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73話 出会いの旅路 1

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 今日は何となく朝からギルドに来ていた。



「指名で"護衛依頼"?ボクにですか?
 …あ、ひょっとして"マーカス商会"ですか?」

「あら正解」

「まぁ、"アイテムストレージ"を見せましたしね。
 そもそもマーカス商会さんが王都に行くのも、ボクの関係する用事が含まれてますから」

「そうなの?仲良くしてる、って話は前に聞いたけど」


 オレはアイテムストレージに手を突っ込み…一旦手を止める。

「レシアナさん。
 この国では"男性が女性にアクセサリーを送る"事について、なにか特別な意味合いがあったりします?」

「指輪なら多少"深い意味"を込める場合もあるけど、普通のアクセサリーなら、手頃な値段のを友人でも贈ったりするわよ」

「そうですか、じゃあコレ試作品ですけど、いつもお世話になっているお礼にどうぞ」


 アイテムストレージから出した、銀とペリドットのネックレスをレシアナさんの前に置く。


「え!これリルトくんが作っ…何このデザイン!
 スゴいわ!こんな綺麗なの初めて見る!」


「これは比較的安価な組み合わせですけど、これの貴族向けのをマーカス商会さんに販売してもらうんですよ」


 レシアナさんは話を聞いているのか、席を立ち早速ネックレスを首にあてがい鏡で見ている。




「リルトくん、"錬金術"は初心者よね?」
「ええ、"錬金盤"を手に入れたのも、ついこの間ですよ」
「それでこの出来なの?…」
「まぁ…」


 実は昨日、
「そういえば錬金術にハマってから、冒険に全然出てないな」
と思い、なんとなくステータスを見たところ、オレの【職業】欄から【薬師】が消えていた。

 最初は驚いたが、何となく予感がして、材料を用意して手順をイメージしながら"錬金盤"を使うと、錬金術で【初級ポーション】が作れてしまった…



 物語なんかだと、けっこうごっちゃになっている事も多いが、この世界だと薬品を作れるのは薬師だけ、錬金術はあくまでも物質を成形し、それに魔法を付与して魔道具を作るのが本当の"出来る事"だ。

 なのでオレはもう、自分の職業は【錬金術師?】だと思うようにした。





「で、護衛の話ですけど。
 確かにEランクから受注可能だけど、ギルド規約けっこう厳しくなかったでしたっけ?」


 そう、これも物語なんかだと、適当にそこらの冒険者が護衛して、

・"護衛としての戦い方"を知らないので、連携が上手く取れず負ける。
・"撤退"についても学んでいないので、絶望的な状況になってから、依頼者を置いて逃げる。
・実は盗賊や悪人と結託していて、依頼者を襲う。

 なんて事が起きる… まぁ、確かにその方がドラマチックかもしれないけど。

 実際には、
【依頼者との折衝・中級】
【護衛戦闘術】
【護衛戦術論】
等の講習に合格した者の中でも、ギルドの身辺調査で評価の高い冒険者から優先的に依頼が受けられる。


「その辺りは依頼者の希望だし、"ギルド特例"が許可されるわ。
 出発まで後3日あるから、とりあえず座学は合格しておいて、実技は出来るところまででOK。
 コッチは時間かかるから後で合格してね」

「そんなんでいいんですか?」

「護衛としては当然良くは無いわね。
 だから、本命の戦闘を受け持つ護衛は、別で1パーティーを用意するわ」

「なるほど」

「依頼者の優先希望は、"貴重品"を安全に運びたい、旅に不馴れな女性と子供がいるので、なるべく快適な夜営が出来るように、という事だから」

「"アイテムストレージ"を使えって事ですね」

「そういう事ね」




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