスが必要だけど今はレベル上げがしたいな。



「瑠璃」

 オレが呼び掛けて手のひらを差し出すと、手の周りを少し飛んだ後、そっと手のひらに止まった。
 すると突然淡く光り輪郭が崩れ、青色の光の球になりまた形を変える。
 光が収まった手のひらの上には身長15cmほどの蝶の羽根を持った妖精の少女が立っていた。

 少女は髪、瞳、着ている服まで濃淡の違う青色をしている。
 黒目の無い青色の瞳は感情を伺えず、素早く小刻みに顔を動かしオレの顔を見る仕草も人らしさが無く蝶の羽根も相まってなんだか昆虫じみている。


「瑠璃はなにが出来るのかな?」

「……ピッ!」

 瑠璃はちょっと考える仕草をしたあと一声鳴き、何故か敬礼をビシッとすると飛び上がり、オレの後頭部を確認すると髪をいじり始めた。



 少しするとまたオレの頭の周りを飛び回って、ウンウンと一人頷き、瞬時に蝶の姿に戻るとオレの胸の中へ消えていった。


 オレはそっと頭に手をやり確認すると、後ろ髪を一つに、サイドを後ろへ組み合わせるように編み込んである、後ろ髪の先は何処から出したのか撚紐よりひもで結んであった。




「あ、扱いづらい…」
「キュー…」

 意思の疎通が出来ているのかいないのか、勝手に出てきて勝手に帰る、オレの鑑定では能力も分からない…


…ガチャ


 と、突然部屋のドアが開き、教会のシスターとおぼしき女性が入って来た。

「……」
「……」

 一瞬二人で顔を見合せ固まっていたが、段々とシスターの顔が驚きにかわっていく。


「…あ、ああ!リルト様!お目覚めになられたのですね! だ、大司教様にお伝えしないと!」


 シスターはドアを開けたまま、何処かへと走り去ってしまった。


「…リルト"様"?」


 ひしひしと嫌な予感がしてくる。

 寝ている間に何が起きた? 治療を受けたのだからここが教会の治療院の可能性はあると思っていたけど、あの態度…




「頼むから、なるべく穏便な状況にしてくれよ…」




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