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60話 幕間 うわさの少年 3

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「はぁ…」
 今日も周りの女性冒険者の視線が熱い、いや痛い。
ただにらまれているだけなんだが、もう何かの精神攻撃魔法なんじゃないか、と思うほどだよ…



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 護衛依頼で離れていたルティスタに、久しぶりに戻って来たパーティーの休日。
 俺はいつものようにギルドの訓練場に来ていた。



 長期仕事の後は、休日を何日か取るのがパーティーの決め事なんだけど、買い物も、酒飲んで昼まで寝てるのも、キレイなお姉ちゃんのいる店に行くのも趣味じゃない。

 結局、身体を動かすのが好きな俺は、休日なのに訓練場に来てしまう。



 軽くストレッチをして、周りを見る。
 訓練場にいるのはパーティーばかりで、一人なのは自分だけだ。
 今日は訓練に付き合ってくれそうなのはいないな、と思い、備品の盾と、刃の潰された長剣を手に取る。


 少しの間、素振りや型の確認などをしていて、ふと視線に振り向くと、そこには知らない少年がいた。

 女の子みたいな顔で、線が細いのに耳が少しだけ尖ってるから、ハーフエルフなんだろう。



「おう、何かようか?」

「ハスキー…あいえ、すいません、獣人の方を初めて見たもので、失礼だったら謝ります」

「いや、気にしねぇよ、コッチじゃ珍しいからな、
 お前もそうだろ?」

 そう、俺は獣人族、その中の犬人種だ。
 髪と頭の上にある耳と尻尾はダークグレーで、眉毛の上辺りと、前髪中央にラインのように白い毛が混じっている。

 獣人族は、"南の大陸"にほとんどが住んでる。
 大昔、魔法が下手な獣人族は、他の種族から差別を受けてたが、ある時現れた"勇者"が、獣人族向けの魔法の使い方を教えた。
 すると、今度は逆に獣人族は強くなりすぎて、他の種族から怖がられるようになっちまった。
 だから獣人族は、自分達の故郷である"南の大陸"から、あまり出て行かなくなったらしい。

(…ハスキーってなんだ?)


「そうですね、僕もけっこう珍しそうに見られます、あ、リルトといいます、ハーフエルフで15歳です」

「へぇ、ちっこく見えるけど成人してんのか、俺はガルフだ、年は21だ」





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 それから何となく一緒に模擬戦して、盾の扱いを覚えたい、っていうから教えてやった。
 ひょろっちいから力押しには弱いが、弾いたり、受け流すのはけっこう上手くなった。

 かしこまった話し方は止めてほしいが、気のいいヤツで、訓練場で会えば一緒に訓練するし、メシにも一緒によく行く。




 …ただ、ホントに勘弁して欲しいのが、
・受付嬢が何か話したそうにしている→俺が通る→俺のところに来てしまう。
・女性冒険者と訓練している→俺が来る→俺と訓練しに来てしまう。



 …結果、ギルドに来ると、あちこちで女性に睨まれるようになっちまった。

 ちなみにリルトが振り返ると、女性のオーガの形相は瞬時に笑顔に切り替わる(怖えーよ)



 リルトに悪気は無いのは分かってるんだが…



「あ、ガルフさーん!」




 ひいぃぃ!オーガ、オーガが…!




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