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90話 出会いの旅路 16
しおりを挟む"精霊獣を使役している"という発言に、オレも驚いているが、ユグラさんもビックリしている。
「元冒険者って事は知ってましたけど、ギルド長がテイマーだったなんて初耳です!」
「内緒でお願いね。
精霊獣と一緒に冒険していたのは南大陸にいた頃で、コッチでは知られていないの」
「知らしめない理由が何かあるんですか?」
「単純に、何かあった時の戦力にカウントされたくないだけよ。
私も"あの子"も戦いばかりの日々に飽きちゃってね、そんな理由もあって南大陸から出てきたの」
「なるほど」
「分かりました、私も黙ってます!」
「という事で、私はラテルちゃんが精霊獣だと分かるんだけど、それじゃあギルドとしてお仕事にならないからね、ユグラの教育の為にこれの出番なのよ」
といってセリアナさんがテーブルに置いた物は、金で装飾され、水晶のような石が幾つか付いた宝石箱のような物。
大きさはティッシュ箱の半分くらいだろうか。
オレはまじまじと観察しながら問う、
「これは?」
「"魔法阻害の魔道具"というものよ。
詳しい仕組みは分からないけど、これが起動している周囲では魔法が上手く使えなくなるの」
「これでどうやって確認するんですか?」
「精霊獣の"精霊界への帰還"は魔法じゃなく、精霊が元々持っている力らしいの。
だから、転移魔法や隠密魔法も使えない状態にした部屋で、使役獣がいなくなる事が出来ればそれは精霊の力、という事になるわ」
「なるほど、そういう事ですか」
「そんな魔道具うちのギルドにあったんですね?」
「けっこう高価な魔道具だから、いつもはギルド長室で保管してるのよ。
地、水、火、風、光、闇と"属性魔石"も6種類使うからそれも貴重なのもあるわ」
"属性魔石"は強い属性適正を持つ魔物が内包しているもの。
普通の"無属性魔石"と同サイズであれば、売却額はだいたい3倍前後にはなるらしい。
属性が関連する魔道具に使用すれば安定性、燃費共に高く、オレが"水の出る魔道具"を作ると安定しないのは錬度不足もあるが、"水の魔石"を使っていないから、という側面もある。
ーーーーーーーーーー
「じゃあラテル、精霊界に行って少ししたら戻って来て」
「キュン!」
テーブルの中央に立っていたラテルが、淡い光とともに姿を消す。
「おー!本当に消えました!」
ユグラさんはテーブルのラテルがいた辺りを、何かを探すような仕草で撫でている。
「まぁ、分かってはいたけどこれで確定ね」
「スゴい能力ですね!」
「実際強力よ。
突然敵の背後に現れる事も出来るし、負傷した場合も精霊界に戻ると回復も早いらしいの。
精霊獣はコチラの世界にいる時、実体の身体を持ってるから直接攻撃でも魔法攻撃でもダメージを負うんだけど、どちらも同じように回復するわ」
(…貴重な情報だ。
今のところ戦闘に参加させる気はあまり無いけど)
と、思った瞬間、ラテルの気配を応接セットから少し離れた空きスペースから感じた。
セリアナさんもその場所を見ている。
(セリアナさんも分かるのか?)
すると、いつもより大きな光とともにラテルが現れる。
若草色のヒョウの背中に乗って。
「キャ!…ムグ!」
ユグラさんが驚いて叫びそうになった瞬間、セリアナさんが素早く口を塞いだ。
「ユグラ落ち着いて、私の使役している精霊獣「パルディオ」よ」
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