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67話 路線修正 7

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「あぁ? ふざけんじゃねぇよ!」
 大きい声で凄まれて、受付嬢がビクッとする。


 (あっ、別の受付に見習いくんが呼ばれて、…走ってギルドを出ていった。
 この先の展開が想像出来るな)



 ダリムから指示されて、デブ取り巻きくんが持っていた袋からザラザラと魔石を出す。

 (小さいし、ホーンラビットとかゴブリンのかな?)

「こんだけ魔物倒してんだ、これで登録してからランクが1つも上がってないなんて、おかしいだろ!」

 (だから討伐は関係無いんだって、受付嬢の話聞いて無ぇのかよ…
 しかし、なんで魔石売却してないんだ?見せびらかす用にわざわざ取っておいたのか?)

「どのように言われても、その魔石を提出されても、カードのランクが上がる事はありません」


 

 ダリムがまた何か言おうとしたところで、さっきの見習いくんが戻って来た。

 衛兵を2人連れて。

「…何か揉め事だと聞いて来たが?」

 見習いくんは受付嬢に銀貨と飴をもらってご満悦だ。

「…こちらです」

 受付嬢とダリム達、そして衛兵がゾロゾロと2階へ上がって行く。



「ああいう時、副ギルド長は助けないんですか?」

 オレは、横にいてずっと経緯を見ていたレシアナさんに聞く。

「あの程度のクレーマー、自分で対応出来なきゃ受付嬢は務まらないわよ? 日々お勉強ね♪」

「…まぁ、そりゃそうか。
 じゃあオレはそろそろ帰ります」

「はい、今日はご苦労様。
 Eランク依頼は、受ける前に一度相談に来てね」
「分かりました、じゃあまた」


 (なんか、ちょい絡まれで済んだけど、顔は覚えられてるだろうな、もう会わないといいけど…)


 その後、買い物をして、仲良くなったそのお店の会長さんと少しおしゃべりしたりして宿に帰った。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「うんぎぎぎ…ふぐぐぐ」

 オレは今、アイテムストレージ内の部屋で一人"錬金盤"と格闘している。

 ここはコボルドの森の奥。
 依頼を受けて【ファングボア】という魔物を狩りに来ている。
 ファングボアは下の牙が発達したイノシシの魔物で、イノシシの倍くらいの大きさがある。
 肉・毛皮・骨と、まるまる買い取り対象なので、アイテムストレージで全て持って帰れるオレには美味しい依頼だ。
 おそらく1頭で15~20万くらいになる。

 ただ、ファングボアは夜行性なので、昼間は動き回らない為見つけるのが困難で、夜営が必須だ。
 当然オレも"空間察知"を使ったんだけど、初見の魔物が多くて手間取り、結局ファングボアを倒した頃には夜になってしまい、夜営の暇潰しに錬金をしてる。



 仲良くなったマーカス商会で、初級の錬金が出来る店員がいて、やり方を見せてもらったんだけど、
 おもむろにアイテムボックスから錬金盤を出されて、「あぁ、やっぱり身体から出てきたりしないよね…」と、始まる前からこっそり打ちのめされたりしていた。

 見せてもらった【成形】という錬金術は、やり方は簡単で、錬金盤の上に素材を置くか、錬金盤と横に置いた素材両方に手をかざし、形をイメージしながら魔力を注ぐ、というだけ。

 ただ、やり方は簡単なんだけど、この"形をイメージ"というのが意外と難しくて、店員の人もそれで錬金術師は諦めたそうだ。
 一応、元々形の決まっている物の修理などは出来るので、特別手当ては貰っているらしい。

 木材や布などから始まり、金属、宝石と、素材の硬さ、魔力の含有率などによって加工に必要な魔力量が増え、その量をキープしながらも、イメージも疎かに出来ない、というなかなかの難易度の作業だ。
 ちなみに魔力を必要量以上に注ぐと、素材が暴れるように変化してしまい、イメージ通りの形にならない。


(これは…あれだ。体験教室で何度かやった【陶芸】に似てる。
 力が足りないと上手く形にならないし、力を入れすぎると崩れる)





 結局夜通しやってしまって、眠気でフラフラしながら町へ帰った…





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